「あらすじ」の部分をキャプションとして使用しております。
詳細はそちらに明記しておりますので、どうぞ一読のほうをお願いいたします。
※加筆修正いたしました。
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両親から聞いてはいたが、想像よりずっと酷い。
ナムギュは転校初日から頭を抱える羽目になった。
丁度、夏休み明けの話である。
宿題など誰1人として提出しないどころか前を見てすらおらず、席もグチャグチャなまま好き勝手に騒ぎ散らしている。
下品な笑い声が耳障りでストレスフル。
教師も諦めているのだろう、自習だと言ってプリントを配り、しかもその内容は小学生レベル。
宿題を全て終わらせてきたナムギュだったが、とてもじゃないが提出できる雰囲気ではない。
そもそもだが、恐らくここは宿題をするような生徒のほうが異端とされる学校なのだろう。
初日から変に目立ちたくなかったナムギュは、仕方なく授業後に提出しに行った。
宿題を提出してきた事に対して教師は本気で驚いており、その意図する事実にナムギュは溜め息を吐きたくなった。
この学校では宿題を提出しないのが普通だという現実を教師の反応によって直視させられ、目眩のする思いだった。
(あんな、たった12枚のプリントすらやらねぇのかよ…夏休みとか1ヶ月くらいあんのに…)
転校前の学校では、毎日全ての教科でプリント2枚分ほどの宿題を出されていた。
合算すると、少なくとも1日で12枚程度になるだろう。
それがナムギュにとっての、宿題というものに対する認識である。
男子校なのは構わない。
自分はゲイだが公私混同はしない。
勉強に関しても家庭教師を雇用しているので問題無い。
だが。
この治安は。
あまりにも目に余る。
これまでクリーンな環境で生きてきたナムギュが、この校風に即馴染むことなど出来るハズがなかった。
むしろ、これ以上なく肌に合わない苦痛の空間でしかない。
馴染む事など一生できないだろう。
しかしながら。
このような場所で1番大切なのは、賢く立ち回ることである。
初日からドッと疲れが押し寄せてくるザマであったが、とりあえずナムギュは考える時間が欲しかった。
立ち回りを考える時間が。
遅刻ギリギリに登校し、常に周囲を観察しながら空気のように過ごし、逃げるように下校。
そして帰宅後に考える。
それを繰り返すこと10日目。
クラスメイトの1人が、ナムギュに友好的な態度で話しかけてきた。
この学校には、とんでもないヤツがいると。
サノスという名のソイツは所謂マフィアと呼称される家柄の出身で、この世で悪とされるもの全てに手を出している。
恐喝や薬物、暴利での金貸しはもちろんのこと、人身売買や強盗の指示まで。
人を殺めた経験も数知れず。
サノスの周囲にいる人間も危険人物ばかり。
いやに気合いの入った口調で、クラスメイトはサノスとその取り巻き達が如何に危険なのかを長々と語り、ナムギュを自分が入っているグループに誘ってきた。
曰く、お互いを守り合っている生徒の集まりらしい。
今日の放課後に定期集会があるから参加してみないかと、そうクラスメイトは提案してきた。
唐突な話にナムギュは断わろうとしたが、そのクラスメイトは、ただ見ているだけの状態が耐えられなかったのだと強く主張してきた。
押し負けた部分もあるが、ナムギュはとりあえず参加しに行ってみることに決めた。
悪いことにはならないだろう、と。
だが、ナムギュは甘かった。
そのグループこそ、校内随一の悪質な人間の集まりであったのだ。
定期集会と言う建前で、小賢しい犯罪の計画を立てているようなロクでもないグループであった。
その上、必要も無いのにサノスを潰そうとまで考えている始末。
彼らは別段サノスに何かをされたわけでは一切無い。
「偉そうでイラつく」
というだけの理由で潰そうとしているのだ。
そもそもの大前提として、毎日平気な顔でこの学校に通っている時点で全員が不良である。
それこそ簡単な宿題すら提出しないような、それを普通のことだと考えているような、模範的不良。
不良でない生徒は退学するか、不登校。或いは最初から入学などしない。
ナムギュは非常に特殊な例なのである。
クラスメイトが加入しているグループに関しても、少し考えれば矛盾に気付く。
身も蓋も無いが、定期集会を開く暇があるなら帰って勉強しろと言う話である。
その辺りの認識に於いて、ナムギュは根底から勘違いをしていた。
実際のところ、クラスメイトにとってナムギュは単なる上納品でしかなかった。
ナムギュの外見を気に入った上級生に対しての上納品。
とは言えそれをナムギュに悟られてはならないと、まずグループの連中は表向きそれらしい話をした。
お互いに守り合う方法の話を。
また、サノスの危険性についての話を。
少なくとも1時間は延々と話し続けた。
内容の薄っぺらさに呆れつつ、ナムギュは雑に話を聞き流していた。
加入は無いな、と。
出された飲み物を警戒することなく飲みながら。
何が入っているかも分からない飲み物を。
一切の警戒もせずに。
だが、それも仕方のないことである。
これまでクリーンな環境で生きてきたナムギュにとって、他人に提供する飲み物に何かを仕込むなどという行為は現実味が無かったのだ。
空想上の御伽噺とでも言おうか、少なくとも自身からは縁遠いことだとナムギュは無意識のうちに思い込んでいた。
その後は悲惨の一言であった。
盛られたクスリに気付かなかったナムギュは歩くことすら困難になるほどの酩酊状態になり、そのまま上級生とクラスメイトにレイプされた。
マズいと気付いた頃には時既に遅し。
ロクに力の入っていない抵抗など無駄でしかなく、呂律の回らない口で嫌だと言っても説得力が無かった。
それどころか誘っているようにしか見えず、ナムギュが必死になればなるほど男達の興奮を煽る結果に陥り、行為は激しく暴力的になるばかりであった。
痛みと悔しさで涙が溢れたが、それすら誤解を生むようなものとして写った。
快楽に酔って生理的に流れた涙として。
その上、脅しの道具として動画や画像まで撮られていた。
それらは、まるでナムギュが行為を楽しんでいるかのような編集をされていたが、
「ぶっちゃけ編集なんか必要なかったけどな?本当は楽しんでたんじゃねーの?」
そんなことまで言われる始末。
「ばら撒かれたらヤバいだろ?こんなん明らかにキメセクを楽しんでるビッチにしか見えねーし。あと、それを壊しても無駄だからな」
クラスメイトにバックアップを渡されたナムギュは、もう逃げられないのだと悟った。
涙すら出なかった。
コメント
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凄い手の込んだ小説ですね! LOVEです!!!!
神作品の予感!