TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで
小さな神社

小さな神社

「小さな神社」のメインビジュアル

4

自分探し

♥

41

2022年09月25日

シェアするシェアする
報告する

これはこの神社に来てしばらくたったころのことだったと思う。

その日、ぼくは鏡の前で色々なポーズをとっていた。

「何やってるの、コマ兄?」

美子が聞いた。

「いやね、最近“自分探し”って言葉を知って。

まぁ、せっかくだからぼくも探してみようかと思ったんだよ。

で、鏡を見てるうちにとりあえずカッコいいポーズをと…」

「全然わかんない」

美子は笑いながら言った。

それを見ていた女神様も笑う。

「じゃあ、いい機会だから自分探しに行ってみようか」「おぉ〜…きれいな建物ですねぇ」

ぼくは見上げて言った。

「ここ、何の建物?」

美子が聞く。

「博物館よ」

女神様が答えた。

自分探しで博物館…きっとここにはぼくのクローンが展示されて…

いや、むしろぼくがクローンで本物が展示されている可能性も…

「女神様、コマ兄が何か変なこと考えてるよ!」

ぼくを見上げていた美子が言った。

「コマ、ここはいたって安全で健全な博物館よ」

ぼくはハッと我に帰る。

「じゃあ、早速入りましょう」


中に入ると、最初はこの辺りの動物や植物、果ては化石などの展示があった。

「へぇ…普段の生活では気づかないけど、色々な生き物がいますね」

ぼくは鳥の模型を見ながら言った。

「ねぇ、ちょうちょがいるよ、きれいだよ」

美子は蝶の標本を見ながら言う。

「うちの近所にもいるかなぁ?」

女神様が答える。

「多分、山に入って行かないと見つからないね」

「なーんだ、残念」

美子はどこかおかしそうに言った。次の展示は歴史的なものだった。

発掘された甕棺や石器、陶器、刀…今では見ることのないもの…

「この辺りで見つかったんですね」

「歴史のある土地だからね」

女神様は静かに言った。さらに次は、美術品だ。

「絵って美術品にあるものでは?」

ぼくは言った。

「この地域にゆかりのある画家の絵でしょう」

まぁ、いいんじゃないの、と女神様は言って絵を見始める。

どれもとても美しい絵だ。

ぼくたちは黙って一つ一つを丁寧に見た。

ほとんど誰も喋らなかったけど、それぞれしっかり堪能していた。最後の部屋は民俗学。

昔の家の模型、過去に使われていた道具類…

昔の人の暮らしの一端が見える。

「色々な道具があるね…船もあるよ」

漁業や農業で使われていた道具がたくさん展示してある。

この辺りの神社に奉納された船の縮小模型。

「乗れるかな?」

「いや、無理だと思うよ」

ぼくは笑った。


テンションの高いまま、家に帰る。

「楽しかったね」

「また行きたいね」

次に女神様が言った。

「自分探しはできたかしら?」

……

………

「そうだった!

全然探してなかった!

警察!捜索願い!」

「何でそうなるのよ」

女神様が笑う。

「今日の感想を聞かせて」

「そうですね、ぼくは自然関係と美術品が好きでした。

自然でも鳥がよかったなぁ…近所でも注意して見てみようかなって…

あとは美術品が好きでしたね。

色々美術館もまわって見たいと思いました」

女神様が頷いて言う。

「そう、好きなものが見つかったのね。

それはよかった。

美子は?」

「私もね、生き物がよかったなって思ったよ。

近所にきれいなちょうちょがいたらいいなって」

女神様は嬉しそうに頷く。

「自分探しってね、自分で自分をもっと詳しく知ることなのよ。

博物館に行くと自分の好きな分野はしっかり見るし、興味のないものはさらっと見る。

だから、自分の好きな分野が見つかったのなら二人とも自分探しは成功ね。

ちなみに、他の博物館でも試してみると同じようになるよ」

そう言って女神様は静かにお茶を飲むのだった。











※ロケ地佐賀県立博物館

loading

この作品はいかがでしたか?

41

loading
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚