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〇画廊・前(夜)
ガラス張りの壁越しに、多くの絵画が見える。
絵画を観るふりをして、画廊の内を覗く、梨紗と結城。
美人店員が、中年男に絵の説明をしている。
店の奥に、高級スーツを着た江藤(32)が立っている。
結城「アレが北条美花の愛人や」
美人店員が机に書類を並べ、中年男が椅子に座る。
書類を見て、ペンを取る中年男。
男の声「あ~~」
声に驚いて、横を見る梨紗と結城。
高岡(28)が、ガラスに張り付くように店内を見ている。
細身で背が高い。
黒いリュックを背負っている
高岡「サインしちゃダメだ」
中年男が書類にサインをする。
高岡「あ~あ……」
トボトボと歩き出す高岡。
高岡の後を追う結城。
慌てて結城の後を追う梨紗。
〇アパート・高岡の部屋(夜)
本棚に大量のコミック本が並んでいる。
高岡「汚い所ですが、座って下さい」
床に散らばる漫画雑誌を掻き分けて座る、梨紗と結城。
結城が『チキンレース』のコミック本を手に取る。
結城「コレ好きやねん。ホンマにアシスタントしてるんですか?」
高岡「はい。連載開始から」
結城「すごいな」
梨紗「高岡さんって、ドコの人?」
高岡「島根です」
梨紗「あぁ、砂丘のある」
結城「アホ! 砂丘は鳥取や」
梨紗「ボ、ボケやんか」
結城「ウソや」
高岡「関西の人、島根と鳥取の区別が付きませんね」
結城「いえ、コイツがアホなだけで」
高岡「彼女は区別が付いたんです。島根って良い所ですね、って」
結城「彼女? あの、画廊の店員?」
高岡「はい。彼女も漫画家を目指してるって。外大に通ってるけど、本当は漫画を描きたいと」
結城「上手いこと言うなぁ。クラッときた?」
高岡「はい」
梨紗「男は単純や」
結城「で、こんなこと言うたでしょ? 漫画の勉強をするために画廊でアルバイトしてるんです」
高岡「そ、そう」
結城「絵が売れたら、お金が貰えるんです。でもなかなか売れなくて」
高岡「その通りです。どうして判るんですか?」
梨紗「絵も鶏も一緒なんや」
結城「うるさい」
高岡「は?」
結城「気にせんといて下さい。で、買わされたんが、アレか……」
壁に、シュールな絵画が飾られている。
梨紗「意味わからへん。なんで、こんなん買うたんですか?」
高岡「いいと思ったんです。でも、よく考えたら三百万円は高いと、」
梨紗「ウソやん! これが三百万!!」
結城「値段は商売人の自由や。ワインを1000円で売ろうが、百万円で売ろうが、買うた者が納得したらしゃあない」
梨沙「高岡さん、納得したん?」
高岡「僕は美術大学を卒業してるんです」
梨沙「それで、ひっかかったん?」
高岡「変に知ったかぶりして……」
梨沙(あ、結城さんが言うてたな)
結城『下手に知識がある人ほど騙されやすいんや。プライド刺激したらイチコロや』
高岡「美術に詳しい友人に見てもらったら、素人の作品と言われて」
梨沙「そうやろなぁ……。で、支払いは?」
高岡「もちろんローンです」
梨沙「金融会社、指定されました?」
高岡「ドリーム金融の書類を出されて、」
梨紗「サインした?」
高岡「はい」
梨沙は結城を見た。
結城は、高岡が描いた漫画原稿を見ている。
結城「メッチャ上手いですね。いや、プロにこんなん言うたら失礼やけど」
高岡「まだ、デビューしてませんよ」
結城は原稿から目を離さない。
取り付かれたように絵を見ている。
結城「中国風の絵が得意そうですね」
高岡「中国史が好きで、絵でも影響を受けてます。唐時代の漫画を描きたいんですよ」
結城「へぇ、読みたいな」
高岡「でも当分は描けません。借金三百万円ですから、アルバイトしないと」
項垂れる高岡に、結城がズバッと言った。
結城「騙される方が悪いし、アホですね」
梨沙(えぇ!? 今ここで、それ言う? なんて男や!)
部屋が静まり返った。
梨沙(もう帰るしかないやん)
結城が高岡を真正面から見据えた。
結城「ドリーム金融に一泡吹かせたいと思ってます。チームに入りませんか?」
高岡「は? 一泡って、どうやって?」
結城「騙しには騙し。ドリーム金融社長、北条美花を騙します」
しばらく沈黙が続き、高岡が答えた。
高岡「僕にできることがありますか?」
結城「はい」
結城が手を出し、高岡が握手に応じた。
その上に梨沙が手を乗せる。
梨沙「そやけど、この三人で何ができるん?」
結城「三人ちゃう。ぜんぶで六人や」
梨沙「えっ、あと三人おるん?」
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