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高さ二メートル、幅一メートル以上はある巨体。それが三匹も。
急いでポーラルを吹き、威嚇する音を発っしてみるが……全然動じていない!
「怖い……どうしよう、どうしよう!」
「僕が注意を引くから、エーテは逃げて!」
「嫌! 私だけ逃げるなんて嫌!」
「じゃあ一緒に走れ! コートアートマ!」
片方の手でエーテを引っ張り、もう片方の手で三又の形に伸尖剣を変え……以前のトラウマを
振り切るかのように目を瞑り、詠唱した。
「ガルンヘルア!」
炎が三つ、勢いよく放出されるのがわかる……しかし以前、出した大きな炎とは
比べ物にならない程に小さい。
あの時の力は……なんだったんだ?
こんな小さい炎じゃ、全然猛獣を追い払えない!
どうしよう。どうにかなると思ってたのに……。
「なんでだ……どうして。ガルンヘルア!」
『グオオオオーーーーーーーーーーーン!』
猛獣は炎を搔い潜り、三匹共横一列に並んでこちらへ差し迫って来る。
俺はエーテを連れて急ぎ足で逃げる。
幸いにも雪が深い影響もあり、ラギ・アルデの力を使用しているこちらの方が若干速い……
だが、そう容易く逃げられるわけはない。
家までだって、まだまだ距離がある。
このままじゃ体力切れで、必ずこちらに追いつかれる!
「エーテ、落ち着いて聞いて。僕にいい考えがあるんだ」
「何? どうしたらいいの?」
「エーテは思い切り家の方に逃げるんだ。僕があいつを反対の方に追いやる。その後すか
さず家の方に逃げて。あっちの切り立った方へあいつらを落とす。伸尖剣の長さを変えて」
「でも、危ないよ! 雪の見えない部分には言っちゃダメってお義母さん、いつも言ってた! それに
失敗したら……」
「このまま二人狙われてると、伸尖剣を当てられないんだ。失敗しても僕の方が足が速いだろう?
その間にエーテは母さんたちに知らせてくれ。きっと何か対策を知ってるはずだ」
「わかった……でも私の方に来たら……」
俺はエーテと少し離れると、ポーラルで相手の注意を引き寄せる。
更にガルンヘルアを何発か打ち込む。
――すると、案の定こちらに注目し、三匹共俺の方へ向かって来た。いいぞ!
足がすくむ。それでも……これでエーテは絶対助かるはずだ!
「エーテ。今だ! 絶対何があっても戻ってきちゃだめだからな! エーテに
何かあったら、僕はエーデンさんに合わせる顔がない!」
「ファウ……」
ギリギリまで引き寄せるんだ。エーテが見えなくなる位に。
ここで女の子一人守れないようじゃ、この先ずっと、生きていけるはず
なんてない! 怖い……勇気を振り絞れ。もっとだ。近くに来い!
「こっちだ! 追いついてみろ。鈍足の獣め!」
「グオオオオーーーーーーン!」
わざとペースを落として少し近づかせる。
どう見ても自分よりずっと大きな相手。
こんな獣に伸尖剣が刺さるのか?
「今だ! コートアートマ!」
『グオオオオーーーーーーン!』
「やっ……た。けど……」
綺麗に三匹突き刺す事には成功……した。
だが、そいつらは伸尖剣に突き刺さったまま、俺を襲おうとしている。
手を離すわけにはいかない。手を離せば、俺を食い殺し、そのままエーテ
のところへ向かうだろう。
でも、三匹の獣の力が強すぎてどんどん押される。
どうにか地面に柄を突き刺せないか……一か八かだ!
――ざくりと地面に伸尖剣を突き刺すことに成功した!
いきり立つグラヒュトウルは斜めに持ち上がり、三匹のグラヒュトウルが、自らの押す力で
宙に持ち上がる。
「よし、やった……あ……!?」
次の瞬間だった。
重みに耐えきれなくなった地面が、音を立てて崩れ落ちる。
『グオオオオーーーーーーン!』
「うわぁーーーーーーーーーーーーーー!」