テラーノベル
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夏休み。
蝉の声が朝から響き渡る八月のある日。
蘭「ということで!」
駅前に集合した天文部の前で、蘭が両手を広げた。
蘭「夏合宿です!!」
こさめ/捺『いえーい!』
こさめとなつが元気よく声を上げる。
いるま「うるさい」
いるまが即座にツッコんだ。
いるま「朝から元気だな」
こさめ「だって合宿だよ!?」
こさめは目を輝かせる。
こさめ「星見放題だよ!?」
捺「楽しみすぎるだろ」
こさめ「楽しみだもん」
その様子を見て、尊琴がくすりと笑った。
尊琴「こさめちゃん、昨日寝れたん?」
こさめ「二時間くらい」
いるま「遠足前の小学生じゃん」
捺「それな」
捺も頷く。
ちなみに捺も寝不足だった。
今回の合宿先は山の中にある小さな天文施設だ。
街明かりが少なく、星空観測には最高の場所らしい。
蘭「絶対天の川見えるやん」
尊琴「流星群もあるかもしれないね」
こさめのテンションは上がる一方だった。
その隣で須千は静かに空を見上げる。
青い空。
遠い宇宙。
こさめ「すっちー?」
須千「ん?」
こさめ「楽しみ?」
須千は少し考えた。
須千「うん。」
そして小さく微笑む。
須千「みんなと一緒だから。」
こさめは少し驚いた。
須千がそんなことを言うのは珍しい。
こさめ「へへっ」
なぜだか嬉しくなった。
◇◇◇
施設に到着したのは昼過ぎだった。
捺「すげぇぇぇ!!」
最初に叫んだのは捺だった。
捺「山しかない!!」
こさめ「褒めてる?」
捺「褒めてる!」
いるま「たぶん違う」
いるまが呆れたように言う。
周囲は森に囲まれていた。
空気は澄んでいて、風も涼しい。
尊琴「都会とは全然違うね」
尊琴が感心したように呟く。
こさめ「夜が楽しみ~!!」
こさめも頷いた。
昼間は近くを散策したり、川で遊んだりして過ごした。
こさめ「冷たっ!」
川に足を入れたこさめが声を上げる。
捺「当たり前だろ」
捺が笑う。
捺「夏だからって川はぬるくならん」
こさめ「夢がない」
捺「現実だ」
そんなやり取りをしながら笑い合う。
合宿は思っていた以上に楽しかった。
◇◇◇
そして夜。
捺「ごちそうサマンサタバサ!!」
いるま「なにそれw」
捺「いただきマサチューセッツ工科大学首席卒業とごちそうサマンサタバサはマストで必須だろ」
夜ご飯を食べおわったら、次は待ちに待った観測会だ。
屋外の広場に出た瞬間、こさめは息を呑んだ。
こさめ「……すごい。」
空いっぱいの星。
学校の屋上で見る星空とは比べ物にならない。
天の川がはっきり見える。
無数の星が夜空を埋め尽くしている。
「綺麗……」
誰かが呟く。
それが誰だったのか分からない。
全員が同じ気持ちだったから。
須千「こさめちゃん。」
隣から須千が声をかける。
こさめ「なに?」
須千「宇宙って広いよね。」
こさめ「うん。」
須千「広すぎるくらい。」
須千は夜空を見上げる。
須千「だから面白いんだと思う。」
その言葉に、こさめは少しだけ目を丸くした。
こさめ「すっちーもそう思う?」
須千「うん。」
須千は微笑んだ。
須千「知らない世界があるって、わくわくするから。」
こさめも笑う。
こさめ「分かる。」
それが今のこさめの本音だった。
宇宙が好き。
星が好き。
でもその理由はまだ言葉にできない。
ただ見ているだけで楽しいから。
それだけだった。
けれど。
この夏が終わる頃には、
その気持ちは少しずつ形になっていく。
まだ誰も知らない未来へ向かって。
夜空には天の川が流れていた。
まるで銀河鉄道の線路のように、静かに輝きながら。
コメント
1件
蘭ちゃんの「夏合宿です!!」から始まって、いるまくんの「うるさい」がもうツッコミ役すぎて笑っちゃった😂 でも一番胸にきたのは、すっちーの「みんなと一緒だから」ってセリフ。あの子がそんなこと言うの珍しくて、こさめちゃんと同じように私も嬉しくなったよ🌙 夜の星空描写が本当に綺麗で、まるで自分もあの広場に立ってるみたいだった。重い展開が多い作品だからこそ、こういう穏やかな時間が尊い……。