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ヴァルゼオの大剣が振り下ろされる。紫電を纏った刃が空を裂き、セリオの身を狙う。
セリオは一瞬の判断で横に跳び、直撃を避ける。しかし、その余波だけで大地がえぐれ、魔力の衝撃波が周囲の空気を震わせた。
——まともに受ければ、ただでは済まない。
「どうした、勇者」
ヴァルゼオが嘲笑する。
「貴様は五度も蘇ったそうじゃないか。ならば、その度に俺に殺される覚悟もできているんだろう?」
彼の言葉に、セリオは目を細めた。
——五度目の復活。
「お前は、俺が何度蘇ったのかまで知っていたのか」
「ああ。お前を殺すためにな」
ヴァルゼオの瞳には、一切の迷いがなかった。”勇者を殺す”という目的以外、彼の生きる理由は存在しない。
その執念が、セリオの心に奇妙な感覚をもたらした。
——こいつは、俺以上に”過去に囚われている”のかもしれない。
セリオは深く息を吐く。考え込む時間はない。
「……ならば、俺も全力で応えよう」
言葉と同時に、セリオの剣が淡い蒼白の光を放つ。死者の魔力——霊装の剣が、幽鬼のごとき輝きを帯びていた。
「来い、ヴァルゼオ」
「言われるまでもない!」
二人の剣が交錯する。
ヴァルゼオの剣は圧倒的な破壊力を誇り、一撃ごとに魔力を喰らう呪詛が刻まれている。対するセリオは、それを最小限の動きで躱しながら、的確に反撃を狙う。
一撃——二撃——三撃——
剣戟の音が響くたびに、闇夜に紫電が走り、蒼白の光が揺れる。
しかし——
「……クッ」
セリオの剣の輝きがわずかに鈍った。
ヴァルゼオの剣の効果が確実に魔力を削っている。長引けば長引くほど、セリオの不利は明白だった。
「やはりな」
ヴァルゼオが冷笑する。
「貴様は”死者”に過ぎん。どれほど剣を振るおうとも、所詮は朽ちた亡霊よ」
その言葉に、セリオは眉をひそめた。
「……そうかもしれん」
「何?」
「だが、お前も”復讐の亡霊”ではないのか?」
一瞬、ヴァルゼオの動きが鈍る。
その隙を、セリオは逃さなかった。
「——はッ!」
刹那、彼の剣が弧を描くように振るわれる。
ヴァルゼオの剣をすれすれで躱しながら、セリオの剣が彼の肩口を斬り裂いた。
「ぐっ……!」
ヴァルゼオが後退する。彼の鎧が裂け、そこから黒い血が滴り落ちる。
「貴様……!」
「お前は、俺を倒すことだけに執着している。だが俺は、”生きる”ために戦っている」
ヴァルゼオは目を細めた。
「……ならば、俺を倒して”生き延びてみせろ”、勇者よ」
彼は剣を構え直す。
決闘は、まだ終わらない——。