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リンクは足を止め、背後にいる二人を振り返った。
「……ここで待て」
エンゲルとバブルは、思わず顔を上げる。
リンクはポーチから小さな刃を取り出し、
一人ずつに手渡した。
「古代の刃だ。
十五個ずつ」
「え……これ……何?」
「敵が来たら、
考えなくていい。
思い切り当てろ」
刃は軽く、
触れただけで異質さがわかる。
「リンクは……?」
「俺は、先に行く」
二人を、廊下の比較的安全な場所に残す。
《リンク》
ゼルダの声が、短く念を押す。
《無理は、しないで》
『する必要がない』
リンクはそう答え、
一人、歩き出した。
アリスの部屋。
扉を開けた瞬間、
感覚が狂う。
床はある。
壁も、天井もある。
だが――
距離感が、成立していない。
「……歪んでるな」
部屋の中心。
そこに、
黒鉛が集まり、形を成していた。
人の輪郭。
だが、どこかが決定的に違う。
疑似アリス。
――五体。
視線が、同時にリンクへ向く。
「……なるほど」
リンクは立ち止まり、
ポーチから煮込み果実を取り出す。
攻撃力上昇レベル3。
一息で食べる。
体の芯に、力が通る。
「相手になる」
疑似アリスたちが、
一斉に動いた。
リンクは踏み込み、
剣を振るう。
一体、切る。
反応が遅い。
二体目。
三体目。
だが、
数で押してくる。
「……本物より、雑だ」
剣が閃き、
黒鉛の身体が崩れる。
残りも、
確実に削っていく。
一方、その頃。
校舎の別の区画。
教師たちは、生徒を連れて移動していた。
「……数が減っている」
誰かが、声を震わせる。
確認するまでもない。
教員二名の姿が見えない。
「……やられたの?」
答えは、なかった。
その時。
暗がりから、
異様に機敏な個体が現れる。
他の敵とは、動きが違う。
「……速い!」
次の瞬間、
床から、壁から、
棘のようなものが伸びる。
直撃はしない。
だが、避けきれない。
「散れ!」
サークルの声で、
教師たちは一斉に散開する。
生徒たちも、
混乱のまま逃げ出す。
隊列は、完全に崩れた。
「……統制が、取れない……」
ブルーミーが歯を噛む。
それでも、
立ち止まる者はいない。
校舎の中は、
すでに安全な場所ではなかった。
歪んだ空間の中心で、
最後の疑似アリスが立っていた。
他の四体とは、質が違う。
黒鉛がより密に絡み合い、
形状も、動きも、
明らかに“完成度”が高い。
「……少し硬いな」
リンクは剣を構え、
床の感触を確かめる。
疑似アリスが動く。
踏み込みは鋭く、
人の動作をなぞるように、
的確に距離を詰めてくる。
リンクは刃を合わせる。
――重い。
受け止めた瞬間、
手応えが腕に残る。
(装甲がある……いや、密度か)
切り返し。
斬撃が走る。
黒鉛が弾けるが、
即座に繋ぎ直される。
疑似アリスは、
まるで戦い方を学習するかのように、
動きを変えてくる。
「再構築……」
リンクは一度距離を取り、
深く踏み込む。
剣速を上げ、
数撃を重ねる。
攻撃力上昇の効果で、
確実に削れてはいる。
だが――
決定打にならない。
(……中心がある)
疑似アリスの動きが、
一瞬だけ大きくなる。
踏み込みが深い。
その瞬間を、
リンクは逃さない。
盾受け二段ジャンプ。
空中で、
世界が引き延ばされる。
バレットタイム。
リンクは背中に手を伸ばし、
古代兵装・弓を取り出す。
弦を引き絞る。
視界の中で、
黒鉛の流れが“収束する点”が見えた。
(……あそこだ)
古代兵装・矢をつがえる。
放つ。
青い閃光が、
一直線に走る。
次の瞬間、
疑似アリスの中心が穿たれた。
時間が戻る。
疑似アリスは、
一歩、二歩と後退し――
そのまま、静かに崩れ落ちた。
黒鉛は床に散り、
再構築されることはなかった。
リンクは着地し、
弓を下ろす。
「……終わりだ」
その頃。
廊下で待機していた
エンゲルとバブル。
足音。
暗闇の奥から、
敵影が近づく。
「……来るよ」
エンゲルは、
リンクから渡された古代の刃を握る。
迷いはない。
投擲。
刃は、
敵に触れた瞬間――
存在そのものをエネルギーで消し飛ばした。
跡形もない。
「……完全に、消えた」
だが、
次の瞬間。
廊下の奥で倒れていた生徒の死体が、
ゆっくりと起き上がる。
動きは鈍い。
それでも、明確に
二人へ向かってくる。
「……別個体」
バブルが前に出る。
落ち着いた動作で、
確実に対処する。
動きは、止まった。
エンゲルは、
二つの現象を見比べる。
(……違う)
古代の刃で消えた敵。
今、動いた存在。
「……基盤だ」
エンゲルは、息をのむ。
「この敵…… 死体がないと、構築できない」
「 依代を使った擬似的な存在だ」
考えは、
はっきりと形になる。
廊下が、
一気に明るくなる。
リンクが戻ってきた。
大きなアカリバナを掲げ、
三人を照らす。
「無事か」
「うん」
エンゲルは、
すぐに口を開いた。
「リンク、
仮説がある」
「聞こう」
「この敵は、 死体という基盤が必要」
「完全に消し飛ばす古代の刃とかなら倒せる。
でも、それ以外では倒せない」
リンクは、
静かに頷く。
《正しい推測です》
ゼルダの声が重なる。
《この現象に敵。 “依代”を必要としています。 それを断てば、 増殖は抑えられます》
リンクは、
アカリバナを高く掲げた。
「いい判断だ、エンゲル。 先に進む」
歪みの奥。
特別倉庫へ。
校舎の核心は、
もう目の前だった。