彼が死んだ。
俺の腕の中でパタリと息を引いてしまった。
俺は現実を受け止められなかった。
その日は当たり前のように呆気なく終わってしまい俺は部屋に籠った。
後々テレビのニュースで彼の死が放送されているのを見た。
周りの人は血のハロウィンと呼んでいた。
食事は喉を通らず、何もする気にも起きなかった。
俺は彼に死ぬまで一生愛されてると思っていた。
彼と一緒に歳をとった頃に、一緒に何度も何度も今の頃の話をしてお互い恥じらって笑い合う
そんな将来を想像していたのに。
信じていたのが嘘だったんだ。
気がつけば俺は眠りについていて、カーテンから差し込む光で目を覚ました。
母は俺の顔を見るなり心配そうにしながら学校に休むと連絡していた。
自分の部屋に入りベッドに座り込んだ。
時計の針が静かに動く。
俺はしばらく考えて、しばらくして泣いて、しばらくして泣き止んだ。
鼻が詰まり音を立ててすすった。
涙が自身の頬の傷口をえぐる。彼が生きていた時につけられた傷。最後に見た彼の表情。
簡単には忘れられない現実。
フラフラとした足取りで俺は家を出た。
団地の階段を登り
見慣れた標識のチャイムを押す。
掠れた声ではい。と呟く女性は俺の姿を見て瞳に涙を浮かべながら俺を家にあげてくれた。
何も変わっていない彼の部屋。
昨日の朝まで彼はここに居たのだ。
彼の机の上には、東京卍會と丁寧に刺繍された黒の特服が畳んでおいてあった。
特服に視線を向けた時、ふわりと風が舞うような気配を感じ部屋を見渡した。
その時やっと俺は我に返った気がした。
彼がいない部屋で俺は1人だった。
「千冬ゥ」
彼の低い声が頭の中を過る。
何度も泣いたというのに涙は止まることは無かった。
コメント
2件
初コメ失礼します えッ?涙が止まらないッ
わ、まじ泣きそうです……🥺🥺 やっぱ👨🌾さん好きです…🤧🤧