コメント
2件
(*´˘`*)b
なんだこのほのぼの空間…
日本。
治安の良さは世界トップクラス、海外観光客も多く訪れる。
軍事的力を持たず平和を第一にしてきた中立国家である。
温厚で忠実、清廉潔白そんなイメージを持つ者も少なくはないだろう。
でもそれはただの表向きの顔。
見えぬ裏で蠢く悪意の羅列、遥か彼方の昔から蔓延り続いている数多の黒い手が蹂躙して広がり網を作っている。
それらは目に見えぬ細い糸のように気付かぬ間に至る所に張り巡らされていて幾重にも折り重なり決して断てる物ではない。
この世界では…
嫌、この日本では絶対的不可侵な存在が存在している。
触れてはいけない。
知ってはいけない。
関わってはいけない。
命惜しくば利口であれ。
そう揶揄されるほど危険で強大な者。
表面では一般企業として潜んでいて、裏では日本を護り民間に擬似的な平和を作り上げて夢を見させている。
長は何者なのか性別も名前も何もわからない、存在だけが浮き彫りになっている。
一見では一般人にしか見えない人間や心情を義に置く人間まで。
ただ組に所属する全員が総総の個性や信念を持ち日の丸の背負っている。
それが神炎鬼組。通称…鬼機関。
「…きろ、…おき、ろ」
「起きろ…四季」
畳の匂いが肺に入っている事を自覚した途端、呼びかける声に意識は上昇した。
「お、はよ…無人さん」
目の前に映る黒髪のイケメンは今日も今日とてイケメンなんだな…とボヤけた頭で考える。
「早く起きろ、四季」
「ダノッチ〜四季君起きた??」
スパーンと襖が勢いよく開けられたと思えば、また別のタイプのイケメンが現れる。
「京夜さん…おふぁよう」
「四季君おはよ!」
欠伸混じりに挨拶をすればこちらが吹き飛ばされてしまうんじゃないかと思うほどの元気で挨拶を返された。お陰でボヤけていた頭も妙に冴えた。
「ウルセェぞ、花魁坂」
「真澄さん…おはよう」
「おせーよ、さっさと飯食え」
3人して来るなんて本当に過保護だなぁ…と言おうとするけれど味噌汁のいい匂いがしてきたから眠気を訴える体に鞭を打って歩き出す。
洗面台で顔を洗えば、眠気は幾分か消え去ってくれた。
軽い足取りで親父がいる仏間に向かった。仏壇の前には先客の馨さんが座って手を合わせていた。
畳が擦れる足音で気が付いたのかそれとも、気配を感じたのか…どちらにせよ馨さんは伏せた目を開ける。
「おはよう、四季君」
「…おはよ、馨さん」
「先行ってるね、四季君はゆっくりしてな」
頭を撫でながら笑って仏間から馨さんは出ていった。
馨さんが正座していた畳は体温が移ってほんのりと暖かかった。その残った体温に沿うように正座して写真の中の親父に手を合わせる。
うちは昔から続いているヤクザ一家。
俺は親父の実の子じゃない、親父の友人の子供らしい。死んで残った子供を親父が引き取った、血のつながりがない親子だった。
けど俺と親父は最初から最後までちゃんと家族だった。
でも数年前に親父は死んだ。
親父が貰ってきた組員を置いて。組員の殆どは優しすぎる親父が困っている子供や親元がない人達に手を伸ばして組員にさせて支えた。
おかげでウチは今日も沢山の人で溢れてる。無人さんたちみたいに歳が離れてる人も皇后崎達みたいに同年代の人もいる。
「親父…」
「あんな、俺親父が死んじまって悲しかったけど…」
「寂しくはなかったんだぜ」
「真澄さんとか、紫苑さんたちだって優しいし…碇達も側にいてくれるから」
「一人だったけど独りじゃなかったから」
「少年!ゴホッゲホッ」
「血吐くな!…四季!早く来い!!」
遠くで俺を呼ぶ幽さんと波久礼さんが呼んでる声が聞こえてきた。
閉じてた目を開けて仏間からゆっくりと出てリビングに向かう。俺を待っていてくれている家族のもとに。
読み切り作品は希望があれば、続編も書きますので…お気に召しました作品があったのならばコメントしてくださると少なからず頑張れますので…