戻ってきた聖奈さんと一緒に地球へと転移した俺は、今後の予定を聞くことに。
「今日することはあるのか?」
「聖くんにはこの書類に目を通してサインして欲しいの。
印鑑は押しておいたからよろしくね」
俺は言われたまま、書類にサインをした。
世の社長さん達も言われるままにサインしているのかな?しているんだろうな。
一人で納得した俺は、書類に目を通すことなくサインしていく。
って!なんだよこれっ!
「聖奈っ!何だよ、これ!?」
俺は見つけた書類に驚いて聖奈さんに確認を取った。
冗談にしてもひどいぞ…車の保険の書類の次に入れるなんて……
「あれ?バレちゃった?流れでそのままサインしてくれると思ったのになぁ」
可愛らしく、唇を尖らせて言ってくるが、内容は全く可愛くない。
「何で婚姻届なんかあるんだよ……」
「聖くんは私と結婚したくないの?」
「いや、今冗談を言う時じゃないだろ…」
危うく知らない間に、結婚する所だった。
「実はね。あながち冗談でもないんだよ?」
な…んだ…と…?
「聖くんは今後間違いなく、大きくなっていく会社の社長さんだよ。
周りから結婚を勧められることもあると思うし、仮に私と付き合ってるって嘘をついても、それが通るのは3年くらい。
そこからは、何で結婚してあげないんだ攻撃が周りから徐々に広がるの。
でも聖くんは転移とかの秘密があるから、このまま行けば誰とも結婚出来ない。
でも、結婚を周りから急かされる。
耐えられる?」
確かに…理には適っているな。だが……
「だけど、そこに大事な物がないぞ」
「えっ?まさか愛?私は聖くんを愛しているから大丈夫だよっ!」
もう冗談はええねん。
「いや、冗談じゃなくてな。俺には確かに助かる提案だけど、無理だな。
聖奈の人生を、そんなことで決めて欲しくないからな」
そう。この話には、聖奈さんの幸せが一切考慮されていない。
俺は聖奈さんと結婚出来てメリットは見あたるが、聖奈さんには一切ないだろう。
あるとすれば、唯一転移できる俺を、法的に逃げられなくすることくらいだ。
それも向こうに俺が一人で逃げてしまえばどうしようもないので、メリットとは言いづらい。
「聖くん。私はもう聖くんから……ううん。ミランちゃんとも離れるつもりはないよ。
私達は運命共同体。聖くんに、他に意中の相手がいるのなら諦めるけど、私には二人しかいないの。
・
・
でも今は諦めるね。
次は逃がさないけど」
また思い詰めているのか?最近は不安定さが鳴りを潜めていたと思っていたけど、俺の思い違いかな?
「聖奈ならすぐに相手を見つけられるだろうに」
気が変わるかも知れないしな。
それに周りの男達が放っておかないだろう。
「言い寄ってくる人は確かにいるけど……
前にも言ったけど、私の話をちゃんと聞いてくれたのは聖くんだけだよ」
それは言っていたな。
もしや、転移したことで主人公補正が掛かって、俺にもモテ期が!?
「もう!この話はおしまいね!明日は早く会社に行くから、もう寝るね!おやすみ」
バタンッ
行ってしまった。
まさか、本当に俺のことが好きなのか?
〜〜2年前〜〜
「聖くん。この前のアニメ見た?可愛かったでしょ?」
俺は東雲 聖 19歳。大学一年生だ。
初めてのサークル選びを間違っていたのではと、最近になって思い始めている。
正直、俺はラノベを少し読んでいたくらいで、アニメのことは全然わからない。
「ああ。見たよ。はい、借りてたDVD」
この美人な女性は、同い年の長濱 聖奈さんだ。
「ねぇ、感想聞かせてよ」
「うーん。確かにキャラクターは可愛いかったけど、俺には話が重すぎたかな」
「そっかぁ。私は主人公の子が親を亡くして・・・・」
暫く長濱さんの話を聞いて、時々意見を求められてを繰り返しては、時間が過ぎていった。
俺と話している間も、同じサークルの人達が何度も長濱さんに声を掛けていた。
多分長濱さんは、サークル活動でいつも一人でいる俺を憐れんで、話しかけてくれているんだろうな。
可愛くて人気者な人は性格もいいのか。俺はモテないはずだな。
「じゃあ、またね!聖くん」
「また今度」
〜〜現在〜〜
いや!どこにも俺のことが好きな記憶はないなっ!
ただ聖奈さんが、あの時も今も俺を助けようとしてくれているのは間違いない。
聖奈さんに聞けば自分の都合がいいからとしか言わないだろう。
何故、助けてくれるのか……
まぁ理由なんていいか。助かっているのは事実だし、俺も出来ることはしてあげたいしな。
あっ!お礼の欲しいものを聞くの忘れてた……
とりあえず酒飲んで寝よう。うん。それがいい。
今日もいい匂いで起きた。何か久しぶりな感じがしたけど、そうでもなかったな。
「おはよ。朝ごはん出来ているから、顔を洗ってきてね」
「おはよ。わかった」
眠たい目を擦りながら洗面所へ向かう。
そうだ。何が欲しいか忘れる前に聞いておこう。
顔を洗った俺は、テーブルにつき、朝食を食べながら話しをした。
「今日も美味いな。ありがとう」
「良かった。お粗末様でした」
「それと、いつも頑張ってくれている聖奈にお礼がしたいんだけど、何か欲しいものとかある?」
聖奈さんは満面の笑みを浮かべて口を開いた。
「ありがとう。気持ちだけで嬉しいよ!」
「気持ちだけって……何かないの?」
「うーん。じゃあけっこ『気持ちだけにしとくわ』えーっ!?」
どうやら本当に欲しいものはないようだ。
多分昨日言っていた、俺とミランがいればいいと言うのは、ある意味本音だったんだろうな。
その内良い人が現れることを願っておこう。
依存は良くないからな。
「今日はこれから会社(倉庫)だっけ?」
「うん。バイトの子達とも顔合わせして欲しいんだよね」
「何かいるものはあるか?」
「それなんだけど、キャリーケースに3日分くらいの着替えを入れて、パスポートを持ってきてね」
ん?着替えは置いといて、パスポート?
「どこにいくんだ?」
「それはお楽しみで!安全な冒険の為だから、断るのはなしだよ?」
俺が断れた事なんてないだろ……婚姻届以外……
「まぁ、任せているから構わないけど」
「じゃあ、準備したら出ようね!」
俺はお出かけの準備をした。
高校の修学旅行が外国で助かったな。
聖奈さん。庶民に急にパスポートなんて言っても持っていないぜ?
準備が出来たので、玄関で聖奈さんを待つことに。
「お待たせ。それじゃあ行こっか」
梅雨が明けたこの時期はクソ暑い。聖奈さんの格好は涼しそうな白いワンピースだった。
涼しそうだけどその格好は俺に刺さるからやめて……
見た目はどタイプなのだ。
「今日の格好は可愛いな。似合ってるよ」
「ありがとう!服装を褒めてくれるなんて珍しいね!」
「普段も綺麗だけど、その格好(?)が珍しくてな」
俺たちはわいわいキャイキャイ言いながらタクシーに乗って、職場を目指した。
あれ?傍目から見たらリア充に見えるくない?
ついにリア充デビューしたかと思ったけど、良く考えれば、聖奈さんは彼女じゃなくて仲間だし、俺はイケメンではなく呑んだくれだった。
俺が自虐的になっていたらタクシーは会社に着いていた。
「時間はもう少しあるから、とりあえず会社に入ろう?」
「そうだな。未だに自分の会社だと思えないけど、気にしたら負けだな」
未だに慣れない建物に俺は足を踏み入れることに。
「おお!明るいとそれっぽくみえるな!」
外階段を上がって2階に入ると、そこは事務所になっていた。
「リサイクルのオフィス用品だけど、いい感じだよね!」
「そうだな!ありがとう。俺ならこんな風に出来なかったよ」
事務所は手前と奥が衝立で仕切られており、奥が俺達の席になるようだ。
「おお!一階が丸見えだな!」
奥はガラス張りになっていて下が見下ろせる。
もちろん窓になっているので、開ければ下にいる人と会話も出来なくはない。
「気に入ってくれて良かったよ!ちなみに今のバイトさん達は週5で土日休みだよ。今日は早いけど、普段は10時から17時まで働いてもらうことになってるの。
だからここで直接転移する時は、その時間はやめてね」
おっ。気をつけないとな。どちらにしても緊急でない限り、自宅以外からする気はないけどな。
「バイト代は時給1,200円だから、募集がかなり集まったみたいだよ。
ここは都会から離れているから、時給が少し低いみたいだね」
「結構良い時給なんだな」
「安くて文句言う人はいるけど、高ければ文句も悪い噂も出にくいからね。
あっ。来たみたい」
外階段を登る音が聞こえる。
ガチャ
「失礼します」
どうやら来たみたいだな。
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