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部屋の外から賑やかな声が聞こえてきた。彼とアキラは互いに顔を見合わせ、何か気になるものを感じて廊下に出た。ロビーのほうに向かうと、すでに集まっている参加者たちの中に、明らかに浮かれているペアが目に入った。
「やっぱり、元に戻れるやつもいるんだな…」
彼は低い声でつぶやいた。そこに立っていたのは、今回のミッションで高得点を獲得した数組のペアたちだった。その中でも一際目立つのが、華やかな笑顔を浮かべた二人組の女性だ。
「ねえ、本当に戻らないの?」
近くにいた別の参加者が、そのペアの一人に問いかけた。問いかけられた女性は、笑顔を崩さずに肩をすくめた。
「ああ。私たち、もう女の体でいいかなって思ってさ。」
軽い調子で答えたその声には、迷いのない響きがあった。
「えっ、本気で言ってるの?」
アキラが驚いたように言った。彼も同じ気持ちだった。元の体に戻れるのに、それを望まない人がいるなんて、想像もしなかった。
そのペアのもう一人の女性が口を開いた。彼女は小柄で整った顔立ちをしており、メイド服姿が似合っていた。
「だってさ、女の体ってこんなに楽しいんだよ?服の選び方も無限にあるし、みんな優しくしてくれるし…なんか、自由な感じがするんだよね。」
彼女は嬉しそうに笑いながらスカートをひらりと揺らしてみせた。
「でも、元の体に戻れるって言われてるんだぞ?」
彼は思わず口を挟んだ。自分たちは元の体に戻るために必死になっているというのに、彼女たちの言葉はあまりに軽々しいように感じられた。
「それは人それぞれでしょ?」
華やかな笑顔を浮かべている女性が、少しだけ表情を引き締めて言った。
「確かに、最初は元に戻りたいって思ったよ。でも、こうして女として過ごしてみたら、思った以上に楽しいことがいっぱいだったんだ。それに…私たち、ずっと親友だったけど、女になってからお互いのことをもっと深く知れた気がしてさ。」
その言葉に、周囲の参加者たちもざわめいた。どうやら、このミッションで成功した他のペアも少なからず同じような気持ちを抱いているようだった。
「俺には信じられない…」
アキラは小さくつぶやいた。その手はぎゅっと拳を握りしめていた。
彼はそんなアキラの肩をそっと叩き、冷静になるよう促した。
「アキラ、俺たちは俺たちでやることをやるしかない。どんな選択をするのかは、結局その人次第なんだろう。」
「…だな。でも俺は絶対元に戻る。」
アキラは小さくうなずき、再び彼の目を見た。その瞳には、強い決意の光が宿っていた。