テラーノベル
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(場所:夕暮れのQuizKnock編集部)
作業の手を止めたtrskさんが、不意に隣に座る僕の方を向いた。
trsk「……gon」
名前を呼ばれて顔を上げると、すぐ目の前にtrskさんの顔があった。いつもは淡々とクイズや数字に向き合っているその瞳が、今はまっすぐに、僕のことだけをじっと見つめている。
trskさんは無言のまま、ゆっくりと手を伸ばした。 大きな、温かい手のひらが僕の頬を包み込み、引き寄せるように固定される。
gon(……えっ。え、何……?)
心臓の音がうるさくなった。 いつもはマイペースなtrskさんが、こんなに真剣な目つきで僕を見てくるなんて。 近づいてくる距離。ふわりと漂う、使い慣れたコーヒーの匂い。 僕はたまらなくなって、淡い期待を抱きながら、そっと目を閉じた。
(……一秒。二秒。……静かな時間が流れる。……あれ?)
唇に何かが触れるのを待っていたけれど、聞こえてきたのは、すぐ耳元での低くてジトっとした声だった。
trsk『……gonちゃん、さっき甘いもん食べたでしょ』
gon『………………え?』
目を開けると、そこには僕を愛おしそうに見つめる男……ではなく、完全に「お見通しだぞ」という顔をしたtrskさんがいた。
trsk『隠しても無駄。口の周り、甘い匂いしてるし。……さては、こっそりチョコ食べたな?』
trskさんは頬を添えていた手の親指で、僕の口角をグイッと拭った。
gon『……っ、あ……。……食べましたよ! ちょっとだけ、ymmtさんに貰ったやつ!』
trsk『「ちょっと」の匂いじゃないでしょ。……後でちゃんと歯磨けよ?』
gon『……もう、trskさんのバカ』
期待していた自分が恥ずかしくて、僕はtrskさんの手を振り払うと、プイッと顔を背けてソファに沈み込んだ。
trsk『……? なんだよ。虫歯になったら撮影に響くぞって言っただけなのに。……おい、gon? なんで怒ってんだよ』
trskさんは不思議そうに首を傾げながら、また僕の顔を覗き込もうとしてくる。 この人は、僕がどんな気持ちで目を閉じたのか、その「答え」だけは一生分かってくれそうにない。
gon『……知らないです。自分で考えてください』
僕は赤くなった顔をクッションで隠しながら、台無しになったロマンチックな空気を一人で噛み締めていた。
(おわり)
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