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「さてと――」
千歳を病院に放り込んだオレは、恵太から借りたバイクに寄りかかりスマホを取り出した。
駅前の繁華街にある総合病院。酔っ払いと客引きの喧騒を遠くに聞きながら、スマホの薄い機体を耳に当てた。
『もしもし、お疲れ様ッス』
程なくして聞こえてきた、聞き馴染んだ声。
「おう、恵太。バイク助かったわ、サンキューな」
『いや、いいんッスよ。智紀さんには色々と世話になったッスから――で、どうなったッスか?』
「その事なんだが……恵太――」
オレは、一拍置いてから大きく息を吸い込んだ。
そして……
「来れるヤツだけでいい。昔のメンバーに集合かけてくれ」
『そ、それって……?』
「ああ……狩りだ」
※※※ ※※※ ※※※※
「ったく、松本のヤローッ! 高い金ふんだくっといて、あっさりと負けやがってっ!」
金髪に鼻ピアスをした男は、怒りを顕に近くにあったベンチを蹴り飛ばした。
駅の東にある自然公園。中央に大きな噴水があり、晩秋には周りを囲む銀杏の木が綺麗に色づき、地域の憩いの場になっている。
昼間には子供達の声で賑わっていたが、すっかり日の落ちたこの時間には噴水の音だけが粛々と流れていた。
忌々し気な顔でベンチへ腰を下ろす金髪の前には、夜中にサングラスという奇妙なスタイルの男と、太めの男が怯える様な表情を浮かべている。
「で、どうすんだよ?」
「てか、何なんだよ、あのオッサン。プロレスラーの松本とケンカして勝つとか、ありえねーだろ?」
薄暗い街灯に照らされた、そんな三バカトリオにユックリと歩み寄るオレ。
「おいおい、さっきまで松本さんつってたのに、もう呼び捨てか?」
「なっ!?」
不敵な笑みを浮かべるオレに、驚愕の表情を見せる三バカトリオ。
「テ、テメェ……どうやってココが……?」
「ああっ? 人海戦術だよ。つっても、金髪鼻ピーにグラサンとデブ。今どきそんな田舎モン丸出しの格好してるバカ探すのに、っんな手間かからんかったけどな」
オレが鼻ピーの問いへ答えると同時に、三バカの周りを白い特攻服の男達が取り囲む。
逃げ場を塞がれ、顔を引きつらせて固まる三バカ達。そして、その怯えた目に飛び込んだのは――
「ル、R-4だと……?」
そう、白い|特攻服《マトイ》にあしらわれた『R-4』の文字。
「テ、テメェッ! 助っ人呼ぶとか、キタねぇぞっ!!」
「そ、そそそ、そうだっ!」
どの口が、っんな事ゆーんだか……?
呆れてため息をつくオレの代わりに、隣にいた恵太が一歩前に進み出る。
「アホか? 他人のケンカの助っ人をするほど、オレらもヒマじゃねぇーよ」
「な、なんだと……?」
「てか、オマエら……この人が誰かも知らずにケンカ売ったんが、そもそもの間違いなんだよ」
恵太は口角を吊り上げ、楽しそうにもう一歩踏み出した。それに合わせる様に、三バカを取り囲んでいた奴らも一歩踏み出して囲いを詰めて行く。
「いいか? この人はな、|R-4《ウチ》で七代目を張っていた、北村智紀さんだよ」
「「「なっ!?」」」
三バカの表情が驚愕に固まった。そしてその表情を愉しむ様に、揃って不敵な笑みを浮かべる恵太達。
まるで、肉食獣の群れに囲まれたウサギ――いや、そんな可愛いモンじゃねえぇな。肉食獣の群れに囲まれたドブネズミみたいに怯えた目を見せている三バカトリオ。
そんな中、鼻ピー男が震えながら掠れた声を絞り出した。
「ル、ルートの七代目……北村智紀って言ったら『四号線のケンカ屋』と呼ばれてた北村智紀か……?」
ずいぶんと懐かし呼び名が出て来たな、オイ。まあ、現役の頃は、そんな風に呼ばれた事もあったけど、いま聞くと結構恥ずかしい通り名だな……
「まあ、知ってんなら話は早えや――」
オレは、苦笑いを浮かべながら一歩踏み出した。そして大きく息を吸い込み、その息をユックリ吐き出しながら三バカ共を睨みつける。
「きっちりケジメ取らせて貰うぜ。コイツらには手を出させねぇ、ヤルのはオレ一人だ。まとめて掛かって来いや」
そして五分後――