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ダンボール箱の中に入っていた〇〇とその同類たちと共に異世界を旅することになった件 〜ダン件〜
第139話 - 〇〇は『ケンカ戦国チャンピオンシップ』を観に行くそうです その10
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2024年01月08日
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2024年01月08日
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さあて、戦うのはいいが、こいつとどう戦うか、まだ全然決めてないんだよな……。
ナオト(ショタ状態)は長方形の闘技場の中心に向かって歩いている最中にそんなことを考えていた。
一回戦で『|紫水晶の形態《アメシスト・モード》』になっちまったから、今日はもう使えないし、『第二形態』になるための体力も残ってない。
うーん、困ったな……。
その時『ハル』が四枚の翼から、たくさんの羽を闘技場の床に次々と発射し始めた。
あいつ、何しているんだ? 誰もいないところにどうして羽なんかを……。
その時、ナオトは彼女の意図を読み取り、すぐさま、そのことを他の三人に伝えた。
「おーい! お前らー! 少しの間、時間稼ぎを頼むぞー!」
ナオトが他の三人の方に向かって、そう言うと。
『ああ! 任せておけ!!』
三人同時にそんなことを言った。
よし、これで少しは時間が稼げそうだな。
さてと、それじゃあ、俺は俺のやるべきことをやりますか!
ナオトは三人に背を向けると同時に、真上にふわふわ飛んでいった。(チエミという体長十五センチほどの妖精から風の加護を受けているため飛べる)
そして、その直後。ハルが床に発射した、たくさんの羽は赤い瞳《ひとみ》以外、全てが白い『ハル』へと姿を変えた。
その光景を見て、ナオトの指示内容の意図を理解した彼らはそれぞれの武器を構えた。
『ここは絶対に死守してみせる! さあ! どこからでも、かかってこい!』
こうして彼らは協力して真っ白な『ハル』たちを倒さなければならなくなったのであった。
*
闘技場の結界が頭に当たるか、当たらないかのところで止まると、ナオトは『|力の中心《センター》』と話し始めた。
「聞こえてるか? |力の中心《センター》……いや、『アメシスト・ドレッドノート』」
「呼んだか? ナオト」
「ああ、呼んだぞ。できれば、呼びたくなかったんだがな。まあ、その……なんだ」
「言っておくが、今のお前に、あの小娘を倒せる力はないぞ?」
「うぐっ!? はぁ……やっぱり分かってても、ストレートに言われると、さすがにショックを受けるな」
「だが、それが事実だ」
「まあ、そうなんだけどよ……」
「しかし、それでもお前はあの娘と戦いたい。そうだろう?」
「ははは、やっぱりお前には、お見通しか」
「当たり前だ。それにお前の体内に入った時から、こうなることは薄々、気づいていた。だから、今さら止めはしない」
「……そっか。ありがとな、相棒」
「……まあ、あれだ。一つだけ、今のお前でも、あの娘と戦うことができる方法があるぞ」
「ははは、やっぱりあるのか……。それで? 俺は何をすればいいんだ?」
「……それは」
その時、なぜかミノリ(吸血鬼)の声が聞こえた。
『ナオト、聞こえる?』
「あれ? どうしてミノリの声が聞こえるんだ? 俺は、ついに頭がおかしくなったのか?」
『ナオト、ふざけるのはやめて』
「いや、驚いたのは本当だぞ? というか、お前はどこから話しかけてるんだ?」
『私の固有スキル【|意思の伝達《メッセージ》】で、あんたの脳に直接話しかけてるから、会場のどこかとしか言えないわ』
「固有スキル? それって、キミコの【超強奪《ラバー》】みたいなものか? というか、いつから使えるようになったんだ?」
『固有スキルは、大罪の力を持つ者《もの》の力の一つで唯一、【自分】で名前を付けることができて、なおかつ、その効果は……』
「仮名の固有武装のように十分の一にはならず、百パーセントの力を発揮できる。だろ?」
『ええ、その通りよ』
「すげえな、じゃあ、大罪持ちは全員……」
『ええ、おそらく固有スキルが使えるわ』
「……マジかよ。すげえな、おい」
『コホン……。今、あたしはこの会場に紛れ込んでいるわ。もちろん変装してるけどね』
「そっか。じゃあ、一回戦の時に聞こえたあの声は、お前のだったんだな?」
『ええ、そうよ。というか、戻ってきた名取さんに、ここまで案内してもらったおかげなんだけどね』
「そっか……名取のおかげか」
※名取(なとり) 一樹《いつき》。
ナオトの高校時代の同級生で『名取式剣術の使い手』。
名刀【銀狼《ぎんろう》】の所持者。
前髪で両目を隠しているのは、人見知りだから。
いつもは途切れ途切れに話すが、武器のことになるとよく話す。時々、存在感が薄い。
『ねえ、そろそろ本題に入っていい?』
「ん? あ、ああ、すまない」
『えっと、あんたはこれから、あの天使型と戦うつもりなのよね?』
「ああ、そうだが。それがどうかしたのか?」
『一回戦と同じようなことをしたら、あんたは確実にあの世行きよ。分かってる?』
「承知の上での決断だから、お前に何を言われても俺の意志は変わらないよ」
『あんたなら、そう言うと思ったわ。それで? どうやって倒す気なの?』
「それをアメシストが説明し始める前に、お前が割り込んできたから、今のところ詳しいことは何も分からない」
『え? そうだったの? それは悪かったわね』
「別に気にしてねえよ。おい、アメシスト。そろそろ説明していいぞ」
「よし、では始めるぞ。我が主の力でやつに勝てる可能性があるとすれば……」
それを聞いたミノリ(吸血鬼)は俺を止めようとしたが俺は一瞬も迷うことなく、それを実行した。(アメシストが発した言葉の内容は、もう少し進んだところで明らかになる)
*
その頃、ザコ処理を完遂したブラスト(一月の誕生石をその身に宿した斧《おの》使い)とブレイズ(魔剣デュランダル使い)とブレイク(聖鎚《せいつい》ミョルニル使い)はナオトの気配を察知すると、後退した。
『あとは頼んだぞ! ナオト!!』
彼らがそう言った直後、ナオトは闘技場の床に上手く着地した。新しい力を身に纏《まと》って……。