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#ロマンスファンタジー
百はな🍑
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アンナが箱の蓋を開ける。中から現れたのは――。
「……うわぁ」
淡い金色のシルクに、繊細なレース。見るからに最高級品の寝巻だった。
けれど、持ち上げると、向こう側が透けて見える。
「ひゃあ!?お、お嬢様!これ、結構……というか超大胆ですよ!?」
「……そうね」
「殿下、意外と攻めてますね!」
「…………」
私は無言で薄すぎる寝間着を見つめた。
(……一体、何のつもり?)
箱の中には、一通の手紙まで添えられている。硬い筆跡で、こう記されていた。
『昨夜着用していた寝巻は、肌触りに難があるように見受けられた。皇太子妃の健康管理も皇室の責務だ。より柔らかく、着心地のよいものを用意させた。今後はこちらを着用するよう命ずる』
「…………」
私は思わず二度読みした。
「健康管理……?」
(『義務』の時間を軍事作戦か何かと勘違いしているのかしら?)
あまりにもっともらしい言い訳に、呆れを通り越して感心してしまう。
「ははーん! これ、絶対照れ隠しですよ!」
アンナが間髪入れずに断言した。
「そうかしら?」
「だって、昨日のお嬢様の寝間着まで、ちゃんとチェックしてたんですよ!?」
(敵に塩を送るどころか、こんなものを送りつけてくるなんて)
(あいつ、もしかしてこれ天然でやってるの?)
(恋愛未経験だから加減が分からなかったとか……?)
私はもう一度、指先でシルクを撫でた。 滑らかな手触りは、確かに最高だ。
(意外と細かいところも気にしてくれているのね)
(とりあえず、貰えるものは貰っておこうかしら。今後の作戦にも使えそうだし)
「宝石類でも届くかと思ったけれど……まあいいわ。殿下からのご命令ですもの。ちゃんと着てたっぷりと感謝を伝えて差し上げないとね♡」
「お嬢様、ポジティブすぎます!」
アンナはにやにやと楽しそうだ。
「絶対にカイル殿下、固まっちゃいますよ!」
「ふふっ、楽しみね」
アンナに調べさせたところ、皇宮の宝物庫には、皇室所蔵の至宝が数多く眠っているらしい。
ゲームのソフィアは、一度着た高価なドレスを『気に入らない』とすぐ処分する浪費家として有名だった。
そのせいで皇宮中からの評判も最悪。皇太子妃になった今も、自由に使えるお金はほとんど与えられていない。
ちまちまと宝石をくすねるより、一生遊んで暮らせるほどのお宝を手に入れて、田舎で悠々自適に暮らす方が手っ取り早い。
私は大胆すぎる寝巻を眺め、にっこりと微笑んだ。
(いいわ。これを着て、たっぷりと感謝を伝えてあげる)
(その代わり――宝物庫のお宝はいただくわよ、殿下♡)
***
その日の夜――。静寂に包まれた寝室。ベッドの上で、私は皇室所蔵の宝物目録をめくっていた。
どれが持ち運びやすく、なおかつ高値で売れそうか、目星をつけるためだ。
(この金細工の小箱なんてよさそうね。宝石も外せそうだし、隠し持つにはちょうどいい大きさだわ)
その時、寝室の扉が開いた。
「……まだ起きていたのか」
入ってきたのは、公務を終えたカイル殿下だった。
「おかえりなさいませ、殿下」
「……読書とは感心だな」
「こう見えて読書が趣味ですの。大変有意義な『お勉強』をさせていただいておりましたわ」
私は目録をさっと枕の下へ滑り込ませると、布団をどけてベッドから降りた。
「ところで殿下――こちらでよろしかったかしら?」
寝巻の裾を優雅に摘んだ。
「…………」
カイル殿下の動きが、ぴたりと止まった。
「あら?どうなさいました? そんなに驚いたお顔をなさって」
「……っ、そ、そそ、その格好は……何だ!?」
視線を逸らしたかと思えば、またチラチラとこちらを見る。どうやら、目の置き場に困っているらしい。
(ふふっ。予想通り♡)
私はわざとらしく首を傾げた。
「何って――殿下のご命令どおり、ちゃんと着て差し上げましたのよ?♡」
「…………は!?」
「『今後はこちらを着用するよう命ずる』と、わざわざお手紙までいただきましたもの」
「…………っ!」
みるみるうちに、カイル殿下の耳が赤くなる。
「俺はこんなものを頼んでいない!!」
コメント
1件
ひよりさん、第6話読みました! カイル殿下が贈ってきた透け透け寝間着……「健康管理」って名目がもう照れ隠し丸出しで可愛すぎます😂 アンナがそれを逆手にとって、わざと着て殿下をからかうシーン、殿下の耳が真っ赤になる描写が最高でした。お互い不器用ながらも確かに気にかけ合ってる感じがじわじわきますね。宝物庫のお宝を狙う計算高さと、恋愛初心者な殿下のギャップがたまらないです。次も楽しみにしてます!