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~5年前~ 康二10才
僕のお母さんが亡くなった。僕がまだ赤ちゃんのときにお父さんと離婚してから、酒をのんでタバコをすってたから体を悪くしたんや。
お母さんは感情の波が激しい人やった。愛と同じぐらい傷を与えられて、暴力を受けた。
それでもお母さんは僕にとってたった一人の「家族」やったから、嫌いにはなれなかったしずっとそばにおった。どんなに傷だらけになっても。
学校で心配されないようにいつも明るく楽しそうにふるまっとった。体の傷をかくしながら一生懸命。
お母さんがたおれたときも、泣かんかった。泣いちゃだめって言われとったから。でもこれからどうすればいいのかわからんかった。
そんなとき、お母さんの訃報を聞いた亮平兄ちゃんが、関西にあるうちまで会いに来てくれた。
久しぶりに会う兄ちゃんはあんまり変わってなくて、心配させないようにいつも通り笑顔でむかえた。
すると兄ちゃんは服を脱いで、背中を僕に見せた。その細い体には、大きな火傷の跡があった。
驚いている僕に、兄ちゃんは服を着ながら、優しく語りかけるように話してくれた。
💚「僕たちはね、体にたくさん傷があるんだ。きっと君もそうなんだって僕は思ってる。」
それから僕を抱きしめて、
💚「康二、今までよく頑張ったね。すごくすごく辛かったね。でももう君を傷付ける人はいないから、無理して笑わなくてもいいんだよ。康二さえ良ければ、これからは僕たちと一緒に暮らそう」
いつのまにか僕は、亮平兄ちゃんのうでの中で大きな声で泣いていた。そんな僕を兄ちゃんは優しく背中を撫でてくれた。
もう大丈夫なんだ。僕は生まれてはじめてそう思えた。