テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
第1章:静かなる絶望
教室の隅、黒髪の菊は膝を抱えて座っていた。
外から見れば、彼は完璧な優等生だ。勉強もできる、発言も落ち着いている、周囲の教師や同級生も一目置く存在。しかしその瞳の奥には、誰にも見せられない絶望が潜んでいた。
「大丈夫です……」
小さな声は、自分を誤魔化すための呪文のように繰り返される。
その時、フランシスが颯爽と現れた。
「今日も元気ね、寄生虫。……今日はそうじゃないでしょ?」
華やかな外見、溢れる自信。しかしその笑顔の裏には、執拗な嫉妬と歪んだ愛情が隠れていた。
菊は一瞬息を呑むが、顔には出さず静かに視線をそらす。
今日、朝出会った変な人の言葉が脳裏を過ぎる
「ねえ、友達になろうよ!」
アーサーは純粋に、善意だけで菊に手を差し伸べた。
でも菊の胸はざわつく。
“無邪気すぎる善意が、また余計な混乱を生む……”
分かっているのに、どこかで心の奥が期待してしまう。
菊の心は、少しずつ、しかし確実に追い詰められていった。
第2章:歪んだ愛情
日々が過ぎるにつれ、フランシスの攻撃は巧妙かつ執拗になった。
誰もいない教室での陰湿な言葉、休み時間の小さな罠。
菊は耐え、笑顔を保ちながら心を押し殺す。
マシューは遠くからそれを見守り、胸を痛めた。
「菊……僕の想い、届かないのかな……」
優秀な兄アルと比べ、劣等感に押し潰されそうな日々。
それでも菊への気持ちは消えない。
アーサーは今日も無邪気に動く。
「ねえ、みんな仲良くすればいいのに!」
その一言が、さらに二人の関係を拗らせる。
善意のつもりが、地獄へのスパイスになってしまうのだ。
第3章:決意
ある日の夕暮れ、菊は静かに決心した。
「二人で死ぬことにした……二人で決めたの。だからアーサー、楽に死ねる道具を出して?」
アーサーは驚きのあまり口をつぐむ。
「えっ、そんな道具……ないよ!」
しかし、無力なアーサーが出せたのは、仲直りリボンだけだった。
リボンを手に取る菊。深く息を吸い、フランシスを見つめる。
「ようやく君を手に入れられるよ」
フランシスは涙を流し、苦笑いで頷く。
「ようやく、君は僕だけを見てくれる……」
二人は互いにリボンを巻き、首を結び合った。
まるで世界のすべてを拒絶するかのように、静かに、しかし確かに決意を固める。
第4章:永遠の結び
リボンで首を結ばれたまま、二人は抱き合う。
静かに、ゆっくりと力を失っていく身体。
アーサーは必死に解こうとするが、どうすることもできない。
「なんでッなんでッ…」
その時、マシューが震える手で近づき、目に涙を浮かべながら覚悟を決めた。
「……君が望んだ形なら、僕が守らなくちゃ」
二人の遺体を、そっと隠すマシュー。
愛していた人の亡骸を守ることしかできない。
そして最後に、そっと呟いた。
「僕の恋はここで終わっちゃったみたい、だから…二人で仲良く天国でやっててよ? 僕のためにも。」
教室には静寂だけが残る。
リボンで結ばれたままの二人の姿。
アーサーは涙をこぼしながら、「これで仲直りできたんだよね……?」と呟く。