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先輩、近づきすぎ

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先輩、近づきすぎ

11 - 卒業式当日の再会 ーー名前を呼ばれるまで、終われなかった

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2026年02月08日

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卒業式の朝

体育館は、やけに広く感じた。

パイプ椅子の並ぶ音、ざわめき、知らない香水の匂い。

相馬は後ろの列に座り、三年生の背中を見ていた。

(……いる)

壇上から少し離れた位置。

鷹宮は、卒業生の列にいた。

制服はきちんと着ているのに、

立ち姿はいつもと変わらない。

(今日で、終わり)

そう思った瞬間、胸の奥が静かに軋んだ。


呼べなかった名前

式の途中、何度も名前を呼びそうになった。

でも、喉が動かない。

(今さら、何言うんだよ)

別れの言葉も、

引き止める資格も、

自分にはないと思っていた。

鷹宮は一度も振り返らなかった。

それが、いちばんきつかった。


卒業式、終了

拍手。

ざわめき。

写真を撮る声。

三年生が立ち上がり、動き出す。

(行くな)

そう思ったのに、足は動かなかった。

人の流れに紛れて、

鷹宮の姿が見えなくなる。

その瞬間、初めて――

本当に失うと理解した。


校舎裏

逃げるように、相馬は校舎裏へ向かった。

ここは、始まりの場所。

(……馬鹿だ)

拳を握りしめる。

「ちゃんと話すって、言えばよかった」

「引き止めたいって、言えばよかった」

声に出した瞬間、

背後から聞き慣れた声がした。

「今さら?」


再会

振り向くと、そこに鷹宮がいた。

卒業証書の筒を持って、

少しだけ息を切らして。

「……なんで」

「お前、ここ来ると思った」

その言い方が、ずるかった。

「俺さ」

鷹宮は視線を逸らす。

「式の間、ずっと考えてた」

一歩、近づく。

「行くって決めたの、俺だ」

「でも――」

そこで、言葉が詰まった。


本音の告白(鷹宮)

「一番怖かったのは」

「お前が、何も言わないことだった」

相馬は、何も言えない。

「引き止められたら」

「行けなくなると思ってた」

苦笑する。

「でもさ」

「引き止められないまま行く方が、もっと無理だった」

視線が、重なる。

「俺、卑怯だった」


相馬の本音

「……当たり前だろ」

声が震える。

「行くなら行くって言えよ」

「俺に、ちゃんと聞けよ……!」

初めて、涙が落ちた。

「置いてかれる側の気持ち」

「勝手に決めんなよ……!」

鷹宮は何も言わず、ただ聞いている。

それが、救いだった。


選択

しばらくして、鷹宮が言う。

「俺、進路」

「春からでも遅いって言われた」

相馬が顔を上げる。

「……は?」

「半年、こっちに残る」

「考える時間、欲しかった」

「お前と、ちゃんと話す時間」

沈黙。

風が、二人の間を通り抜ける。


名前を呼ぶ

「なあ」

鷹宮が、ゆっくり言う。

「俺と、続きやるか」

相馬は、しばらく黙ってから――

小さく、でもはっきり言った。

「……当たり前だろ」

鷹宮は、初めて泣きそうな顔で笑った。

「名前、呼んでいい?」

「……一回だけな」

でも、その声は拒んでいなかった。


ラストカット

校舎裏。

始まりの場所で、終わらなかった二人。

「卒業、おめでとう」

「……うるせ」

でも、手は離さなかった。

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