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夜明け前の寮は、深く眠っていた。
リンクは人気のない通路を通り、自分の部屋へ戻る。
扉を閉め、静かに息を吐いた。
取り戻した武装を、床に並べる。
ハイリアの盾。
獣神の弓。
古代兵装・弓。
そして、手にしたままのマスターソード。
どれも、無事だった。
リンクは一つ一つを確かめたあと、
ゆっくりと背中に装備する。
盾は背負い、
弓は肩越しに固定し、
剣は、抜ける位置に。
――もう、隠さない。
「……明日からは、これで行く」
この学校は、武器を没収する。
それは、守る手段を奪うという意味だ。
ならば、奪わせない。
ベッドに腰を下ろしたところで、
シーカーストーンが淡く光る。
《リンク、無事ですね》
ゼルダの文字。
『ああ。装備はすべて取り戻した』
《……先生たちと衝突したのですね》
『交渉した。でも、 返してもらえなかった』
短い沈黙のあと、ゼルダから返事が来る。
《あなたの判断は、間違っていません》
『そもそも、この世界は、生徒を守る構造をしていない』
《……でも、明日から武器を見せるのは危険です》
リンクは、背中の重みを感じながら答える。
『もう、隠す理由がない。 俺が武器を持っていることより、 あの人たちが生徒を追う方が、異常だ』
《……そうですね》
ゼルダの返事には、迷いと同時に、覚悟も滲んでいた。
《こちらでも、あなたの世界の中枢に近づいています。 あなたの行動が、この世界に“誤差”を生んでいる》
リンクは少しだけ目を伏せる。
『誤差でいい。 それで、誰かが生き残れるなら』
しばらくして、最後のメッセージ。
《……無事でいてください、リンク。 あなたは今、正しく“異物”です》
リンクは、口元にわずかな笑みを浮かべた。
「それでいい」
夜が明ける。
鐘が鳴る。
リンクは、武装を背負ったまま、寮の扉を開けた。
これまでと同じ制服。
これまでと同じ廊下。
ただ一つ違うのは――
もう、彼が“従うだけの生徒”ではないということ。
fpeは、完璧な円を保ってきた。
だが今、その中に一本の剣が差し込まれている。
円は、いずれ歪む。
リンクはベッドにふせる。
次に壊れるのは、どこだ。