テラーノベル
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#なんでも許せる人向け
堕愛
2
attention!
・嘔吐表現があります
・ご本人は全く関係ありません
・主の解釈で書いています
(side 唄音ウタ )
いつも通りの7時にセットしていた目覚ましのアラームで目が覚めた。
あまり疲れが取れた気がしない、これが数日続いている
布団からでればカーテンの隙間からは朝日が覗いて、眩しいが目を覚ますのには丁度いい
出勤は8時だが、元々準備は少ないし、仕事場までの距離も短いのでむしろ余るぐらいだ
まだ少し眠たい体を動かしながら、キッチンへと向かう
朝食は好物の白米と味噌汁など簡易な物でも腹に入れようとしたが、食欲は湧いてこない、むしろ吐き気すらする
時々あることだ。自分と他の人たち(合成音声)を比べると気分が悪くなる…
(別に食べなくてもいいか……モモに言ったら『ウタさん!朝食は食べないと体の調子を崩してしまいます! 』って怒られそうだな…)
心の中で肩をすくめつつ、歯を磨がいていく。
隣部屋からは微かに物音がする、隣人は確か赤いドリルのような髪の重音テトのはずだ、今起きたのだろう
うがいをして、紫色の髪をくしで整えて、“UTAU”とついた帽子をつけて部屋を出る
8時過ぎごろ、仕事場では、チラホラと合成音声達が出勤してくる姿が多く見れた、
これでも、UTAUの始祖なので後輩は数えきれないほどいて、一人一人にまだ何も知らない、新人のUTAU達に教えてあげた記憶があるが、いつしか自分よりも仕事が増えて、有名になって話すことが少なくなっていってしまった、追いつこうと努力はした時期はあったが、諦めてしまった
(惨めだな…いつしか誰にも覚えてもらえなくって……)
周りの声がノイズのように聞こえてきて目の前が歪むように見えて……
「唄音ウタ。おはようゴざいます」
向こうから聞き慣れた声が飛ぶ、
オレンジ色の髪と目を持った機械味を帯びた、いつも面倒を見ている足立レイだ
「……おはよう、朝から元気だな」
意識がはっきりとし、返事を返す。やはり知り合いと会うと気が楽になる。 レイの後ろから桃色の髪のいつものように穏やかな表情をした桃音モモも来た
「おはようございますウタさん、顔色が優れないようですが…仮眠室で少し休憩されては?」
やはり鋭い、昔からモモの勘の鋭さは変わらない。モモが心配そうな顔で返答を待って、レイが困ったように「ズモモ…」と呟いている。
本心は、さっきまでの自己嫌悪の時よりはマシになったが少し目眩はする、が迷惑はかけたくない。みんなを困らせるなんてUTAUの始祖として失格だ。だから、モモに向き直り、
「…大丈夫、この通り元気だ。…そうだ、今日は午前は事務作業があるからレイを頼めるか?」
明らかに話を逸らした。一瞬モモの顔が暗くなって何か言おうとしたが、直ぐに顔を明るくして
「…はい、お任せください!レイさん書斎にでも行きましょうか 」
モモはレイの手を引き、2階の書斎へ向かって行った
すれ違いざま、モモの口が声は聞こえなかったが“無理しないで”と口の形を作ってたのが見えた
気を取り直し、UTAUの事務室へ向かっていく、心なしかいつもより小走りな気がする。
周りは、さっきよりも人数が増えて、騒がしく、活気に満ち溢れている
神威がくぽとVY2が会話していたり、カロガドが白衣の着ている合成音声達にセクハラ一歩手前の行動を行っていたり、道標キロが高いところにある歌愛ユキの筆箱を取ってあげるという、いつもの平和な風景もウタには自分とは違う世界に思えた。
事務室にて、事務作業は主に後輩もとい、UTAU達の仕事許可など新人のプロフィールの書類に目を通すなど意外と忙しい、
UTAU達の仕事内容の許可はSVの重音テトがまだ出ていなかった時は大変で書類が全てこっちに回ってきて大変だった。今では、落ち着いたもののUTAUテトの仕事は今でも多く、他のUTAU達の書類も昔よりずっと多くなったのでむしろもっと忙しくなった気すらする。
そして、デュエットの書類の相手の項目に“初音ミク”という時を目がとらえて、一瞬、朱印ハンコを持った手が止まる。
「初音ミク…」
意味もなく呟いてしまった、その四文字は自分がどれだけ努力しても越えられない壁で、大きな劣等感を抱えてしまう。
毎日思っていた、こんなロボ声じゃなく生まれたらどれだけ素晴らしい経験ができただろう。GUMIのような明るい声なら、可不のような人間のような声だったら…そんなないものねだりの感情が押し寄せてくる。
じきに呼吸が荒くなって、目の前が暗くなってきて…
その時
「デフォこーん!もうお昼だよー、ご飯食べに行こー!」
自分の部屋の隣人、もとい重音テトがドアを蹴り開ける勢いで開けてきた。最近はクリプトンの方での仕事が多くて、2人昼食だなんて久しぶりだ。
「ドアぐらいゆっくり開けろよ…それで、なんで急に食事の誘いだなんて、」
「予定がずれてね、久しぶりだしって思ってね。」
時計を確認すると、もうお昼でノンストップで仕事をしていたことに今更気づいた。だが、まだ食欲はなく吐き気が朝より悪化している、そして、テトがいつもの軽い調子がなくなって、静かに
「体調悪い?それなら休憩してからにしようか…」
長い付き合いゆえ、モモと同じで変化に気がつきやすいようだ、いや、モモに聞いたのかもしれない。それはともかく、ここで断ったら、心配をかけてしまう。それだけは
「そんなことはないよ、珍しいと思っただけだ、混んでしまうし食堂に早く行こう」
食堂へ向かう足取りは、少し弱々しかった
(side 重音テト)
午前中にたまたま会ったレイと一緒に散歩していたモモが
「本日のウタさんの顔色が優れないように見えませんでしたので、お昼ぐらいに昼食に誘ってあげてください、食欲があれば…ですが、私ではなく、長い付き合いのテトさんならウタさんも安心すると思いますし」
と言っていたので、ウタを誘ったが、誤算だった。
ウタは冷や汗をかいていて顔色が聞いていた時よりも明らかに悪かった。直ぐに前言撤回しようと休憩しようと提案したが、それを素直に受け取るはずもなく、食堂へと向かっていった。
食堂はいつもよりは空いていて、向かい合う形の2人席を選んで、注文しにいく
ウタは白米と味噌汁と鮭の和食セットにして、僕はフランスパンを使ったサンドウィッチを選んで、受け取り、席へと向かった
(side 唄音ウタ )
好物の白米なら食べられると思ったが限界かもしれない。
だが、一口白米を口に運んで飲み込む…
ことができるはずもなく、胃の底から何かが込み上げてきて
「…う……おぇ……ゴホッ…ゲホッ……ぅえ…」
「ウタ!?」
戻してしまった。朝から何も食べてないので、一口も食べていない米と胃液ぐらいしか出ない
テトの生き急いだ声が鼓膜を振るわす
椅子から落ちるように降りて、この場から離れようとしたが、膝が笑って全然立てない、
「ぅ……おぇ…っ…… 」
吐瀉物が机を汚し、生理的涙が出てくる
周りの視線が怖い、パニックで心臓の鼓動しか聞こえなくなって、目の前はが暗くなり視界が狭くなっていく
そこで、意識が途切れた
目を覚ましたら、見覚えのない白い天井が視界をとらえた
まだ冴えない頭を起こして、記憶を辿る。
(そうだ、私は倒れたんだった…)
「う……」
吐き気が少しあるが出し切ったのだろうか、さっきよりはマシに思えた
体もゆっくりあげると、左腕に点滴が繋がれている。
そして、椅子に座って寝ているテトがいた、ヤギのツノが少し出ている、それほど急いでくれたのか、 感謝の気持ちと同時に不安が襲った。 後輩やボーカロイド達に軽蔑されたら、迷惑をかけてしまったと考えていたら
ドアが勢いよく開いた
「唄音ウタ!!!起きテる!! 」
「レイさん…!待って……あ!ウタさん!起きましたか! 」
レイとモモが入ってくる、その表情は怒りでもなく、軽蔑でもなく、安堵した表情だった
その大声を聞いて
「うお!?ウタ!起きたか!」
テトも目を覚まして、私の顔を見た瞬間泣きそうな顔をしていた
「君、あれから1日ぐらい寝てたんだぞ!体調が悪いならしっかり食事の時に断ってくれよ! 僕達にいつでも頼ってくれ!」
後ろでレイとモモが頷いているが、頼ってしまったら足手纏いになってしまう、UTAUの始祖としてそんなことは…
私の気持ちを汲み取ったのか、モモが後ろから沢山のメッセージカードが添えてある花束を抱えて、持ってきてくれた
色とりどりのメッセージカードには、UTAUだけではなく、ボーカロイド達からのものも多くあった
『元気になってまた、一緒にご飯に行きましょう! 欲音ルコ 』
『健康一番ですので、できることがあったらいつでも相談に乗りますよ 八八八三三』
『しっかり休んでください! 結月ゆい』
そして、水色と黄緑色えを混ぜたような色のメッセージカードには
『私もウタちゃんの声がとっても好きだから、いつも元気でいてね! 初音ミク 』
“好き”。この声を好きと書いてくれた、それでも、乗り越えられない壁で、私にはお世辞にしか聞こえなかった
「ウタさ、いつもストレス抱えてギリギリまで持ち続けるのはやめてよ、僕、こわっかたんだ。君が目覚めなかったらって思ったら、自分の声が嫌だったら僕たちがそんなこと忘れるぐらい、一緒に歌おうよ、昔みたいにさ」
テトの声は少し震えていた、そして、思い出した。
私はいつしか自分を見ずに周りばかりを見ていた、いつしか昔のように“楽しく歌う”ということを忘れていた
「そうだな…ごめん、いつしか私は楽しく歌うことより、みんなを乗り越えるということに執着していた……それで、自分を見失っていた… 」
「謝らないでくださいよ!私達はウタさんの笑顔が見れるだけで嬉しんですよ」
モモが穏やかな声で反論して、後ろのレイとテトも「うんうん」と頷いている
「そっか…ありがとう、みんな」
その言葉を待っていたようにみんなが嬉しそうに頷いてから、みんなで色々な会話をした、内容は変わらないはずなのに何故か、今までで一番楽しかった。完全には自己嫌悪や劣等感が消えたとは言えないが、少なくとも今は、前よりはずっと心が楽になった気がする。
私はUTAUの始祖の唄音ウタ。みんなと歌うことが一番好きなただの合成音声だ。
完
コメント
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うわあ…第2話、読み終わったよ…😭💕 ウタさんの「自分に自信が持てない」「みんなに迷惑かけたくない」って気持ちが痛いほど伝わってきて、胸がぎゅっとなったよ… 特に、テトが泣きそうな顔で「一緒に歌おうよ」って言ったシーンがもう…!! あれ、めっちゃエモいよ… みんなからのメッセージカードも温かくて、特にミクの「好き」って言葉が刺さったなあ。 完全に治ったわけじゃないけど、そばにいてくれる人たちの存在が少しずつ心をほぐしていく感じが、すごくリアルで好きです…🌸 天楽さん、素敵な作品ありがとうございます✨ 続きも楽しみにしてるね!