シロの鑑定はレベル7、俺の鑑定とはわけが違う。
魔法を使う時みたいにシロと共に鑑定を発動すればいいのでは?
「…………!」
よし、ものは試しだ。行ってみますか!
俺はシロの頭に手を置いた。
「シロ、力を借りるぞ。 ――鑑定!」
ピーン! {鑑定レベルが5に上がりました}
やはりな……。
シロと一緒に力を行使することで俺の能力も引き上げられていく。
これも聖獣の恩恵なのだろうか?
う~ん、深く考えるのはやめておこう……。
まあ、パートナー (俺) が弱いままだとシロも苦労するだろうしな。
で、結果の方は?
”ミスリル超合金《ちょうごうきん》マジックソード:ミスリル複合量60%:A++:製作者・鍛冶神”
えっえ~、凄い。凄すぎる!
これ神様が作ったの? そうなの? 死ぬの?
いやいや死にはしないけど。
しかし、これは…………ねぇ。
エンシェント (古代) 級とかミソロジー (神話) 級なんてもんじゃないぞ。
まさにゴッド (神) 級だな。
それに、なによ超合金って、めちゃくちゃ懐かしい響きなんですけど~。
このショートソードなら何回魔纏を発動したとしても壊れることはないだろう。
おそらく、たぶん、きっと。 いやいや、大丈夫ですよね。
この鑑定結果は久々に痺れましたわ~。
まさか、投げても落としても手元に戻るような機能とかは付いてないよね?
いや、もちろん投げたりはしないよ! バチあたりそうだし……。
って事はだ。
カモドオオトカゲの解体の折に使った、如何にも只者でないこのナイフも……。 (汗)
――鑑定!
”ミスリルシースナイフ:ミスリル複合量97%:S+:製作者・鍛冶神”
「…………」
ですよねぇ。――やっぱり。
なるほどね、オオトカゲの皮がまるで豆腐のようだったし、あの切れ味が普通なわけないよねぇ。
恐ろしすぎる……。
でも、これってドラゴンの鱗とかでも解体や加工ができたりするんじゃないの?
しかも、『鍛冶神』と出ているということは創造したのではなく、神が鍛えたってことだろう。
もしや、『鍛冶神』ってヘファイストス? 右目に眼帯とかしてませんよねぇ?
とにかく、神様達ありがとうございます! 大事大事に使わせていただきます。
これで魔纏の訓練が心置きなくできるというものだな。
剣術スキルを上げると同時に魔纏も使えるようになりたいよなぁ。
裏庭にて剣の素振りを行いながら、そんなことを思っていた。
そして、夕食の後はリビングでミリー相手におとぎ話 (泣いた赤鬼) を語って聞かせる。
何故だか知らないが、マクベさんやカイアさんまでもが真剣に聞き入っているようであった。
てしてし! てしてし!
うっ、ううん、もう朝なのか?
暗闇の中ベッドから起きだし木窓を開けてみた。
すると外も真っ暗でシトシトと雨が降っている。
基本的に雨の日は散歩に行かない。
まっ、後で冒険者ギルドには行くからシロにはそれまで我慢してもらおう。
ただ、少し寂しそうではある。
そこで俺はシロと一緒に座り込み、しばらくの間モフモフ攻撃をしてやった。
すると気分を持ち直したのかシロは元気に尻尾を振っている。
…………
俺とシロは朝食を済ませると冒険者ギルドにやってきた。
雨の日なので訓練場は人も多くなかなか賑わっている。
訓練場の中は雨による湿気と野郎共が出す酸っぱい汗の臭いでとてもむさくるしい。
そんな中でも、シロはアーツにより盛大にもふられていた。
もう、かれこれ10分ちかくはこの状態なのである。
勘弁してくれ~。こちとら1分でも早くこの空間を抜け出したいというのに。
シロを見ると特に嫌がっている様子はないのだが、流石にこのままという訳にもいかず俺はストップをかけた。
至福の時を止められてしまったアーツの顔は、まあ、お察しであろう。
そのことから指導の厳しさが5割増し、訓練が終わるころにはいつものように俺は訓練場の天井を見ているのだった。
「じゃ、また明日だな」
そう言い残しアーツは去っていった。
そのいつもの光景を周りの者は憐れむような目で見守っていた。
やれ、ストイックだとか、おかしいだとか、よくやるよだとか、変態だとか……。
だっ、誰だよ! 変態はないだろう。変態は!
まぁ、今日は雨が降っているのでこの後の冒険者活動はお休みにした。
さて、これから何をしようかな?
教会は、…………パスだな。
それなら、ん~、そうだ!
防具屋だ。防具屋に行ってみようかな。
よし決まり!
俺は撥水ローブを羽織るとシロを連れて中央広場の方へ向かった。
へぇ~、こんな雨の日でも串焼き屋の屋台は出ているんだな。
ここは応援する上でもいっぱい買っておかないとな。
12本注文して、その場でシロと1本づつ食べることにした。
運動をした後はお腹がすくのだ。
今日は時間に余裕があるので、前から気になっていた金の石 (インゴット) がいくらになるのか換金してみようと思う。
どこで換金しようか?
すこし悩んだが『商業ギルド』にやってきた。
シロには出入口のドア付近で待っててもらいギルドの受付カウンターにて換金をお願いした。
身分証を求められたので冒険者ギルドの会員カード (Dランク) を提示する。
すると、後の手続きはいたってスムーズだった。
「お待たせ致しました。こちらになりますね」
そう言って差し出されたトレイを見ると金貨が18枚乗っていた。
金の石 (インゴット) はミスリルの石より一回り小さく200g位だろうか。
それで、180,000バースになるようだ。
結構な金額になったな。これだけあれば防具をそろえる資金としては十分だろう。
「シロおまたせ、行こうか!」
シロに声を掛け商業ギルドを後にした。
中央広場のあるメインストリートから一本中に入った通りにその防具店はあった。
何でそんなお店を知っているのか?
そう、さっきの串焼き屋で教えてもらったのだ。
町の串焼き屋は情報通なので仲良くしておくといろいろと便利なのである。
なんでも、表通りの防具屋より1~2割は安いそうだ。
そして、やってきました噂のお店。
その名もシベア防具店。
逆さまに読むとアベシ! なんとも世紀末臭が漂っているのだが。
さっそくドアを開け中に入ってみる。
シロもお店に入れていいかと聞いてみると、「良いぜ」と特に問題ないらしい。
カウンターには革ベストにトゲトゲのショルダーアーマーを装備したモヒカン男が目を光らせていた。
今にも『ヒャッハー!』とか言い出しそうである。
俺はツッコミたくなる気持ちをグッとこらえ、陳列してある防具を見ていった。
店内は割と広く、十字軍が着るようなプレートアーマー (金属鎧) やチェインメール (くさりかたびら) なども置いてある。
まぁ、俺は冒険者だし革鎧で十分だろう。
できればモンハンみたいなかっこいい革鎧が欲しい!
まずベースだが、上は綿の入った厚手の鎧下に下は革のパンツとロングブーツだ。
その上から革のアーマーベストを着込む。
あとはアームガードに大きなバックルが付いた幅広ベルト、頭には革のヘルムだな。
その他、場合によっては草摺り・ニーガード・ガントレット・ショルダーアーマーなどを用途と好みにあわせて装備する。
フル装備にすると軽く20㎏を超えるが、米軍とかの現装備は40㎏にもなるのだ。
それを考えれば、そこまで重いということもないだろう。
俺は自分のサイズに合ったものを選んでいき、次々とカウンターの上に並べていった。