テラーノベル
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ユキ
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家のドアを開けた瞬間だった。
ふわっと、ご飯の匂いがした。
キッチンには料理が並び。
テーブルにはワインが置かれていた。
彼は何も聞かなかった。
何も責めなかった。
ただ、私を見ると両手を広げた。
「おかえり。」
その一言だけだった。
張りつめていたものが、一気にほどけた。
私は彼の胸に飛び込んで、子どもみたいに泣いた。
彼は背中をゆっくりさすりながら、小さな声で言う。
「よう頑張ったな。」
「帰ってきてくれて、ありがとう。」
「おかえり。」
その言葉を聞いた瞬間、分かった。
私がずっと欲しかったものは。
追いかける恋じゃなかった。
試される愛でもなかった。
安心して帰れる場所だった。
その夜、彼は最後まで何も聞かなかった。
二人でワインを飲んで。
他愛もない話をして。
一緒にご飯を食べた。
私は心の中で、静かに思った。
ああ。
帰ってきてよかった。
コメント
1件
うわあ、これ……すごく良かったです。「おかえり」の一言で全部がほどける感じ、胸にきました。「何も聞かない」「何も責めない」って、実は一番難しいことですよね。ずっと追いかける恋や試される愛に疲れてた主人公が、やっと「安心して帰れる場所」を見つけた瞬間の描写があまりに優しくて、読みながらじんわりしました。彼の「よう頑張ったな」の方言混じりの台詞も、ぬくもりがあって好きです。