煙たい線香の香りが鼻につく。
今日は彼の葬式だった。
見慣れた顔の人も居れば始めてみる顔の人もいて彼がどれだけ好かれていたかがわかる。
俺が憎んでも憎みきれない羽宮 一虎という人物は自首をしたのもあり姿を見ることはなかった。
指定された席に座り静かな空間でなり続ける木魚の音とお経を聞いていた。
途中から心苦しそうになく声が聞こえたが何故か俺は泣かなかった。
まだ現実を受け止めきれていないのかあまり感覚がなかったのだ。
周りの人らに並び俺は焼香を行った。
遺族の方に頭を下げ焼香台の前に立つ。
数珠を手にかけ抹香をつまみ香炉の上にくべた。
棺桶に花を添える時、久しぶりに彼の顔を見ることが出来た。
黒く長い綺麗な髪は透き通るような白い肌を目立たせ、吸い込まれるような美しい顔をしていた。
あの時のように彼は申し訳なさそうな表情ではなく、まるで全てをやりきったかのような安らかな表情を浮かべていた。
一輪のカーネーションを手に取り俺は彼の頬の横に添えた。
どんどん華やかに美しく彼の入る棺桶が飾られていく。
俺はひたすらその工程を見つめていた。
彼の火葬が始まりさらに涙を流す人が増えた。
俺は1人隅の方で途方に暮れていた。
何も考えられなかったのだ。そのせいか何かを感じることも無く呆気なく彼と別れてしまった。
彼の遺骨が小さな骨壺に詰められた頃には殆ど人は居なかった。
きっと彼のご遺族のことを考えてこの場を出たのだろう。
彼と喧嘩などした事ないのではないかと思うほどの仲がいい親御さんだったんだ。俺には考えられないほどの悲しみがあるんだろう。
俺もその場を1度出ようとした時に彼のご遺族から名を呼ばれた。
「千冬くん。今日はありがとうね…」
「圭介も、こんな小さくなっちゃって…」
彼の母は骨壺を抱え悲しそうに呟いた。
「…ッ、」
やはり涙は出なかった。
ただ心苦しく締め付けられるような感覚はあった。
彼の母は何かを察したようにうっすらと笑みを浮かべ
「圭介と二人で話したいことあるでしょう?」
「きっとこの子も私達なんかよりも千冬くんと話したいに決まっているわ」
なんて優しいお母さんなのだろうか。
きっと彼もお母さんによく似たのだろう。
俺はその場で深く頭を下げ彼の遺骨が入る骨壺を受け取った。
*・*白のカーネーションの花言葉が、
「無垢で深い愛/真実の愛/永遠の幸福/尊敬/愛の拒絶」なんですよね。
これって、場地さんと千冬にすごく合ってると思って…😭
すみませんただの独り言です()
コメント
3件
花言葉が合いすぎてる……尊敬ッッ…!!!((
ぁ、待って…待って待って……最高過ぎます……!!😇😇 まじ毎回泣きそうになりながら読んでます…🥺🥺 愛してます……((
ぬわあああああ(´;ω;`) ふ、ふぁぁ←大丈夫か? リアルで泣きそう…( ´•̥̥̥ω•̥̥̥`) 続き待ってます((。´・ω・)。´_ _))ペコ