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コメント
1件
めっちゃおもしろい作品をありがとうございます!ほんとに最高でした!
1話 推し
芸能事務所に所属して、初めての挨拶の日。
緊張で何度も手のひらを拭っていた緑は、とうとうその姿を目にした。
壁に寄りかかって、スマホをいじる一人の男。
少しくせのある赤髪と、ダボついたパーカー。
可愛いのに、醸し出す雰囲気は抜けるように色っぽくて、視線を引きつけてやまない。
間違いようもなかった。
憧れていた存在。
ずっと画面越しに追ってきた先輩。
「赤」だった。
「あの……はじめまして。今日から所属になった、緑です」
ぎこちなく差し出した手に、赤はちらりと目を上げた。
「あー、新人くん? ……よろしくね!。赤、って呼んでいいよ」
その声は、画面越しで何百回も聞いたはずなのに、
直接耳に届くと、まるで違う響きに感じられた。
握手した手が、ほんの少し長く離れなかったことに、緑は気づいた。
赤の指先が、なぜか少し熱を帯びているように感じたのは、自分だけだろうか。
そしてその後。
スタッフの何気ない一言。
「緑くん、次の企画で赤とペア組んでもらうから、よろしくね〜」
思わず固まる緑。
そして、その言葉を聞いた赤は、いたずらっぽく口元を緩めた。
「……ま、よろしくね、相方さん?」
緑の心臓は、一気に喉まで跳ね上がった。