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▶︎無理な人はまじで無理なネタかも
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会社の休憩時間、俺は同期と昼食を取っていた。空を見れば雲ひとつ無い快晴で屋上に出て食べる昼飯がただただ美味かった。
「おい、フジ……あれ…」
ふと同期が目をまん丸くして向かいのビルを指した。俺はその指先が指す方向を辿る。
「んぁ??何……」
“それ”が目に入った瞬間、俺は言葉を失った。
あぁ、なんと美しいんだろう。
白い服に身を包んだ細い躯体に、しなやかな手足。細い首が支えるのは小さな顔、そして目を引く特徴的な赤い襟足…。
世界が色付くとはこういうことか。この世に生まれ落ちてからこんな感覚に陥ったことが無かった。初めてのそれはとても新鮮で心臓がうるさい。これが、これが恋なのだ。
「お、俺、警察に連絡……」
「いいよ、」
「は、はぁ??」
「彼が死んでからにしよう。それがきっと彼の望むことだから。」
俺はそっと同期の肩に手を置いて口を開いた。
本当は彼を生きたまま閉じ込めてやりたかった。いつか見た絵本で王子様が死んだ姫様を城まで持ち帰るというシーンが羨ましいと感じる日が来るなんて。俺にとって彼は姫だった。何からも守ってあげないといけない存在、それと同時に触れられない高貴なる存在。そんなことを考えてる内にも彼は今にもビルから飛び降りようとしていた。そう、彼は死のうとしているのだ。皮肉な話だ、初恋相手と出会った場所がビルの屋上…増してや彼が死ぬ3分ほど前だなんて。もっと早く出会っていれば彼の未来は変わっていたのだろうか?意味の無い自問自答を繰り返すも今の彼が止まってくれる事は無く。
「……君が好きだ。」
届かぬ告白を口にした瞬間、彼はビルから身を投げた。数秒後には地面と身体がぶつかる破裂音、悲鳴と街の雑踏が聞こえた。だが、今のフジにはそんな音はどうでも良かったのだ。
── ただ、彼の舞う姿は美しかった。
︎ ︎︎︎︎︎