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校舎の内部は、もはや「建物」と呼べる状態ではなかった。
廊下の先が、
暗闇に溶けていく。
壁は残っている。
天井も、床もある。
――だが、奥行きが歪んでいる。
「……深いな」
リンクは、
足を止めずに進んでいた。
敵が多い方向。
気配が、最も濃く集まる方角。
《リンク》
ゼルダの声は、落ち着いている。
《校舎の異常は、 外側ではなく―― 構造の内側から発生しています》
「中心が、ある」
《ええ。 ここは、すでに“場所”ではありません》
チャットは続く。
《何かが、 校舎という形を借りて存在しています》
『なら、避ける理由はない』
リンクは、
そのまま深部へ向かう。
――別の場所。
この学校の男子生徒、スカルは、
走っていた。
隣には、親友のロボットのような存在。ルビー。
「……もう少しで、外だ!」
「頑張って!スカル君!」
出口は見えている。
だが、空気が重い。
その時――
ルビーの足元から、
黒鉛のようなものが湧き上がる。
「……え?」
次の瞬間、
それはルビーを包み込んだ。
「アッ…………」
ルビーが声を漏らす。
触れてはいない。
締め付けてもいない。
――なのに。
「……ルビー?」
返事が、ない。
ルビーは、
ゆっくりと顔を上げる。
目が、合わない。
動きが変わる。
迷いが、消える。
……乗っ取られた
スカルは理解する。
「……ごめん」
それだけ言って、
踵を返す。
追ってはこない。
だが、
何かが確実に増えた気配だけが、
背中に残った。
リンクは、
二階へ。
三階へ。
敵は、
斬っても斬っても湧く。
「……止まらないな」
《当然です》
ゼルダの声は、淡々としていた。
《この校舎は、 “生み出す側”に回っています。 数を減らす行為は、 根本的な解決にはなりません》
「なら、根を断つ」
三階の突き当たり。
特別倉庫。
扉の隙間から、
黒鉛が溢れ出している。
床を這い、
壁を伝い、
空気そのものを濁らせている。
「……ここだな」
鍵は、
外部の力で固定されていた。
リンクは距離を取り、
リモコンバクダンを投げる。
爆発。
――変化なし。
『……壊れない』
《ええ》
ゼルダは即答する。
《この扉は、
閉じられているのではありません》
《“開かない結果”が、
既に確定しています》
『原因を叩くしかない』
《その通りです》
ゼルダは、
シーカーストーンに複数のポイントを示す。
《最初に向かうべきは――
アリスの部屋》
ゼルダの分析は続く。
《そこは、 この異常が最初に“歪んだ場所”です》
「了解」
リンクたちは、
迷いなく踵を返す。
その瞬間、
廊下の奥から敵が湧き出す。
「……邪魔だ」
剣が、静かに光る。
一太刀。
二太刀。
進路を切り開く。
(……校舎そのものが、巣か)
その頃。
校舎の外へ逃げようとしていた
教員と生徒たちは――
一斉に立ち止まった。
「……出られない?」
見えない壁。
触れた空間が、歪む。
結界。
校舎全体が、
完全に閉じられている。
「……閉じ込められた……」
誰かの声が、掠れる。
グレース校長は、
校舎を見上げ、静かに理解した。
(……中心は、中)
逃げ場はない。
リンクは、
敵を斬り伏せながら進む。
アリスの部屋へ。
そして、
そのさらに奥へ。
《リンク》
ゼルダの声は、
揺るがない。
《恐れる必要はありません。 あなたは、
すでに“向こう側”と戦える位置にいます》
『ああ』
深淵は、
確実に近づいていた。
校舎は、
もはや――
一つの存在になりつつあった。