「んあ…………?」
かすかな鳥の鳴き声で目を覚ました。幸い職場へは間に合う時間帯だ。
トーストでパンを焼く間カフェインを摂って目を覚ます。必要なプリントに資料、筆箱に……といるものを探し鞄に詰める。
その時間は音をあまり立てないし立たない、ただ時計の音がチクタクと鳴り明るい日差しを浴び元気をもらう。
簓がいるときは朝っぱらからうるさいし実質太陽だった。
才能が眩しくて元気で時折寒くて、時折言うか毎度のごとくって感じやけど。
【イカが言った!ご機嫌イカが?どーやこれ!忘れんうちにメモっとこ!!!】
「ふふっ、……しょーもな」
記憶に刻まれてる簓の寒いギャグ、寒って言ったらガビーン!とか言っていたか、俺のツッコみの何がええんやろか。
別に何でもよかったんだろ。気づいたらパンは焼けていた。
サクサクと音を立ててはジャムを付けた朝ごはんのパンを食べている。無関心になった気分である。
一か月、そう一か月も経てば慣れる、そう思っていた。
時間は少なくなっていく、髪だってセットしなきゃ前髪が鬱陶しくもなる。
(慣れなきゃ)
学校
(慣れなきゃ)
「ろしょーせんせ?」
「どしたんー?」
生徒に声を掛けられハッとする。ボーっとしていたようだ。
「すまんな、どうしたんや?」
何か用があったのだろうと聞き返した。だが返ってきた言葉は思っていた言葉とは違っていた。
「せんせー元気ないなって思うてん」
「そか………」
目に見えるほど元気がなかっただろうか、いつも通りではないのか?と疑問に思った。
「あっ!昨日のテレビ見たー?」
「見た見た!!」
何気ない雑談が休み時間のこの時間に響く。
そんな中次の準備を始めた。
「慣れなあかん、」
そう小さく呟いた。
帰り
(慣れなきゃ)
またほとほとと歩く、暗いこの夜道に帰ったら何をしなければいけないのか考える。
考えすぎたのだろう。またボーっとしていたんだと思う。野良バトルを仕掛けられていたことに気づけなかった。
「ぐっあああああ!!」
集中していなかったからかかなりのダメージを受けた。
「こんなもんなんかぁ?」
期待外れというかのような発言にぴくっと反応する。
「な、なんやて?」
ヴォン
マイクを起動させ集中する、も
【盧笙、さがっとりワイがやるわ】
「っ!」
そうだあの時も守られていた。今の俺に実力はあるのか?そう思えば思うほど不安でいっぱいになる。
「はぁ、はぁ」
不安が大きくなりリリック諸々覚束ないようで相手を失神させるのには時間がかかった。
(慣れなきゃ)
考えれば考えるほど深くなる。今までどれだけ簓に助けられてきたのだろうか、その思いは漫才をしてた頃、そして解散した当時足を引っ張る行為をし守られて生きた。
当たり前がなくなることがこれだけ辛いなんて知る由もなかった。
このままだったら俺は?助けられない俺は…
「どうなってまうんや…………?」