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逆転したボクら

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逆転したボクら

1 - もがくことさえ諦めた奏と奏を何としても救いたいまふゆともがき続ける絵名と絵名の隣に居たい瑞希の話

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2023年01月01日

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3年後、父親が死んでしまって、曲を作れなくなった宵崎奏と奏の音楽に救われ、看護学部に入った朝比奈まふゆと悪質なアンチに付き纏われて、絵が描けなくなってしまった東雲絵名と絵名に全てを受け入れてもらい2人にも打ち明け救われた暁山瑞希の話




曲が、作れなくなった。

お父さんが死んで、暫くはそれでも曲を作ろうとした。けれど、何をやっても何処へ行っても曲は一向に作れない。次第に、食ももっと細くなり、眠ることが多くなったのに夜は寝れなかった。

曲を作らなければ私に価値などない。そうわかっているのに曲が作れない。

曲を作らなければ作らなければ。何度何度そう思っても、曲は作れない。

消えたくなった。お父さんを死なせてしまったのは私のせいなのに。お父さんの願いを叶えられない。

それでも、ニーゴのみんなには話せなかった。大丈夫だと偽って、遠ざけて、一人で抱え続けた。

誰もいないセカイに入り浸るようになり、ミクたちには心配されたが、何もする気にならなかった。

曲を作ろうとして、作れなくて絶望して、本当に消えようと思った。

いつかのまふゆのように消えるしかないとそう思うことしか出来ず、それが最適解だと思った。

それなのにみんなは来た。

異変に気づいたみんなはまふゆを筆頭に私のとこまで来て消えてほしくないと叫んだ。

そんなみんなを見て、私は更に消えたくなった。みんなに迷惑かけて、曲も作れなくて、怖くて。

まふゆは今度は私が救うと言った。

奏が救ってくれたのだから、今度は私が救うのだとそう言った。

ああ、まふゆはこんな気持ちだったのかと思いながら、一度消えることをやめた。

私は今でも、曲を作れないし、生きる価値なんてないと思っている。それでもまふゆが、絵名と瑞希がいて欲しいと願うから、ここにいる。


絶望の底の宵崎奏の話




大学生になったまふゆは看護学部に通っていた。

こう至るまでに、両親とは一悶着あったのだが、結局話し合いを続けまふゆの好きなようにしなさいと許してくれたのだ。

奏のお陰で感じることができるのになったものの、まふゆは現在も『優等生』であることはやめていなかった。

朝比奈まふゆの現在は、朝は学校に行き、家に帰ってから復習、全てが終わると奏の家に行き、面倒をみる。というハードなスケジュールだが、特に苦もなく清々しい気分で学校に通っていた。全てが自分がやりたいことであり、ニーゴ仲間とも頻繁に会い、順風満帆に過ごせているのだ。

今日は瑞希と2人で会う予定になっており、カフェで瑞希を待っていた。

「あっ、まふゆ。お待たせ〜!」

「そんなに待ってない。」

「うんうん、ありがとう。」

話は他愛のないことから始まり近況報告、そして奏と絵名の話になった。

「最近奏はどう?」

「いつもの同じ。ご飯は無理やり食べさせてるけど、寝たきりが多いし曲は作れない。」

「そっかぁ。」

「絵名は?」

「絵名も同じ感じ。絵を描くのが怖いってさ。昨日なんて絵名のとこ行ったら、瑞希に私の気持ちなんてわかんないでしょ!? だって。すぐに冷静になって謝ってくれたけどやっぱり、きついなぁ。もしかして、ボクが打ち明けられなかったとき絵名もこんな感じだったのかなって思った。」

「そう。」

「そう。って、それだけ〜?」

「私にそれ以上のものを求めてたの?」

「うーん、そうではないけどさあ。」

「ならいいでしょ。瑞希。私そろそろ帰らないと。奏のとこに行く予定だから。」

「おっけ〜。奏によろしくね。またみんなでファミレスに集まろうって伝えといて。」

「わかった。またね。」

「うん、また。」



「奏、起きて。」

瑞希と会った帰り、いつものように、まふゆは奏の家に行き、奏を起こす。

「ま、ふゆ?」

目を覚ました奏は腕は折れてしまいそうなほど細く、身体は痩せている。

自分を救ってくれた奏を死なせないために、今日もまふゆは奏の家に来たのだ。

「奏、今日はどう?」

「大丈夫だよ。まふゆ。」

今日の調子を聞いたまふゆに微笑みながら大丈夫だという奏は儚く、今にも消えてしまいそうであり、取り繕っている姿はいつかの自分のようであった。

「ご飯作ってきたけど食べられそう?」

「ごめん、食欲なくて。」

「少しは食べないと、また倒れるよ。」

「……ごめん。まふゆに迷惑かけて。」

「別に迷惑と思ってない。それより自分の心配。」

奏はずっと自分を責め続けている。父親が死んでしまったのは自分のせいなのだと。自分さえいなければ、よかったのだと。

ボロボロになった奏は、食すらも拒否し、頻繁に入退院を繰り返している。

「ご飯少しでも食べて。」

「……わかったよ。まふゆ。」

ご飯を作ってきたまふゆは奏に無理やり食べさせる。

「えっちょっとまふゆ。」

「食べて。」

「はい。」

圧に負けた奏は渋々食べ始める。

いつもこうだ。流石にそろそろ慣れればいいのにと思うまふゆだが、奏はいつも申し訳なさそうな顔をしている。

気にしなくていいのに。自分がやりたくてやっている事なのだから。

食事が終わり片付けていると奏は少し眠そうにしていた。

今日は少し落ち着いてることに安堵し聞いてみる。

「奏、今日は曲は作れそう?」

「曲、曲は、何も思い浮かばないの。曲を作るのが怖い。何も思い浮かばない。……ごめんなさい。ごめんなさいお父さん。私のせいでお父さんは。ごめんなさい。私がいたから。ごめんなさい。」

「奏、何度でも言うけど私は奏に救われた。奏がいたから心から笑えるようになった。それを忘れないで。」

「まふゆ…ありがとう。でも、私は。」

「今日、瑞希と会ったよ。」

「そっか。どうだった?」

「元気そうだった。それからまたファミレスにみんなで集まろうって。」

「……うん。ありがとう。」

今日も、届かない想いに苦悩する。

それでも、救ってくれた奏を救うと決めたから。

何も感じなかった私を、何度も何度も諦めずに、救ってくれたのが奏なのだから。


宵崎奏を救いたい朝比奈まふゆの話




ある日、酷いアンチが付いた。誰にも見てもらえない絵なのに、そのアンチだけは毎回毎回、絵を貶し、何故描くのか、才能がない。そう、SNSに書かれ続けた。アカウントを変えても変えても追っかけてきてどうしようもなかった。次第に投稿するのが怖くなり、SNSに絵を上げるのをやめた。

奏は酷い状態で、まふゆはそんな奏につきっきりで、瑞希には心配をかけたくなくて、誰にも言えなかった。

それでも最初に気づいてくれたのが瑞希で、泣きながら瑞希に話し、警察に話し、アンチは無くなった。

けれど、被害はそれだけじゃ済まなくて、私は絵が描けなくなってしまった。

筆を握るのが怖くてたまらない。

何度も描こうとした、それでも手が震え描けなくて、アイデンティティの消失を感じた。

それでも私は描こうとした。絵が好きで好きでたまらなくて、ここで終わるのが嫌だった。

絶対に描いてやると思い、この怖いという感情すら、絵にしてやろうと思った。

でも、筆を握っても、どうしても描けなかった。

そんな私に瑞希はずっと側に居てくれた。

それにどうしようもなく安心して、筆を持ち続けた。

私は未だに怖くて震えて絵が描けない。何度も瑞希に当たってしまったが、それでも隣にいてくれる。

だから私は今日も筆を持ち続ける。


もがき続ける東雲絵名の話




暁山瑞希は今、専門学校に通っている。カワイイを突き詰めるため、夢に向かって奮闘中だった。

秘密も絵名を初めに、ニーゴのみんなに打ち明け、受け入れてもらい、専門学校に通い続けながら曲をニーゴで作り続け、何もかもがうまくいっていた。

それが崩れたのは突然だった。

奏の父が亡くなったのだ。奏は平気のように振る舞い続けたが、ボロボロになっていくのはすぐだった。

奏が消えてしまいそうになり、3人で止めた。まふゆが奏を救うと言ったのにはびっくりしたが、安心もしたのだ。

次に絵名が、悪質なアンチにつかれた。絵名はうまく隠し通そうとしていたが、異変に気づくのは割と早かったと思う。でもそこでボクはミスをしてしまった。

絵名が話してくれるまで待とうとしたのだ。それがいけなかった。

次第にやつれていく絵名を見ていられず、事情を聞くと、泣きながら話してくれた。

何でもっと早く聞かなかったんだろうと後悔しながらも警察に事情を話し、アンチは消えた。

けれどそこでは終わらなかった。絵名が絵を描けなくなった。

描くことが怖いのだと言う。

それでも絵名は諦めなかった。何度も何度も震える手で筆を持ち続けた。

そんな絵名を今度はボクが支えたかった。

ボクには何が出来るかを聴くと絵名はただ側に居てくれればいいと言った。それだけなのかと思ったが、ずっと一緒にいてほしい言われ、ずっと側にいることにしたのだ。

「え〜な。来たよ〜。」

「瑞希。いらっしゃい。」

「今日は、どう?」

今日も今日とて絵名の家にお邪魔した瑞希はへらりと笑いながら絵名に尋ねる。

「今日も、ダメ、描けなかった。どうしても手が震えちゃうの。私は描かなきゃいけないのに。どうして!」

強く握りしめている絵名の手をそっと握り、手を開かせる。

「絵名。大丈夫。手、痛めちゃうよ。大事な手でしょ?」

「瑞希。ありがとう。」

泣きそうになりながら笑う絵名と共に今日も1日が過ぎていく。

東雲絵名のそばに居たい暁山瑞希の話




「ああ、これじゃあ、前と逆だ。」

そう言ったのは一体誰だったのか。

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