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「重い彼氏?ないわー」

「それな、束縛とかウザイし」

「ずっと一緒に居てとか無理だよね」

授業終わり、たまたま耳に入ってきた会話。

クラスメイトの女子が騒いでいる。隣に

俺には関係ないな、と雑音と同じよここう

に聞き流していた。

そう。関係ないと思っていたのだ。

「クラウンくんって重そうじゃない?」

「確かにね。他の男と居たら問い詰めてきそう」

急に自分の名前が出てきて驚く。

そんなはずないだろうと普段の恋人との様子を思い出してみる。

とある日

「おい、伝言ウサギをみせろ。」

「あいよ、」

着信履歴からメッセージまで慣れた手つきで確認する。今日も怪しい連絡はないようだ。…否

「この男は誰だ?」

「ああ、そいつの落し物拾ってやったんだよ。」此奴の私物にドットが触れただと?

「今度礼も兼ねて食事に行かないかって」

は?俺という彼氏がいながらドットを誘うその男は頭が狂っているのか?正気の沙汰じゃない。

「断っておけよ」

勿論許可するはず無い。俺以外と二人っきりで食事なんて浮気であろう。

「言われなくても断ったっつーの!」

「じゃあ何故連絡先が残っている。」

用もないのに俺以外(マッシュ達を除いて)と連絡先を持っていていい訳ない。

「わぁったよ、消すよ」

ポチポチと操作していく。画面には本当に削除しますか?の表示。はい。を押した所まで確認しようやく一安心だ。

「これからは連絡先を残しておくなどするなよ」

きちんと釘を刺しておく。此奴は言わないと分からないからな。

「はいはい、仰せのままに」

これは束縛に入るのだろうか。否、当たり前のことだ。こんなこと束縛でもなんでもない。

この女子達は他にもずっと一緒に居るのは無理と言っていたがどうだろう。俺たちは同室だからそこはどうしようともない。学校で…確かに隣にドットを置いておくことは多い。周りに男を寄せ付けない為にな。なんなら今この瞬間も隣に居る。共にこの会話を聞いているのだ。

「なぁ、ランス」

タイムリーだな。丁度ドットが話しかけてきた。

「どうした?」

その綺麗な唇から次にどのような言葉を紡ぐのかと思っていたところ、

「確かにお前って重いよな。」

という衝撃的な言葉だった。

「…は?」

意外すぎて素っ頓狂な声を上げてしまう。

重い?この俺が?

確かに妹への愛が少しばかり重いのは認めよう。だがそれとこれとは別だ。ドットのグッズは飾ってあるだけで持ち歩いてはいないし、布教したりもしていない。(人様に見せられないようなものが多いからな)勿論監禁なんてしていないし、心当たりなど全く無かった。

「お前、無自覚だったのかよ」

「無自覚も何も俺は重くない。」

レモンじゃないんだからと言い溜息をつくと彼奴が思う俺の重いところを一つづつ挙げ始めた。

「まず、ずっと俺にくっついてるだろ?」

周りに男が寄ってこないように見張っているだけだ。

「それに、伝言ウサギチェックしてくる」

他の男と連絡を取っているお前が悪い。

「あと、グッズとか?」

先程述べたように持ち歩いてはいない。

「盗撮、盗聴もそうだよな」

うっ…それは仕方ないんだ…

「どうだ?これでも重くないって言えんのかよ?」

「最後のには触れないでおくが他に関しては理由がある。」

「最後の不問にすんなよ…で?理由ってなんだよ?」

ドットに聞かれたので理由を説明する。するとドットは呆れたような表情をして

「はぁ、その考え方自体がおかしいんだよ…」

などと言う。繰り返すように俺は重くないと反論するも

「俺が重いって感じたらそれはもう重いんだよ」

と納得してしまう答えが返ってきた為反論を諦めた。

俺は重いのか…ん?重いということは女子達が話していたようにドットの中で俺は彼氏として、“ない”のではないだろうか。

そう考えると焦りが湧いてきた。ドットにウザがられてるのではないか。別れ話を切り出されるのも時間の問題ではないか。それならば俺は“重い”と言われる行動を控えるしかない。

・伝言ウサギのチェックを行わない

・隣に居る時間を減らす

・グッズをしまう

・盗撮、盗撮をしない

これを守るしかない。できるのか不安しかないが別れるよりはマシだろう。

この日から俺の「重い男脱却作戦」が始まった。

まず手始めに伝言ウサギのチェックをしないことにした。いつもの通りドットに伝言ウサギを差し出さしてもそれを拒否し、これからはチェックしないとの旨を伝えると大層驚いていた。


次に部屋にあるドットのグッズを片付けた。アンナ一色になった。部屋に帰ってきたドットが自分のグッズが置いてあった空間を見つめて食い気味にどうしたんだと聞いてきた為片付けた。と、答えた。その時のドットが寂しいような雰囲気を纏っていたように見えたのは自意識過剰だろうか。


そして盗撮、盗聴をしない。これは案外簡単だった。グッズを新しく作ることがなくなった為盗撮をすることがなくなったのだ。


1番難しかったのが隣にいる時間を減らすというものだ。周りからは驚きの視線を浴びせられるしマッシュ達には体調を心配された。当人は始めこそ戸惑っていたがだんだんと慣れたようだった。


“重い男脱却作戦”を遂行して2週間近く経ったある日、フィンに話があると言って呼び出された。

フィンの部屋に着いて世間話も程々に話を切り出された。

「ドットくんに愛想つかしちゃったの?」

予想外の一言に唖然としてしまった。俺が?ドットに?愛想をつかす?そんな訳ないだろう。今だってドットに別れ話を切り出されないために“重い男脱却作戦”を決行している真っ最中だと言うのに。何故そのような発想に至ったのだろう。理由を聞くと

「ドットくんに相談されてたんだ」

という答えが返ってきた。

相談内容としては、最近のランスの様子がおかしい。冷たくなった。愛想をつかされたのではないか。

というものだった。

まさか“重い男脱却作戦”が裏目に出てしまったとは。

俺はフィンに愛想をつかした訳ではないこと、別れたくないが為に“重い男脱却作戦”を遂行していたことを全て話した。自分で言葉にするとこうも恥ずかしいものなのか。

「そっか、重いから別れを告げられると思ったんだね…」

「そうだ…」

とても恥ずかしい。羞恥心で爆発しそうだ。

「でも、ドットくんはランスくんが重くてもいいんじゃない?」

重くてもいい?

「どういうことだ?」

重い男は“ない”のではないか。ウザがられてしまうのではないか。

「だって、今まで反抗せずに受け入れててくれてたんでしょ?ドットくんは嫌なことは嫌って言うよ。」

確かに。今までドットはなんやかんや言いながらも拒否したことは無かった。盗聴はさすがに控えるように言われたが…

「ドットはこんな俺でもいいのか…?」

「うん。そうだと思うよ。とりあえず本人と話をしてみたら?」

そうだな。ドットと話をしよう。フィンに手短に礼を言い急いでドットの所へと向かった。この時間は部屋にいるだろう。

「ドット!!」

バタンッと、壊れてしまいそうなほどの勢いで扉を開け恋人の名前を叫ぶ

「うおっ!なんだよ!ドア壊れるだろ!」

驚いた様子で飲んでいたであろう紅茶をテーブルに置きこちらを振り返る

「…なんだよ」

怒っているのだろうか、拗ねているのだろうか。眉間に皺が寄っている。

「すまなかった、」

ドットの側までいき、手をとり、手の甲に額を押し付けるような形で謝罪する。

見上げると目を限界まで見開き顔を髪と同じ色にさせているドットと目が合った。

「な、ななんだよ?」

動揺を隠そうとしている姿がとても可愛らしい。

事の経緯を説明し、再度謝罪をするとドットはニッと笑い

「お前そんなに俺の事好きだったんだな」

と揶揄うように聞いてきたので負けじと

「ああそうだが?悪いか?」

と笑ってやると湯気が出るほど顔が熱くなっていく。

「っ、おま!」

チュッ

騒がしくなりそうだった唇を塞ぎ静めてから

「重い俺と別れたいか…?」

と聞くとドットは首を横に振り

「んーな訳ねぇだろ、そもそもお前が重いって知ってて付き合ってんだからよ」

とフィンが言っていた通りの返事が来た。

「そうか。」

と呟きまたキスを落とす。


その日からまた伝言ウサギはチェックされるようになったし、グッズは量もスペースも増えたし、距離も以前より近くなった。最近の口喧嘩の内容は“盗撮、盗聴を控えるように”というものだそうだ。


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