テラーノベル
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敵兵を容赦なく斬り伏せながら、セイカは前へ進んでいた。剣を振るうたび、肉を裂く感触と鈍い手応えが腕に残る。
ふと周囲を見渡す。
そこには、もはや生と死の区別すら曖昧な光景が広がっていた。
踏み固められた地に転がる無数の亡骸。
味方も、敵も――名も知らぬ者たちの屍が、折り重なるように横たわっている。
(……ここは、地獄か)
胸の奥が軋むように痛んだ。
だが、立ち止まることは許されない。
(考えるな。
生き残るために、討ち取るのみだ)
そのとき、背後から張り詰めた声が飛んできた。
「殿!
あそこに見えるは—–ジーファの将軍、ザイファであります!」
セイカの視線が、一点に定まる。
(ザイファ……)
その名と同時に、遠い記憶が胸を刺した。
—–母リーシ。
あの優しく、美しかった母を殺した男、ダリン。
そして、その倅。
(因果、というものか)
セイカは、深く息を吐いた。
恐れも、迷いも、怒りさえも、すべて胸の奥に押し沈める。
剣を携えたまま、彼は歩き出した。
転がる死体の間を。
血に濡れた地を踏みしめながら。
斬り結ぶ兵たちの喧騒を背に。
ただ一人、標的へと向かって—–。
ザイファのもとへ。
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