テラーノベル
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ある日、ヤマが久しぶりに家へ遊びに来た。
何気ない時間だった。
たくさん笑って。
たくさん話して。
私は次の日が仕事だったから、鍵をポストに入れておくように言って朝早く家を出た。
数時間後。
家へ帰ると、部屋の真ん中に大きな花束が置かれていた。
両腕で抱えても抱えきれないくらい、大きな花束だった。
隣には、一通の手紙。
震える手で封を開ける。
そこには、後悔が綴られていた。
何度も謝る言葉。
何度も綴られる「ごめん」。
そして最後の方に、一文だけ。
「もう一回出会ってしまって、ごめん。
こんなに大切な人を傷つけてしまった。」
その瞬間だった。
力が抜けた。
膝から崩れ落ちる。
ドラマみたいな泣き方なんか、するわけないと思っていた。
でも。
気づけば私は床に座り込んで、声を上げて泣いていた。
震える手で電話をかける。
「……戻ってきて。」
泣きながら、それだけを繰り返した。
電話の向こうでヤマは静かに言った。
「もう無理や。」
「高速乗ってる。」
「お願い……戻ってきて。」
何度言っても。
返ってきたのは、優しい声だった。
「今戻ったら、あかん気がする。」
少しだけ笑って。
「ずっと欲しがってた花、こんな形でごめんな。」
そこで電話は切れた。
その言葉を聞いた瞬間、思い出した。
付き合って初めてのクリスマス。
ヤマがくれた、小さなプリザーブドフラワー。
私は笑いながら言った。
「次は大きい花束やな。」
冗談のつもりだった。
でもヤマは、ちゃんと覚えていた。
私が、柄にもなく花が好きなことまで。
その日、私は人生で一番泣いた。
声が枯れるくらい泣いた。
もっと心が広かったら。
もっと早く許せてたら。
全部、違う未来になってたんかな。
そんなことばかり考えていた。
この恋を壊したのは、自分なんだと思い込んでいた。
コメント
1件
イツカさん、第46話を読ませていただきました……。 ヤマが「ずっと欲しがってた花」を、あんな形で贈るなんて。初めてのクリスマスの小さなプリザーブドフラワーが、このタイミングでこんなに重く響くなんて思いませんでした。「今戻ったら、あかん気がする」って笑いながら言うヤマの声が、脳裏に焼きついて離れないです。主人公が床に座り込んで泣く場面、本当に胸が締め付けられました。素敵なお話をありがとうございます。
東 桃子
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#溺愛
桜咲かな
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#溺愛
桜咲かな
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桜咲かな
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