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「ル、フィくん・・・」
なんで、どうしてここに。
改札を出てすぐの柱にもたれかかっていた彼は、私を視界に入れた途端笑顔になって。
「傘忘れて行ってたからよ、雨降ってんのに困ってんじゃねーかと思って。
いろんな人に聞いて駅まで来たんだけどよ、おれ電車の乗り方わかんねェし!」
意味なかったな、シシシ!
そんな彼にどうしようもなく安心して、涙が零れそうになる。
「誰、彼氏?」
「そうです。わさわざ送ってもらって、ありがとうございました」
咄嗟の嘘は、バレなかった。
運よくルフィくんにも聞こえてなかったし、好都合。
「・・・そ、そっか」
じゃあまた明日、とこちらに背を向けた先輩にもう一度お礼を言った。
別の目的があったにせよ、送ってもらったことに変わりはない。
「ありがとルフィくん。帰ろっか」
「おう!
けどよ、傘ひとつしかなかった、悪ィ!」
花柄のそれを広げながら、ルフィくんは笑う。
( 折りたたみ、壊れちゃったからなぁ・・・ )
結局また、さっきと同じ相合傘。
なのに、近い距離も触れ合う肩も、全く嫌じゃない。
「にしてもよ、さっきの男誰なんだ?」
「職場の人。送ってくれたの」
「ふーん、良い奴だな!」
「・・・うん、そうだね」
改めて、ルフィくんがいてくれて本当によかったと思う。
本当に、心の底からほっとした。
「あとよ、泣きそうになってたのも何でだ?」
「・・・ッ。あれは、気のせい」
「そうなのか? おれにはそう見えたんだけどなー」
おかしいなー、と首を傾げる彼を見上げ、気づかれてたのかと思わず苦笑を洩らした。
「んー、腹減ったァァア!」
「何食べたい?」
「肉ゥ!」
「ほんと肉好きだね~」
アパートの階段をのぼり、玄関の電気をつけたところで。
( ───あぁ、ヤバいかも )
ルフィくんの、びしょ濡れになった左肩を見てそう思った。
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_:(´ཀ`」 ∠):