テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
『痛みを負った心には愛の癒しを』
〜愛情は特効薬〜
プロローグ
バシンっ!
『痛…っ!やめ、やめて、いやぁ!』
『うるせぇ!』
ドカッ!
痛い。苦しい。やめて。
心の声は届かない。
『うわぁーお前ひっどいな〜これお前の彼女だろ?』
『あ?ちげぇよ。ただの俺のストレス発散の道具だよ。』
『ひっでー!』
『……。』
私は…ずっとこのまま殴られて…いつか死んじゃうんだ。…それでもいっか。
『おい。』
『っ!』
『酒、無くなったんだけど。』
『あ、か、買ってくる…。』
『あと煙草も。ブラック・スターな。』
『わ、分かった。』
『5分で買ってこいよ!また殴るからな!』
バタンっ。
私は財布を持って外へ出る。
『ねぇ、あの人…。』
『痣だらけね…』
『……っ。』
私は長袖でで痣を隠す。
(…もう、嫌。でも、帰らないと殴られる。)
と、その時――。
『にゃーん。』
『…?猫の鳴き声?』
黒猫が私の前に現れた。
スリスリ……。
『…君も1人なの?』
『にゃー。』
『……。』
『私もなんだ。一人で…誰も助けてくれないの。それならもう死んじゃおうかなって思ってたの。』
『……にゃ!』
『え?』
黒猫は私の前から走り出す。
『あ、待って、危ないよ…』
私は猫を追いかける。
(着いてこいってこと…?)
『にゃー。』
カツン…っ。
『あ、なにか落としたよ?』
(金色の…指輪…?)
何故それを指にはめたかは分からない。
何となく…綺麗な指輪に引かれて…気付けば薬指にはめていた。
キラッ!
眩しい光が私を包んだ。
(な、何…!?)
『う……。あれ、ここは……?』
目覚めたら煌びやかな部屋にいた。
(家じゃない、よね。)
『お目覚めになりましたか?』
『!!』
(低い、声…)
『あ、ぁ、ぅあ……』
(上手く声が出ない。)
『主様。お待ちしておりました。』
『……っ。』
(誰…?)
『混乱しているようですね。無理もありません。紅茶をどうぞ。落ち着くはずです。』
『ぁ、え、あ……』
『…あ、失礼しました。私はベリアン。貴方の執事です。』
(しつ、じ?執事ってあの執事?何を言って…。)
『…!そのお顔…もしやお怪我を…』
『ひっ!触らないで!!』
バシンッ!
私は手を振り払う。
『っ…!』
『さわ、ら、ないで…。』
『やめて、痛いの、もう嫌……っ。』
私は身を震わせて涙ながら睨む。
『っ……』
(混乱してるのもそうですが…何かに怯えているようにも見えます。まさか……。)
『…急に触れようとして申し訳ございませんでした。』
私は頭を下げる。
『お怪我をしていたので手当をしようとしただけなのです。』
『あ、ご、ごめんなさい……私、勘違いを…。』
(優しそう…。この人…。心配してくれたの…?)
そのベリアンと言う男性に心配されて少しだけ
警戒がとけたが…中々男性恐怖症は治らない。
でも、ベリアンを始め、他の執事と過ごすうちに…打ち解けていく。
『私…元の世界には帰らない。
みんなとずっと…一緒にいたい。』
貴方が彼らと打ち解けたその時にはもう…
心の傷は癒えて、愛されている。
愛という名の…優しいお薬。
次回
第1錠 身体の傷は何を語る
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!