コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
ドルワの里唯一のお店である“鬼カワ☆ティリスちゃんマーケット☆”へフェルと一緒にやってきた私は、早くもばっちゃんと遭遇した。相変わらず神出鬼没で、いつの間にか私達の後ろに居てフェルを驚かせていた。
まあ、それは良いや。このお店で揃わないものは無いと言われてるし、ばっちゃんが居るなら話が早い。
「ばっちゃん、買いたいものがあるんだけど」
「何が欲しいのかな?ティナちゃん☆」
「大容量トランクが欲しい。それも最高級のものをね」
「おや?☆トランク?☆」
「うん、私が個人で持ってるのは容量が少なくて持ち運べる数も多くないからさ」
前回ジョンさん達が用意してくれた大量のお土産は、あれでも最初用意してくれた三割まで減らしたものみたい。しかもそれでも半分も持ち帰れなかった。前回はお試しだったけど、地球の食べ物は大好評。交易の品としては充分な価値があることが分かった。
じゃあ次はどうするか。取引する品を増やす必要がある。こちらが提供するのはトランクと医療シート。彼方は主に食べ物。後は少しだけ文化的なものも持ち帰りたいかな。
ばっちゃんみたいに興味を持つ人が居ると思うから。
「持ち帰る品を増やすつもりだね?☆」
「そうだよ、その為にも大容量のトランクが欲しい。予算は、昨日ばっちゃんがくれた100万クレジットだよ」
「豪快だね☆今うちに置いてあるトランクで最高級のものとなると……これかな☆」
ばっちゃんが見せてくれたのは、キャリーバッグみたいなちょっと大きなトランクだ。
「アリア」
『ライン社の最新モデルですね。価格は80万クレジットからです』
「へぇ、80万かぁ」
「高いですね、ティナ」
「その分容量もスゴいし頑丈だよ☆」
容量を見る限り……今の私のトランクが中型トラック一台分かな?いや、二台にはなるか。
で、最新モデルだと……うっわ、凄い。アリアが簡単に地球の輸送手段で例えてくれたけど、大型タンカー1隻分は入るよ!?理論上は小型のスターファイターが入っちゃう!
「もちろん生命体も収容できる素敵仕様だよ☆これで80万は安いんじゃないかな?☆」
「ばっちゃん、これより大きなものは?」
「あるにはあるけど、お値段の桁が変わってくるからなぁ。今のティナちゃんが買えるのはこれが一番高性能だと思うよ?☆」
「うっわ、高い!」
ばっちゃんがさらに高性能なトランクのカタログを見せてくれたけど、値段は一番安くて3000万クレジット。ただ容量は圧巻の大型タンカー二十隻分。
ただ、これだけの規模になれば国が管理してる大規模貯蔵庫として使われるのが一般的だ。間違っても個人が持つものじゃないね。
「じゃあ、そのトランクを貰うよ」
「私の顔をペイントしよっか?☆」
「誰の得になるのさ……んー、余ったなぁ」
予算は残り20万クレジットだ。使い切らずに貯蓄するのも手だけど……。
「そうだ、フェルは何か欲しいものは無い?プレゼントするよ?」
「こうしてティナと過ごせる毎日に勝るプレゼントはありませんよ」
天使かな?あっ、それ私だった。
「そっ、そう?何だか恥ずかしいな……」
「それより、新しい地球人のお友達にプレゼントを用意しては?」
「あっ、そうだった!カレンさんにお土産を用意しないと!ジョンさん達にも個人的なお土産を用意しなきゃね」
「ふふっ、一緒に選びましょう」
「あいあい、お手頃な品はこちらになりまーす☆魔法を使えなくても問題ない品物を集めてみたよ☆」
「商売上手なんだから」
フェルと一緒に地球へのお土産を物色。アリアの助言も貰いながらお土産を揃えた。
その日の正午、地球へ向けて出発するための準備を終えた私達は新しく買った新品のトランクに交易のための品と医療シートを詰め込んだ。
残念ながらトランクをトランクに納めることは出来ないから、ザッカル局長が用意してくれたトランクの積込だけは手動だったけどね。
軌道エレベーターにはお母さんが見送りに来てくれた。今回お父さんとは会っていない。お母さん曰く、今回の件で政府内部でも今後の方針について激しく議論が交わされているらしい。
魔法省に所属しているお父さんも多忙で、泊まり込みが続いてるんだって。何だか申し訳ないな……何かお土産を用意しないとね。
「じゃあお母さん、行ってきます」
「ええ、気をつけて。フェルも無理をしないようにね。アリア、二人をお願い」
「はい!」
『お任せを、マスターティアンナ』
お母さんと別れを告げて、私達はプラネット号へ乗り込んだ。地球への旅立ちはこれで三回目。今回は交易品と、お世話になってる人達への個人的なプレゼントを用意してる。
ただ、ハリソンさんへのプレゼントだけは用意できなかった。アリアとばっちゃんに猛反対されたのが理由だ。
私から受け取れば、それは異星人からの賄賂になる。
ハリソンさんはアメリカのトップ、その座を狙う政敵はたくさん居る筈だし、彼等にとって私の意思は関係無い……らしい。
ハリソンさんは今現在地球に於ける最大の協力者であり理解者だ、失うわけにはいかない。と言うのがアリアとばっちゃんの結論だ。残念ではあるけど、ハリソンさんに迷惑を掛けるわけにはいかない。
他の人は良いのかと聞いたら、政治的に影響力が少ないから良いんだって。まあ、ジョンさんとかは政治家じゃないしね。
「よぅし!行こうか!プラネット号発進!」
『プラネット号、発進します。目的地は地球、到着予定は現地時間で7日後です』
ドックの隔壁が開かれて、視界いっぱいに広がる星の海。何度見ても飽きることがない幻想的だけどセンチネルを初めとした危険が潜む世界。いつか思う存分冒険してみたいな。
アードの重力圏を抜けると、そこにあるのは巨大な三角形の建造物、ゲート。
「アードの重力圏を抜けました。ティナ、三回目ですね」
「うん、今度はフェルも一緒に地球を見て回ろうね」
『ゲートオープン、これよりハイパーレーンへ突入します』
「行ってきます」
一度だけ振り向いてアードを見る。この素敵な故郷、そして地球。絶対に仲良くさせてみせる!
次の瞬間、極彩色の空間が広がった。三度目の旅が始まったよ。