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「ねぇ、桜花ちゃん」「うん?」
「希導家の地下にいる者、会わせて」
「なんでそれを……!?」
「図書館で過去の文献漁ってたら知っちゃってね。鬼のことを今まで「おとぎ話」って言ってた自分への戒めかな。もし本当なら……」
「本当なら……?」
「それはその時考える」
「わかった。バイト終わったら、うちに行こ」
「うん」
俺が鬼道島の学校に通い始めて数日後。
「希導よ、例の件決めたか?」
「「例の件?」」
夕飯時、美咲先生が俺へ問うと、代わりに桜花姉と蕾さんが反応した。
現在俺たちは桜花姉の家で咲倉家の人たちも交えて夕飯を食べていた。
本日はインスタントラーメンである。
伯母さんと蕾さんがご飯の用意する余裕がないとの事で、急遽みんなでインスタントで済ますことにした。
ズズズ。
麺をひとすすぎ。
「そうですねぇ、ほとんど女の子しかいないなら、男出がいないと大変そうなので、引き受けますよ」
バンッ!
蕾さんがテーブルを叩く。
「待って!なんのことかわかんないけど、待って!」
「どうした、我が妹よ」
「どうしたも何も、守君の周りにこれ以上女の子近づけないで!」
「大丈夫だ、蕾。こいつの周りに女子がどれだけ増えてどれだけハーレム状態になろうが、最終的に選ばれるのはお前だ。な?」
ニコォと、黒い笑みを浮かべる。
絶対に蕾を選ぶよな?と圧を感じる。
「とりあえず、状況が掴めないので、説明お願いしまーす」
桜花姉が挙手。
「うむ、希導を生徒会にスカウトしていてな」
「へぇ、いいじゃないですか。こんな辺鄙な場所でも生徒会に所属してただけでも就活とか進学とか有利になりますしね」
「そうだけど、そうじゃないの!桜花ちゃん!」
「蕾さんが心配するのもわかるけど、本人にやる気があるのに、邪魔しちゃ悪いよ」
「う〜〜!」
蕾さんが唸る。
「ところで今の生徒会のメンバーってどうなってるんですか?」
構わず桜花姉が美咲先生に話題を振る。
「生徒会長が、橘眠子で、副会長が結城忍ゆうきしのぶ、会計が相川恵だ」
「ということは書記が空いてると」
「うむ、来年度で橘と結城は受験やら就活やらで引退だ。残るのは相川だけになる。引き継ぎのメンツは早めに選定しておかなければな」
「そっか!眠子ちゃんもう3年生か!」
パァっと蕾さんの表情が明るくなる。
「希導の恋人候補が1人いなくなるだけで、元気になるな、お前」
流石に美咲先生も引いていた。
「仮に相川を生徒会長、副会長を希導。会計に朝露を入れてあとひと枠空いているんだ。教師側としても頭を抱えていてな」
「いや、サラッとしおりん頭数に入れてますが、受験来週ですよね?」
「家庭教師役のあたいから見て、学力だけなら、合格は確定だ。問題の面接も練習段階ならほぼ完璧。あとは学校側が車椅子で通う生徒をどう迎え入れるか、だがな」
「しおりん、リハビリと勉強の時以外暇だって言ってましたが、そんなに成績いいんですね」
「うむ、あたいも正直驚いている」
「やっぱりすげぇな、あの子」
「ふん、あたいからしたら未来の妻である蕾のライバルが本人との距離が縮まるのが不安だがな」
「まぁ、最終的に決めるのはまもっちだし、今こんなこと話してても意味ないんじゃないですか?」
呆れ気味の桜花姉。
「待て、桜花よ。未来の親戚になるかもしれない相手の重要な議題なんだぞ?」
「それなら、あたしは紫音ちゃん推すなぁ」
「何故だ!?」
「現状鬼に1番理解あるのが、紫音ちゃんだから」
「それなら、あたしあれ見たs……」
「今は内緒」
「「?」」
桜花姉が、何かを言いかけた蕾さんの唇を塞ぎ、耳元で何事か囁く。
#逆ハーレム
紫倉 紫
115
#地雷系
トド村
423
「うん……」
よく分からんが、蕾さんが引っこ抜けた。
「まぁいい。これ以上ここで議論していても、埒が明かない。ご馳走様でした」
美咲先生は、両手を合わせて食後の挨拶をする。
「あ、どんぶりここに置いたままで良いですよ」
「いや、せめて流しに水は浸しておく」
「そこまで気を使わなくても……」
「いや、夕飯ご馳走になった礼だ」
桜花姉と美咲先生のやり取りを見守る。
「私ももう行くね。ご馳走様でした」
蕾さんも続き、キッチンに向かってどんぶりに水を貯めて階段を登っていく。
「なぁ桜花姉、さっき蕾さんが言いかけたことって?」
「さぁ?なんのこと?」
しらばっくれていた。
「さぁて、合格発表だー!」
数日後、しおりんの受験は無事終わり、今日は合否の発表の日だ。
相変わず桜は散っては咲いて散っては咲いてを繰り返していた。
俺と桜花姉と蕾さんは彼女を学校まで送っていた。
車椅子係は俺だ。
一応、歩行器があれば、1人でも歩けるようだが、長距離移動には向いていない。
学校に着き、出入り口に合格番号の記された紙が貼られていた。
合格番号は3つ。
今年は5人受けたとの事だが……。
「613、613……あった!」
自身の受験番号とポスターを交互に見て番号が一致していた。
「あった!あったよ!まもっち!みんな!」
「「「おめでとう!」」」
俺たちは、同時に祝福の言葉を浴びせた。
「ふっふっふ、まもっちよ、約束は覚えてるかい?」
「えぇと、スペシャルミラクルジャンボパフェとやらを奢ればいいんだっけ?」
しおりんが合格したら、小学生が言い放ちそうなパフェを奢る約束になっていた。
「じゃあ、あたしたちの分もよろしくねぇ」
「やったー!」
桜花姉と蕾さんが乗っかる。
「あんたらは、自腹」
「いいじゃん!」
「守君ってケチだよね?」
「あれめちゃくちゃ高いんすよ!?それを4人分学生に払わせるなんてあんたら悪魔か!」
「かーみか、あーくまか、鋼鉄のカイザー♪」
「ズババンズババン!いなーずまでてーきをー討てーー♪って何歌わせるんですか、自分で払ってください」
「酷いよ、守君!」
「すごいよ、マ〇ルさん!みたいなノリで言わないでくれます?」
「ウェーン!桜花ちゃーん!守君がいじめる!」
「ケチくさいよねぇ」
「ねー!」
蕾さん、桜花姉、さらにはしおりんまで俺を責める。
「俺が悪いの!?」
「「「うん」」」
「あんたら鬼か!」
俺の怒声が響く。
「あっはは」
「ぷっくく」
「けっけけ」
蕾さん、桜花姉、しおりんが同時に吹き出す。
「冗談だよ。あたしたちはあたしたちで別で注文するよ」
桜花姉が切り出す。
「うんうん。守君ってからかいがいあるよね」
「そこがまもっちの良いところ」
「わかる!」
しおりんと蕾さんはふたりで納得した。
こうして、しおりんの合格祝福会は、みんなで楽しんだ。