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翠×黈
こちらはnmmnです。
お名前をお借りしているだけですので、
ご本人様の御迷惑を掛けないよう
よろしくお願いいたします。
翠『』黈「」
楽しみにしてた夜
その日は、二人にとって特別な夜になるはずだった。
一週間前から、みことはずっと楽しみにしていた。
仕事が大変な日も、
「後、2日頑張ったら、すちくんと飲める!」
そう思って頑張ってきた。
冷蔵庫には二人で飲むための沢山買った お酒。
テーブルの上には、みことが選んだおつまみ。
グラスも二つ。
時計が少しずつ約束の時間に近づいていく。
黈「……楽しみやなぁ」
スマホを眺めながら、みことが小さく笑う。
けれど――
午後8時。
すちからLINEが届いた。
翠『ごめん、会社の人に飲みに誘われちゃって……』
黈「え…?」
続けて、
翠『断ろうとしたんだけど、どうしても抜けられそうになくて』
みことは画面を見つめた。
今日を楽しみにしていた。
この日のために、一週間頑張った。
それでも、
「仕事なら仕方ないね、笑」
そう思おうとした。
黈「……うん。分かった。」
そう返信した。
けれど、本当は少しだけ寂しかった。
その頃、すちは会社の人たちと飲んでいた。
翠『すみません、今日はちょっと……』
「まあまあ、すちくん一杯だけ!」
翠『いや、でも……』
「いいからいいから!」
グラスに酒が注がれる。
翠『……じゃあ、一杯だけ』
「かんぱーい!」
一杯。
二杯。
三杯。
翠『……ちょっと、これ以上は……』
「まだいけるって!」
「すちくん強いやろ?」
翠『いや、俺そんなに強く……』
またグラスに注がれる。
断ろうとしても、
「今日くらいええやん!」
「ほら、もう一杯!」
そう言われるたびに、断りきれなかった。
気づけば頬は赤くなり、視界も少しぼんやりしていた。
翠『……みこちゃん……』
スマホを取り出す。
けれど、画面を見たまま、何を打てばいいのか分からない。
結局、送れないまま時間だけが過ぎた。
そして、夜12時。
玄関の鍵が開く。
ガチャッ。
黈「……すちくん?」
玄関を見る。
翠『……ただいま……』
ふらふらしたすちが入ってくる。
黈「……めっちゃ飲んだん?」
翠『うん……ちょっと……』
みことは何も言わなかった。
本当は、
「おかえり」
って笑いたかった。
でも、今のすちを見ていると、胸の奥がもやもやした。
翠『……疲れた……』
すちはそのままソファーに座り、深く背もたれに体を預ける。
数分もしないうちに、目を閉じた。
黈「寝ちゃった… 」
みことはため息をつく。
怒っている。
寂しい。
でも、酔って帰ってきたすちをそのままにしておくこともできなかった。
みことは静かに立ち上がり、寝室から掛け布団を持ってくる。
そして、眠っているすちの身体にそっと掛けた。
黈「……ほんま、楽しみにしてたのにな」
小さな声。
すちは眠ったまま。
みことはしばらくその顔を見つめたあと、自分の部屋へ戻った。
翌朝。
翠『……頭痛い』
すちはゆっくり目を開けた。
頭が重い。
喉も渇いている。
そして、身体に掛かっているものに気づく。
翠『……掛け布団?』
昨日の記憶が少しずつ戻ってくる。
会社。
飲み会。
何杯も飲まされたこと。
そして――
翠『……みこちゃん』
その瞬間。
昨日の約束を思い出した。
二人で飲む予定だった。
みことが一週間ずっと楽しみにしていたことも。
冷蔵庫のお酒。
二つのグラス。
テーブルに並んだおつまみ。
全部。
翠『……俺、最低だ……』
そこへ、みことが部屋から出てくる。
黈「……起きたん?」
翠『みこちゃん……』
黈「水、そこ置いといたから」
翠『あ、ありがとう』
黈「……」
翠『昨日、ごめん』
黈「……うん」
その「うん」が、いつもより冷たかった。
翠『本当にごめん。会社の人に誘われて、断れなくて……』
黈「分かってるって」
翠『……怒ってる?』
黈「怒ってへんよ」
翠『……怒ってるじゃん』
黈「怒ってへん!しつこいっ!」
少し大きな声。
翠『じゃあなんでそんな言い方するの?』
黈「……」
翠『俺だって好きで遅くなったわけじゃないよ』
黈「分かってるって言うてるやん!」
翠『じゃあ、なんでそんなに怒るの?』
その言葉で、みことの表情が変わった。
黈「……なんでって」
声が震える。
黈「ぅ俺、ずっと楽しみにしてたんやで」
翠『……』
黈「この日のために一週間頑張ったんや」
翠『うん……』
黈「一緒に飲もうって約束して、何飲むかも考えて、おつまみも買って……」
翠『……』
黈「それやのに、すちくんは会社の人と飲んで、ベロベロになって帰ってきて……」
翠『……ごめん』
黈「しかも帰ってきたと思ったら、俺との約束なんか忘れたみたいに寝て……」
翠『忘れてたわけじゃない』
黈「じゃあ何なん?」
翠『……』
黈「俺ばっかり楽しみにしてたみたいやん」
その一言に、すちが黙り込む。
翠『……そんなことないよ』
黈「じゃあ、なんで……」
翠『……』
すちは何も言えなかった。
みことは唇を噛んで、俯く。
黈「……もういい」
翠『みこちゃん』
黈「うち、ちょっと出てくる」
翠『待って』
翠『どこ行くの?』
黈「今は……すちくんの顔見たくない」
翠『…』
バタン。
玄関のドアが閉まった。
静かになった部屋。
すちはその場から動けなかった。
そしてふと、ソファーを見る。
そこには、昨日自分に掛けられていた掛け布団。
すちの胸が締めつけられる。
翠『……あ』
昨日。
自分が酔って帰ってきたあと。
みことは怒っていたはずなのに。
それでも掛け布団を掛けてくれた。
そして――
テーブルを見る。
まだ片付けられていないお酒。
二つのグラス。
用意されたおつまみ。
翠『ずっと……』
声が震える。
翠『ずっとみこちゃん、楽しみにしてたのに……』
その瞬間、ようやく全部分かった。
みことが怒った理由。
約束を破ったことだけじゃない。
楽しみにしていた気持ちを、自分が置いていってしまったこと。
翠『……みこちゃん』
すちは急いで上着を取った。
何度電話をかけても出ない。
LINEを送っても既読がつかない。
翠『……どこにいるんだろう』
思いつく場所を一つずつ探す。
いつも二人で歩く道。
近くの公園。
コンビニ。
そして――
二人が初めてゆっくり話した場所。
そこに、みことはいた。
ベンチに座って、俯いている。
翠『……みこちゃん』
黈「……すちくん」
みことが顔を上げる。
翠『……見つけた』
黈「なんで来たん」
翠『迎えに来た』
黈「……」
すちはみことの隣に座る。
少しだけ距離を空けて。
翠『昨日、ごめん』
黈「……うん」
翠『昨日、会社の人に誘われて、断れなかったのも本当』
黈「うん」
翠『でも、それを理由にして、みこちゃんが楽しみにしてたことを忘れたみたいにしてしまった』
黈「……」
翠『本当にごめんなさい』
みことは黙ったまま、目を伏せる。
翠『昨日、帰ってきたときも……俺、何も覚えてなくて』
少し苦しそうに笑う。
翠『でも、起きたら掛け布団がかかってて』
黈「……」
翠『みこちゃんが掛けてくれたんだよね』
黈「……風邪ひいたら嫌やったから」
翠『うん』
すちは少しだけみことに近づく。
翠『怒ってるのに、優しくしてくれたんだよね』
黈「……だって、好きやから」
ぽつり。
みことが言った。
自分でも言ってしまったことに気づいて 、顔を赤くなりながら顔を伏せる。
黈「……今の忘れて」
翠『やだ』
黈「なんでなん……」
翠『嬉しいから』
みことが顔を上げる。
翠『俺も、みこちゃんと飲みたかった』
黈「……ほんま?」
翠『本当』
翠『一週間頑張って、今日を楽しみにしてくれてたことも……ちゃんと分かってた』
黈「……」
翠『だから、もう一回やらせてほしい』
翠『今度は絶対、みこちゃんとの約束を優先する』
みことの目に涙が浮かぶ。
黈「……ほんまに?」
翠『うん』
黈「……じゃあ」
少しだけ笑う。
黈「帰ろ」
翠『うん、帰ろっか 』
立ち上がったすちが、そっと手を差し出す。
翠『……みこちゃん』
みことはその手を見る。
少し迷って。
ぎゅっと握った。
黈「……次は、ちゃんと二人で飲もうな」
翠『もちろん』
帰り道。
二人の手は、今度は離れなかった。
そして家に帰ると――
テーブルの上には、昨日のままのお酒とおつまみ。
すちはそれを見て、少し笑った。
翠『……今日、する?』
黈「ええの?」
翠『うん』
黈「でも、まだ頭痛いんやろ?」
翠『……ちょっとだけ』
黈「じゃあ今日はやめとこ」
翠『でも、』
黈「その代わり――」
みことがすちの肩に少しだけ寄りかかる。
黈「一緒に映画見よ」
翠『……そうだね、笑』
みことが笑う。
翠『ねぇ、みこちゃん、?』
黈「どうしたの?」
翠『こっち向いて?』
黈「ん?」
翠『昨日出来なかった分』
そう言ってすちはみことの頬に手を優しく添えて口を重ねる。
ちゅっ。
一瞬だけ触れるような、そんな仲直りのキス。
みことは恥ずかしいのか、顔を真っ赤にして下を向く。
黈「…//」
翠『ふふ笑可愛いね。』
なかなか目を合わせないから、声をかけて見ても、静かだった。
翠『みこちゃん、?』
黈「…」
すると、みことから声をかけて来た。
黈「すちくん、」
翠『どうしたの?』
黈「あのね、もう1回して欲しい…」
翠『…!もちろん、笑』
今度は、少しだけ長く。
ちゅっ。
愛を確かめ合うような
優しいそんな甘いキスをした。
離れた後、2人とも照れ臭そうに見つめ合いながら笑った。
翠『来週は、二人で飲もうね』
黈「今度は絶対、約束」
翠『うん、約束。』
今度こそ二人の夜が始まった。
コメント
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読ませていただきました……🥀 すごく丁寧に感情が描かれていて、胸がぎゅっとなりました。 特に、すちくんが目を覚ました後に“布団がかかってた”ことに気づくシーン、あそこが一番刺さりました。 怒ってるのに「風邪ひいたら嫌やったから」って言えるみこちゃんの優しさが、痛いくらい伝わってきて…… 最後のキスの“もう1回してほしい”も、すごく可愛くて切なかったです。 喧嘩の後だからこそ、ああやって優しく重なる時間が本当に尊いんだなって思いました。 続きも楽しみにしてます、まさん……!🌙