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リゼは頭の中の思考は、まだ少しごちゃついている。
情報をまとめるために、リゼはレオンに話しかける。
「レオンはどうやって、魔法の秘密に気づいたの?」
レオンは不思議そうに首を傾げた。
「千年前の魔法の文献を、偶然見つけた。それがどうした?」
「白輪教会にとって不都合な秘密……気づいてるのは、私たちだけ?」
「ああ。俺と同じルートでたどり着くのは無理だ。千年前の白輪教会は徹底して書物を焼いてる。ああした文献がもう一つあるとは思えない」
「でも他にもいたんだ。秘密を知る人間は……」
レオンが目を見開く。
「あり得ない。知りえるはずが……」
「レオンは私の身体に魔力を通したとき、『魔導腺の躍動を感じる』って言ってたね。治癒魔法の使い手は、他人の身体に魔力を通す。その中に魔導腺の存在に気づいた人がいてもおかしくないよ」
「無理だ。この国の医療魔術師は人体を知らない。魔力の通し方もメチャクチャだ」
「うん、そうだね……思えばこの国の解剖学書が間違いだらけなのも、白輪教が邪魔したからなのかな?」
「そうかもな。何にせよ、躍動は人体の構造を知り、あの位置に臓器があると想定しないと感じ取れな……」
話している途中で、レオンも気づいたらしい。
人体の構造を知り尽くし、治癒魔法の実践の中で秘密を知れる人間は、存在する。
奇跡の聖女、ステラ・ブラックウェル。
リゼの報告書を熱心に読み込んでくれていたステラは、この国の治癒魔法の使い手で唯一、魔導腺の存在に気づける立場にいる。
「魔法が神様の祝福ではなく、あくまで器官の機能に過ぎない……その秘密を知った人間は殺される……どうしようか、レオン……もし、ステラが目をつけられたら……」
そのとき、玄関ホールの方が少し、騒がしくなった。
リゼがドアを開け、ホールから来たと思しきメイドの一人を呼び止める。
「今日、何かあったんですか? さっき玄関に誰か来てたみたいですけど……」
メイドは一瞬レオンを見て色めきだったが、リゼを目にした瞬間、露骨に見下した態度をとった。
「……ああ、リゼ様には知らされていませんものね」
この家の使用人は解剖の秘密は知らないが、父やベアトリスに同調する形で、リゼを汚らわしい存在として蔑んでいる。
メイドはまるで自慢するような口調で言った。
「昨日の皇太子の誕生祭で、それはそれはやんごとなき身分の方が、ステラ様にご興味をもってくださったんです。その時、今日お迎えに来るの約束をとりつけなさっていて……ああ、さすがはステラ様! ブラックウェル家がさらなる進展を遂げる、貴重なご縁となることでしょう!」
「やんごとなき身分の御方って?」
「白輪教の枢機卿です!」
リゼの顔が曇る。怯えた顔でレオンに向き直る。
「……大変。今すぐ、ステラに……」
メイドは、リゼが自分も枢機卿に会おうとしたものだと、勘違いしたらしい。
「残念でしたね、リゼ様。たった今、枢機卿がステラ様を連れて出たところですよ」
メイドは意地悪そうな笑みを浮かべた。
「ステラ様は今頃もう、神殿に向かっているところでしょう」