〜side小柳〜
『ねぇ、痛く無いの?そんな澄ました顔して寝てるけど』
叶さん?
『傷なかなか治らないね。今日も注射してもらおうね』
俺、注射嫌いなんスよ‥‥
『今日も天気が良いよ。見てみなよ』
え、でも夜が明けなくて‥‥まだ暗いですけど
『‥‥ロウ。‥‥ロウの声聴きたいよ?もうそろそろ起きて相手してよ』
叶さん‥‥
俺は声だけじゃなく顔が見たいです
目を開けると見覚えのある天井
病院の天井だ
ふと横を見ると見たかった顔がある
俺の手を握り眠ってる
「‥‥か‥‥」
声が掠れて出にくい
力が入らない手で叶さんを握り返した
「‥‥ん?‥‥‥!」
微妙に握られた手に叶さんはすぐ反応する
「‥‥ロウ?」
「‥‥はい」
「ロウ!」
「聞こえてますよ」
聞こえるかどうか分からないくらい掠れた声で返事をする
「良かった‥‥ずっと目を覚さないから‥‥」
「‥‥ずっと?」
「いや、今はいいや。待ってて、星川さん呼んでくる!」
目が覚めたなら帰っても良いと言われ、その日のうちに俺は家に戻る事が出来た
病院では叶さんに支えられて歩いていたが、家に着く頃には1人で歩けるようになっていた
「‥‥‥‥家だ」
「そうだよ。久々だろ?早く入ってよ」
玄関に入り廊下を歩く
居間に来ると大きな窓から風が通り、真っ白なカーテンを揺らしている
窓辺の日が良く当たる場所にぺたんと座り込む
暖かい風からはお日様の匂いがしそうだ
俺は体を丸めて床に寝てみた
そんな姿を見て叶さんが頭をポンポンと撫でる
「ん?なんですか、叶さん」
「今、耳がペタンって真横に伏せてるのが見えた」
「俺、犬じゃ‥‥」
「だよね。狼だもんロウは」
「もう狼じゃ無いですけど 」
頭に乗せられた叶さんの手を取り、頬を寄せる
叶さんは俺を抱き寄せキスをしてくれた
そのまま深い口付けを受け入れる
叶さんの手が腰と脚に回され抱き抱えられそうになり、慌てて床に手を付いた
「叶さん‥‥ここが良い‥‥です」
「え?でもここじゃ‥‥身体まだ痛いのに。寝室に行こうよ」
「‥‥ここでして?叶さん」
叶さんの首に手を回す
おでこにキスを落としながら叶さんは笑う
「わがままだな」
「知ってるくせに」
叶さんの膝に乗せられ、互いに服を脱がせ合う
まだ薄っすら残る傷跡に唇を這わせる
「‥‥‥‥んっ‥‥」
「ロウ、もう絶対僕が行くなって言ったらステイだよ?」
「‥‥はいっ‥‥ぁ‥‥」
「僕はロウが行くなって言ったら、何もかも捨ててロウの側を離れないんだから」
「‥‥それは‥‥嘘っ‥‥」
「行かないよ。ロウにはあんな思いはさせたくない」
「ごめ‥‥なさい」
俺の顔を覗き込み、瞼にキスをする
「謝る事じゃないよ。でも2度目は許さないから」
「あっ、あぁん‥‥あぅっ‥‥」
叶さんがゆっくりと動き出し、俺は叶さんの身体にしがみつく
奥を突かれるたびに漏れ出る声は、叶さんの唇に奪われた
太陽光の下
叶さんの存在をしっかりと感じながら溶かされていく‥‥
「こんなに明るかったらロウの全部見えちゃうね」
「叶さんが知らない所なんて‥‥もう無いでしょ?」
「そうだね。なんならロウが見た事ない所も知ってるけど?‥‥こことか‥‥」
「やぁん!そこっ、いっちゃ‥‥あぁっ‥‥」
「良いよ?いっても‥‥僕も限界っ‥‥」
叶さんが俺のものに手を掛け、動きを早めるまでもなく絶頂を迎えた
同時に大きく突き上げる叶さんも俺の中で果てた
自分たちが脱ぎ捨てた洋服の上でゴロゴロしている
ふと自分の頭に手を当て、本当に耳がないか確認してみた
「可愛かったね。耳と尻尾」
「また出て来たら‥‥どうしよう」
「次の満月は一緒にお月見しようか」
「お月見じゃ‥‥ならない気がするけどなぁ‥‥」
俺の後ろで横になっていた叶さんが、俺の腰に手を回し自分に引き寄せる
そして首筋をなぞった
「首輪買っとかないとな」
「えっ?俺叶さんの飼い犬?」
ソファーの上には叶さんが着ていたスーツ一式が脱ぎ捨ててある
その中からベージュの細いネクタイを引っ張り出した
そしてネクタイを俺の首に軽く巻きつける
「ほら、僕の犬になった。何か一言、言うことは?」
ニコニコ笑顔で手綱を握り、俺の顎を人差し指で掬い上げる
「あなたの‥‥」
俺は一言言ってネクタイを掴んで引っ張った
2人の距離がもっと縮まる
そして叶さんの耳元で囁く
「あなたの犬にして下さい」
END.
コメント
4件
わぁー!素敵です!終わり方最高! やはりあなたはすごいです✨