「ノム」
ープロローグー
この世界には、4つの種族が存在する。地上の人間共を支配する「神」、それに率いる「天使」、何の力も持たない「人間」、地獄より湧いて出る卑劣な「悪魔」。太古よりこの4つの種族は互いの領域を侵さず、平和に暮らしていた。しかし、何者かがが引き起こした事件により、その結界は解かれ、世界中で争いを始めることとなった。
これは、人間の子として生まれ、神を憎む少年の物語である。
第一話「捨子」
古い工場が建ち並ぶ町外れの郊外、そこは住む家も食べる物もない路上生活者が彷徨う、廃れた町だった。空はどんよりとして暗く、いつも黴の匂いがする。マントを羽織った老婆がひとり歩いていた。彼女はエリザと呼ばれている魔女である。エリザはこの町より西にある、のどかな人間の集落に住んでいる。普段は人間の時の若い少女の姿だが、護身のため化けているのだ。エリザの容姿はこの世の者とは思えない程美しい。肌は瑞瑞しく、透き通って、眩しい光のような白髪と、血のように赤い瞳をしている。ふと、エリザは立ち止まった。路地裏の向こうから微かに泣き声が聞こえたのだ。気のせいかと思ったが、先ほどよりもはっきりと聞こえる。子供の泣き声か。それにしてはまだ幼い。路地裏に住み着いた孤児はそう少なくない。落ち着かなくなり、エリザは少し様子を見てみることにした。灰色の町の路地裏はひっそりとしており、子供以外の人の気配は無い。顔を覗かせると、そこには…赤ん坊がいたのだった。まだ生まれて間もない裸の赤子が路地裏の地面に突っ伏している。エリザの気配を感じたのだろうか。少し泣き喚く声が小さくなる。親は見当たらない。置き手紙やゆりかごすらない。捨子だろうか。あまりにも不憫に思い、エリザは赤子を抱き上げる。浮き彫りになった肋骨が目に入る。捨てられてから、何も食べていなかったようだ。しかし、このように赤子が捨てられて、1日すら無事に生きられないだろう。この周辺には、人肉で育てられた獰猛な野犬がたくさんいる。もしかすると、捨てられてから半日すら経っていないのではないか。だとすると、この子供の親は意図的に飢えさせたと考えられる。なんということだ。我が子に対してのこのような仕打ち。エリザはもともと人好きで、思慮深い。だからこそ怒りで目が眩みそうになる。エリザはマントを引き千切って赤子を包み、家まで連れて帰ることにした。赤子は「うあぅぅ…」とムズがるような声を出しながら大人しくされるがままだ。安心しきっている。
「よし。行くぞ?」
赤子と目が合う。
赤子の瞳は瑞瑞しい林檎のような赤色であった。
コメント
2件
アドバイスありがと!ルビー良いね!(某人気漫画のパクりになるかと思って、渋々血にしました笑)楽しんでもらえたようで嬉しいです(*≧∀≦*)
血のような赤い瞳じゃなくてルビーのような赤い瞳の方が綺麗に感じると思います(主は、小説が面白過ぎて拗ねえいるだけなので血のような赤い瞳でも全然おkですてか好きです)