テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#『彼』の行く末
鐘寺 実昼
375
#オリキャラ
霰❄️
61
79
#短編
QuartoMew
105
コメント
1件
うわっ…最後の展開、完全に予想外だった!!😳💦 最初は「かっこいいヒーロー登場!」って思ってたのに、まさか晶さんが仕組んでた側だったなんて…。しかも優香の名前だけピンポイントでつぶやくの、何か意味ありげでめっちゃ気になる…! 双子姉妹の性格の対比も良くて、明るい麗奈とクールな優香、どっちも魅力的だし、晶さんの優香に対する執着っぽい視線が既に不穏すぎる…。続きがマジで気になる〜!!🔥
ある日の夜……。三人のホームレスが仕事帰りのOL二人を羽交い締めにして、神社へと連れ込んでいた。
閑静な住宅街は、夜9時ともなると殆ど人は出歩いていない。
ましてや三人のホームレスの仕事は的確で、二人はそれぞれ女を後ろから羽交い締めにすると、同時に口を塞ぎ、残りの一人はナイフで脅す。
そして、素早く神社に連れ込む。
町内の隅、雑木林に囲まれた神社は、昼間でさえ参拝者も、ましてや管理人さえいることが少ない。
さらには、街灯も神社の敷地から離れた所に一つだけで、境内全体が暗い。
この時間に女を暴行するにはうってつけであった。
「へへ……こりゃいい女だな。」
「ほほっ……上玉な双子じゃねえか。」
「金だけ……と思ってたけど、たまってたからちょうどいいな……ぎひっ!」
抵抗するOL達だったが、一人は地面に投げ飛ばされて足首を捻り、にわかに立ち上がれない。
もう一人は二人ががりで押さえつけられている。
「おいっ!お前ら何をしてるっ!?」
誰かがホームレスに声を張り上げた。
「あ?なんだてめぇ…」
二人の女の内、ストレートヘアの女が叫んだ。
「助けて!お願いっ!」
男は迷うことなくホームレス達に突っ込んでいく。
暗くてハッキリは分からないが、殴る蹴るの応酬の末、ホームレス達は逃げていった。
男は息を切らせ、所々傷を負いながらも二人の女に近付いてきた。
「…………大丈夫ですか?ケガは?」
男がよく見ると、女二人は双子姉妹のようだ。
一人は焦げ茶色のストレートヘアーに、目鼻立ち整った顔、琥珀のような綺麗な瞳の女。男を惹きつけてやまないであろう豊満な胸と、スリムな身体をしていた。
歳は二十歳そこそこだろう。
足を捻って立てない女のほうは、もう一人と瓜二つであった。
違うのは左目の下に小さいホクロがあることと、もう一人よりは若干細身なぐらいだろうか。
髪型はウェーブがかかっており、ポニーテールで纏めていた。
ストレートヘアの女が話しかける。
「あ、ありがとうございます……。」
涙目で顔を引きつらせながら礼を言う。
もう一人は足首を触りながら苦悶の表情を浮かべている。
男はポニーテールの女を見るなり、
「ケガしてますね……とりあえず、ここから離れましょう。さ、立てますか?」と言いながら肩を貸す。
「ひとまずもう少し明るい所に行きましょう。そちらの方は、歩けますか?」
「あ、はい……私は大丈夫です。」
「……ッッ。」
「痛い?少し我慢して。」
男はポニーテールの女に肩を貸すと、二人三脚のように歩きながら、神社の境内を出て、表通り近くまで移動した。
男は二人を道路脇の植え込みの縁に座らせると、安心させるためか、笑顔で話しかけた。
「ここまで来れば、もう大丈夫でしょう。」
「あ、ありがとうございます。怖かった……。」
ストレートヘアの女が涙ながらに礼を言った。
「………………。」
ポニーテールの女は、無言で男を見ながら、何か考えているようだった。
「二人とも、ちょっと待っててください。タクシー呼びますから。」
男は携帯電話を取り出してタクシーを呼ぶ。
「…………町の……ええ、その建物の近くにいます。」
男がタクシーに場所の説明をしていた。
「もう少ししたらタクシーが来ますから、病院に行きましょう。」
「はい、ありがとうございます。」
「………………。」
「………ところで、お二人は双子ですか?」
男の質問に、ストレートヘアの女が答える。
「あ、はい……。私は麗奈……春山麗奈と言います。そっちが優香。」
「えーと、麗奈さんと……優香さん。俺は……九頭竜晶と言います。」
「ありがとうございます。九頭竜晶さん………素敵!」
晶を真っ直ぐ見つめて、目を輝かせる麗奈。
「…………どうも。」
一方の優香は目を合わせず、ぽつりと一言放つだけであった。
「優香、あんたもう少しちゃんとお礼言いなさいよ!」
「…………ありがとう。」
「あはは、大丈夫ですよ麗奈さん。気にしてません。」
そう言いながら、晶は優香を見つめていた。
「……………………。」
「…………何?」
晶の目線に対し、優香は睨むように一瞬目を合わせた。
「あ、いや……その……優香さん綺麗だな……って、ついつい見惚れちゃいました。」
「…………。」
優香は無言で晶を見返すと、すぐに目を離した。
優香の晶に対する視線はどこか冷たい。
「ちょっとぉ〜………晶さん、私は?」
「ああ、もちろん麗奈さんも綺麗です!そりゃホームレスに襲われても仕方ないな。」
「あはっ!でしょ?でも、晶さんみたいな素敵な人になら襲われてもいいかも!」
麗奈は初対面にも関わらず、明るく馴れ馴れしかった。
「あ、タクシーが来ましたね。乗りましょう。」
男はタクシーに合図して呼び止めると、再び優香に肩を貸し、後部座席に座らせる。
その時も、晶は優香の横顔を見ていた。
優香は視線に気付くも、知らんぷりをしていた。
病院、夜の緊急外来。
麗奈が先に診察と治療を受ける。
待合いスペースには、長椅子に並んで座る優香と晶だけで、他に人はいない。
二人の間に静かな空気が流れる。
「…………。」
チラりと優香を見る晶。
「…………何?」
馴れ馴れしい麗奈とは対称的に、優香は警戒心を緩めい。
「…………いや、本当に優香さん綺麗だ。……彼氏いるんですか?」
「…………いない。」
「そうなんですか?世の中わからないもんだな………。」
優香にアプローチをかける晶だったが、優香の反応は冷たかった。
「…………麗奈も彼氏いない。麗奈狙えば?」
晶を観察するように数秒見つめると、すぐに視線を床に戻しながら、優香はつぶやく。
「………よく、私達助ける気になったね。」
「え?」
「……いくら痩せたホームレスでも、三対一なのに。」
「仕事終わりに、偶然見かけたんですよ。咄嗟に……身体が動いてました。」
「………そう。」
優香は何かを考えているようだ。
「あの…………。」
晶が何か言おうとしたところで、麗奈が戻ってきた。
「はい、終わったよ!つぎ、優香行きなよ!」
「あ、麗奈さん終わりましたか。何ともなさそうでよかった。」
「さ、優香さん、入りましょう。」
「いい、一人で行く。」
優香に肩を貸そうとする晶だったが、優香は晶の手をすり抜け、ヨタヨタと診察室に入る。
「…………。」
優香を見つめる晶の気を逸らすように、麗奈が話しかけてきた。
「ア・キ・ラさん、ごめんなさいね。優香はいつもああのよ……。優香なんか気にしないで。」
「あ、それよりメアド交換しません?お礼したいですし!」
「え?ああ……そうですね、俺なんかで良ければ。」
「なんかって何?晶さん素敵ですよ!普段カッコつけてる男なんて、いざとなったら頼りないしやつらばかりだし。」
麗奈は携帯電話を取り出すと、電話番号とメールアドレスのデータ交換をし始めた。
「あれ?晶さん、よく見たら口から血が出てる!」
「ああ、平気ですよ。カスリ傷でしょう。」
ニッコリ微笑む晶。
「よく見るとけっこう腫れてる所あるじゃん!優香の次、治療してもらわなきゃ!」
「大丈夫ですよ!これくらい慣れっこです………。」
「でも……。」
「あ、それより今からタクシー呼んでおきますね。歩いて帰る訳にもいかないでしょうから。」
晶は麗奈の心配を他所に、携帯電話でタクシーを呼び始めた。
そうこうしている内に、優香が出てくる。
「優香、どうだった?」
「捻挫…数日で治る。」
「そう…じゃあ、次は晶さん…」
「俺は大丈夫ですよ!さぁ、タクシー呼びましたから、家まで帰りましょう。」
「…………えー…晶さん………。」
「…………。」
治療を受けようとしない晶。
それを無表情のまま怪訝に思う優香。
「あ、そうそう。優香も晶さんとメアド交換しなよ!」
「…………。」
優香はしばし無言のままでいた。
拒否の意思表示かと思われたが、優香は無言で電話番号とメアドを表示した画面を晶に見せる。
「あ、優香さんまで……いいんですね?光栄だな、こんな美女二人とメアド交換出来るなんて。」
「またまたぁ〜……晶さん謙虚すぎ!」
晶は優香とも電話番号とメールアドレスを交換した。
「じゃあ、今度一緒にカクテル飲みに行きませんか?」
「いいねー!行きたい!」
「…………それでいい。」
「ホント、優香は素直じゃないというか……。」
「晶さん、どこに住んでいるんですか?仕事は?」
「仕事はあそこのセントラルビルで……。」
「え?セントラルビル?同じじゃん!何で今まで晶さんに気付かなかったんだろ?」
「…………。」
「じゃあ、セントラルビルの近くに行きつけのショットバーがあるんですよ、今度一緒に…いかがですか?」
「OK、OK!絶対行く!」
「…………私も。」
「優香は無理しなくていいよ。」
「……無理してない。気分転換。」
「いつも会社の飲み会も行かないくせに?」
「……私の勝手。」
「何よ?」
「まぁまぁ、二人とも……あ、タクシー来ましたね。それじゃ、俺は歩いて帰りますから………。」
「…………待って。」
「どうしたんですか、優香さん?」
「…………家はどこなの?」
「………小さいマンションですよ。ここから見える、あの茶色い大きいマンションのすぐ隣です。」
「…………そう。」
「…………。」
「…………。」
「どうしたの、優香?」
「…………それじゃ、お気をつけて!また今度会いましょう!」
優香としばし無言で見つめ合ったかと思うと、晶は一人夜道に溶けていった。
「あ…そういえば、結局治療してないけど、晶さんホントに大丈夫かな?」
「…………。」
* * *
麗奈と優香がタクシーで帰宅した頃。
二人が襲われた神社に、一人の男が歩いていた。
神社の境内の隅には、数時間前に春山姉妹を襲ったホームレス達がたむろしていた。
「へへ……待ちくたびれたぜ、旦那……。」
「いい演技だったよ……ほら、約束の残金だ。」
男は札束の入った封筒をホームレスに渡す。
「へへっ、どうも……。しかし、旦那さんよ、あのまま突っ込んじまえばよかったのに、本当にあんなんでよかったんですかい?」
「…………くだらねえ質問はするもんじゃねぇぜ。それより、約束どおり明日の午前中にはこの地域から離れろ。明日以降また見ることがあれば……。」
男の目は先程まで女二人を守り、優しく病院まで連れて行った男と同一人物とは思えないほど冷たく、全ての感情を押し殺したような目をしていた。
男の目に怖気付いたのか、ホームレス達は黙ってどこかへと去っていく。
その男は先程まで九頭竜晶と名乗っていた男だった。
「…………春山麗奈と優香。」
「春山優香……か……………。」
深夜の神社の境内で、九頭竜晶と名乗る男は一人つぶやいていた。
つづく