そう。私が作ろうと思ったのはたこ焼き。でもたこ焼き機がどこにあるのかがわからない。たしか物置の上の方に確かあったはず…。そう思い物置の扉を開ける。
ボトッッ!!
「いっっ…つぅぁ…、?」
この物置は長いこと使われていない。というのもものを詰め込みすぎて使えないから放置されていたのだ。つまり扉を開けると中のものが降ってくるのは割と予想できることだったんだけど…まぁ忘れてたよね、普通に。
「ん?これボール…どうりで痛くないわけだわ…」
降ってきたのはバレーボール。そうは言ってもボロボロで外の青色とか黄色の部分が剥がれかけているし、埃かぶっている古いものだ。少し気になり手に取る。
「これ…小さい頃使ってたやつかな。」
私は今こそしてないものの、小学校の頃はバレーをしていた。別に上手いわけじゃなかったけれど下手なわけでもなかった。お兄と一緒のクラブでしてたからよく一緒に練習をしたものだ。けれど中学生になった時と同時に私はバレーをやめた。お兄は続けていたけれど、私は情熱とかそういうのを持ってたわけじゃないから。
「たまにはやってみようかな。」
どっちにしろ学校にはしばらく行けない。その時間をバレーに使ってみようと思った。
「やば、もう5時半じゃん。たこ焼き機ちゃんどこー!?」
お兄は部活終わりで帰ってくるのは8時ごろ。私はその前にたこ焼きの元を作ろうと思ってはいるけれど何より作ったことがない。どのくらい時間がかかるのかが分からない。急ごう。
結論から言うと、すごく…すごく料理が上手になっていた。いやいやいや、自分でもこんな上手く出来るとか思ってなかったレベル。しかもまだ7時半。色々できる。だからとりあえず風呂を沸かして、テレビを付けて待つことにした。
テレビをつけて流れてきたのはバレーボール。男子だ。これは多分…日本対オーストラリア?とかその辺だと思う。イギリスマークついてるとどの国かとか分かりにくい。もうずっとしてないものの多少のルールはわかる。プロは確か5セットマッチ。今は2:1の4セット目。日本が押されてる。でもこの人たちはみんな楽しそうだ。勝ち負けがどうでもいいわけじゃない。それが仕事だし。けれどこの人たちはそんなことより楽しもうとしてる。ボールを追いかけて追いかけて追いかけた先の一点。それだけに大人がよってたかって喜ぶ。はたから見たら変なふうに見えるだろう。特にスポーツの楽しさを知らない人は。でもそんな私でも思うことがある。やりたい、と。またバレーをしてみたいと思える。バレーはこんなに楽しいんだってみんなに広めたくなる。そんなプレーだ。
ガチャッ
「ただいまー。」
テレビで日本が負けた時、ちょうどお兄が帰ってきた。私はテレビを消してダイニングに顔を出す。
「おかえりー。」
「遅くなってごめん。ご飯つくるからまって…て、あれ。できてる。」
「えみ、もしかして作ってくれたの?」
「まだ今から一緒にしようと思ってるだけだよー。それに時間もあるし、私がやって当たり前だよ!」
「休んでて良かったのに…、もしかしてお風呂も沸かしてくれてるの?ありがと。」
「うん。どういたしまして。今日たこ焼きしない?たこ焼き機も探してきたんだよ!」
「ん。久しぶりだねー、たこ焼き。」
「だねー。あ、たこ焼き一個につきタコ一切れまでだから入れすぎないでよ?」
「バレたか…」
「いくらタコ好きだからってそれはダメ。食べたかったらたこ焼きごとたくさん食べてよね。」
「そんなに食べれない。」
「がんばれー。」
「…それ思ってないよね。」
「せいかーい。ほら、こいつ綺麗に焼けたから貰っちゃうよ。」
「えそれ俺が育ててたやつ」
「知らなーえ、これタコめっちゃ入ってるんだけど。5、6個入ってる。」
「言われる前だったし。あとそいつとかもだよ。」
「そこまでタコ好き!?もぉ…ほら、食べていいよタコ。好きなだけ入れちゃえ。」
「ん、あんがと。おいしい。」
「でしょー。」
結局お兄は最後までタコ5個たこ焼きを貫いてタコを食べまくった。そのせいで後半はぐがなくなったのでほぼ野菜パンケーキみたいなことになった。意外と美味しかったからまぁいいや。
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