蒼は古びた倉庫の前に立っていた。闇夜にぼんやりと浮かび上がるその姿は、どこか不気味な雰囲気を漂わせていた。だが、美月がこの中にいる可能性が高いとわかった以上、蒼は迷わず一歩を踏み出した。
倉庫の中はひんやりとしており、静寂の中に足音が響く。蒼は息を潜めながら周囲を見渡した。美月の姿はまだ見当たらないが、どこからか微かに声が聞こえてくる。それは、美月が怯えながらも発している声だった。
「美月!」 蒼の心が高鳴り、その声に向かって走り出した。しかし、突然彼の前に現れたのは屈強な男たちだった。蒼は一瞬足を止めるが、美月を守りたいという思いがその恐怖をかき消した。
「通してもらう!」 蒼は勇敢に男たちに立ち向かう。未経験の荒々しい戦いだったが、彼の心には美月を救いたいという強い決意が燃えていた。殴られながらも倒れることなく、蒼はついに男たちを振り切り、美月のいる部屋にたどり着く。
部屋の隅で縛られていた美月は、蒼の姿を見た瞬間、涙を流した。 「蒼…来てくれたのね…!」 蒼は彼女に近づき、縄をほどきながら優しく声をかけた。 「約束しただろ。俺が絶対に守るって。」
しかし、再び背後から男たちの声が迫ってきた。蒼は美月の手を取り、二人で急いで倉庫を抜け出そうとした。出口に向かう道中も危険に満ちていたが、二人は互いの存在を支え合いながら進んでいった。
やがて、倉庫の外に飛び出した二人は、星空の下でようやく一息つくことができた。蒼は大きく息を吸い込み、緊張から解放された顔で美月を見つめる。 「大丈夫か?」 「うん…ありがとう、蒼。本当に…助けてくれて…」
美月の瞳には感謝と安堵、そして深い信頼が宿っていた。その瞬間、二人の心はさらに強く結ばれたように感じられた。
その夜、美月を無事に家に送り届けた蒼は、自分の中に新たな決意が生まれたことを感じていた。どんな困難があっても、美月を守り続けるという決意だった。一方の美月も、蒼の勇気に心からの感謝と愛情を抱いていた。
二人の関係はこの出来事を経て、より深く、より強いものへと変わり始めた。
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