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knhb
少しやっている表現があります。
ご本人様とは関係ありません
ある日の夜。
その日は任務終わりだった。
奏斗と雲雀は並んで歩きながら青い宝石を眺めていた。
「なぁ、奏斗。これなんやと思う?」
「えぇ?うーん。サファイア?」
「ぶっぶー。」
「じゃあ、タンザナイト。」
「違いまーす。」
「それ以外名前わかんない。」
「じゃあ、ヒントな。アメリカの?」
「わかんないって!」
「正解はベニトアイト。」
「そんな宝石あるんだ。」
「そう。アメリカ三大希少石の一つ。」
「え⁉⁉」
奏斗は驚いて宝石を見る。
一見普通の青い宝石である。
「何が希少なの?」
「こいつ、もう採れないんだ。今市場に出てるやつしかないん。」
「へぇ。」
そう呟いて奏斗はさっきまで話していた男のことを思い出した。
そいつはベニトアイトを奏斗の目に例えてほめたたえた。
だがまぁ、そいつに会うことや話すことは二度とないのだが。
「俺さ、思うんよ。こういう宝石って知ってるやつにしか価値がわかんない。でもきれーなんだよ全部。なのに価値が高いからって理由だけで争って奪い合って蹴落としあって。ほんとにみじめだよな。」
雲雀はそう言いながら何を思っているのだろう。
奏斗は雲雀からベニトアイトを取った。
「あ、おい!」
「なあ、雲雀。お前はこれが僕の瞳みたいだと思う?」
奏斗の瞳が青白く光る。
宝石のようで人を殺すための瞳。
この瞳のせいで何度苦しめられたか。
「奏斗の目はきれーだけど価値を決められるものじゃないし宝石よりも好きだよ。」
雲雀は優しく微笑んだ。
「それに奏斗はベニトアイトじゃなくて。」
雲雀の言葉がそこで途切れる。
奏斗に荒々しく口づけをされたからだ。
ついばむようなキスから舌が絡まるキスへと変わる。
口をはなすと雰囲気はもう夜のそれだった。
「その言葉の続きはベッドで聞かせて?」
―――――――
優しく包み込むように、だけどどこか荒っぽく。
お互いの傷をなめあうように夜は過ぎていく。
身体に赤い印をつけられ雲雀はそれをうれしそうに眺める。
奏斗はそれに欲情し、奥を突く。
二人がやがて果てると、目が合いまた二回戦目が始まる。
そんな夜。
これもまた、悪くない。
夜が明けて目覚めた雲雀は奏斗にキスをする。
そしてつぶやく。
「奏斗はベニトアイトやないよ。」
幼いころを思い出す。
かつて自分が英語を読み間違えた宝石があったこと。
その宝石は深い碧で一瞬にして心を奪われたこと。
そして、同じ色の瞳の少年に出会ったこと。
その少年の名前が自分が読み間違えた名前と同じだったこと。
その宝石の名前は