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モノクロナツキ
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#オリジナル
モノクロナツキ
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モノクロナツキ
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「……えっと……新くん、これは……?」
パチッと明かりがついた寝室。
僕が意気揚々と開けた扉の向こう、興奮が絶好調にぶち上がった僕たちの目の前にあったのは──壁の6分の一を占めているであろう、洸くんの公式写真の数々だった。
いくら公式で全て集めたものとはいえ、本人にこれを見られるのは恥ずかし過ぎる。
「あ、ちょっと、これは……!」
急いでその壁の前に立って、両腕を伸ばして必死に隠す。が、そんな往生際の悪いことをしてももう遅い。
洸くんに「ちょっと見せて?」と腕を引っ張られ、その写真のすべてが白日の下に晒された。
「ごめんなさい、すぐに全部剥がします!」
平謝りする僕の考えとは裏腹に、洸くんは少し意外そうな、けれど嬉しそうな顔をして、一枚の写真を指差した。
「……これって、俺の高校生の時の写真……うわ、これは俺がカットショーで優勝した時のやつやん。この記事どこで手に入れたん?」
怒るどころか、楽しそうに聞いてくる洸くんに少しホッとして、僕は一介のオタクに戻り、意気揚々と語り出す。
「地元紙に洸くんが載っている小さい記事を見つけたんです。で、学校のホームページにならもっと載っているかと思って調べたら、色々な表情をした洸くんが溢れてて、急いでプリントアウトしました」
「へぇ、そうなんや。あの時、そういう話は聞いてたんやけど、忙しかったし確認する暇なくて。なんか玉手箱開けたみたいで嬉しい」
洸くんは色んな写真を見ながら、「懐かしいなぁ」とニコニコしている。よかった、引かれなくて本当によかった。調子に乗った僕は、さらに秘密を口にした。
「あと、この高校生の時の写真は、大迫くんに……」
「大迫!? なんで知ってんの!?」
「実は共通の友人がいて。流石にお金のやりとりはアカンやろと思って、3枚につき、1マックセットで取引してました」
「うわっ、何枚あんねん! 結構な数いったな? ほんまに推し活やん。確かに、大迫にめっちゃ写真撮られてた覚えあるわ」
楽しそうに笑いながら、洸くんが丁寧に一枚ずつ確認している。よかった、洸くんがこんなに喜んでくれるなら、僕のオタク魂も捨てたもんじゃないな。
「……本当は全部欲しかったんですけど、お小遣いが足りなくて。毎回どれにするか厳選するの、本当に厳しかったです」
あの頃を思い出すように、写真を見つめる。
この時の洸くんも、あの時の洸くんも、今の洸くんも。僕の気持ちはどんどん大きく変化していったけれど、相変わらず、彼の存在が僕の心を埋め尽くしている。
「……でも、これは」
そう言って、洸くんが少し真面目な顔をして、一枚の写真を指差した。そして。
「……審議やな?」
その指の先にある写真は──あの事件があった日、弦さんから送られてきた、テディベアを抱きながら眠っている洸くんの激甘写真だった。
「……これはどうやって手に入れたやつ?」
少し笑ってはいるが、目が笑っていない。
もしかして、僕が家に忍び込んで撮ったストーカーだとでも思ってるんやろうか。
でも、ここで「弦さんからもらった」という真実を告げると、彼らの兄弟の信用度が落ちて喧嘩になってしまうかもしれない。一瞬、躊躇いが脳裏をよぎる。
「……もしかして、家、」
「弦さんから送られて来ました!!!!!」
ストーカーの疑いを掛けられるなら、他の犠牲者はどうだっていい。まして、相手は弦さんや。洸くんに虐げられても笑って嬉しそうに受け入れる、そんな人や。洸くんの信用をなくすくらいなら多少の犠牲は仕方ない。
一瞬の判断で大恩人を白状した僕に、洸くんは目を丸くして驚いている。そして、「いつのやつやろ?」と考え込んでしまった。
僕はそっとスマホを取り出し、これが証拠ですとでも言うように、送信されてきたメッセージの画面を洸くんに見せた。
「……これって、あぁ……あの日か」
洸くんが少し悲しそうな目をして、その画面を確認した。あかん、あんなに酷い目にあった日を思い出させたら。僕は慌てて、彼の小さな手を包み込むように握りしめた。
「……この日は、僕が洸くんに想いを伝えた日です。そして、本当の友達になった日です」
僕が気持ちを込めて伝えると、洸くんは、今僕たちがどういう関係になったのかを思い出したかのように、愛おしそうに優しく微笑んだ。
「……そうや、俺たちが始まった日や」
そう言って、ぎゅうっと僕に抱きついてくる。
よかった、さっきリビングでの甘い奇跡的な時間は夢じゃなかった。僕もそう思い返し、腕の中にすっぽり収まる彼の温もりを噛み締める。
「……この部屋に、写真じゃない洸くんがいるの、なんだか不思議です。夢を見てるみたいです」
僕が彼の目を見つめてそう伝えると、彼はそっと僕の唇に自分の熱を移して、「夢じゃないやろ?」と優しく笑って見せた。
「……ちょっとびっくりしたけど、ちょっと安心したかも」
「え?」
僕が少し驚くと、洸くんは少しいたずらに笑って言葉を繋いだ。
「……だって、俺の写真に見られながら、他の誰かとこの部屋で何もできひんやろ?」
ふふふ、と嬉しそうに僕の目を見つめる洸くん。
「……あー……それに気づかれると、少し恥ずかしい気もします」
確かに洸くんの言う通りだ。今までそういう甘い関係の人も、好きになった人も、僕にはいた記憶がない。
そして、さっき「寝室こっち?」と誘われた時の、嬉しさのあまり意気揚々と扉を開けた僕のリアクションも、洸くんに今思い返されれば、下心が丸わかりで特大の恥ずかしさしかない。
「……やから、剥がさんでええよ、写真。俺と新くんとの写真、これからいっぱい増やしていこ?」
あー……そういえば。前に弦さんが、僕たちのツーショット撮ってくれるって言うてたな。あの日、それは叶わなかったけれど。これからは当たり前のように、その思い出を増やしていけるんやな。
「……はい、僕の部屋を、可愛い洸くんの写真でもっといっぱいにしたいです」
僕がそう答えると、洸くんは僕の首に再び腕を回し、顔を近づけた。
「でも、今は。……写真より、こっちの方が可愛いやろ?」
少し、嫉妬の混じった最高に可愛い笑顔で、僕を翻弄してくる。
僕はもう言葉を返すのをやめて、彼を僕のベッドへといざなった。首に回された細い腕を引き寄せて、その甘い嫉妬も、愛らしさも、すべてを包み込むように深く唇を重ねる。それが、僕の出せる最高の本気の答えだった。
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