テラーノベル
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皆様、こんにちは。芽花林檎です。今回は短編となっております。よろしければ、ご覧ください。
気が付くと、私はそこにいた。あたりを見回すと、ただただ綺麗な世界が広がっていた。瑠璃色をした綺麗な青空、綿あめのよにふわふわした雲、光輝燦然と輝く太陽。どこまでも広がるその景色に、私は感動をしていた。そこへ、誰かがやってきた。(あれ、独りかな。)私はそう思った。その、私のほうへ近づいてくる人は、ゆったりとした足取りで、前をしっかりと見据えて、悠然と歩いてきた。しばらくして、私のところまで来ると、それ、はこんなことを言った。「お嬢様、ここにいらしたのですか。さあ、早くおいでになってください。私がご案内いたします。お待ちしておりました。」そして、私の前を歩きだした。私はよく状況がつかめていなかったものの、それ、に導かれて歩き出した。それ、は、外見はどこかエンジェルのようで、頭の上に金のわっかを乗せ、これが周囲に光を放っていた。それ、は完ぺきな所作で歩き、人間味こそはなかったものの、とても美しかった。肌が半分透けて見えるような布を身にまとい、それが太陽の光を柔らかく反射して、まるでそれ、周辺が穏やかな光で包まれているかのようだった。
私は、それ、に従って歩き続けた。かなり長いこと歩いたのだろう、足が棒になってきた。息も切れてきたし、光輝燦然と輝く太陽は私たちを容赦なく照らし続け、汗が首を滴った。それでも、一切景観が変わらない。ただただ広く、白い雲と瑠璃色の空が続くだけで、私はどこに向かっているのかさえも分からなかった。ところで、なぜこの….うーん、エンジェルかなぁ、エンジェルは私のことをお嬢様と呼んだのだろうか。私のことをもしかすると知っているのだろうか。そんなことを不思議に思いながら、さらに歩くこと数時間。私はさすがに疲れてきて、休憩したくなってきた。それにしても不思議だな。こんなにも歩いているのに、進んでいる気が全くしない。きっとこれは、周りに何もなく、ただ綿あめのような雲のみが存在するからであろう。でも、なぜ私は雲の上を歩いているのだろうか。歩けるのか、雲の上なんて。というか、なぜそもそもここにいるんだ。こんな場所に着た覚えはない。しかも、こんな場所どうやって来るんだろう。…….ん?どうやって、来るか?どうやって来るか、と考えているということは、自分はもしかするとこの場所に来る前にどこかにいたのか?そうだよ、こんな場所に過ごしているわけない。第一、この場所の存在を不思議に思っているわけだし。でも……あれ、思い出せない。記憶がない。記憶がないというか、記憶が塗りつぶされているような感覚。ここに来る前のことを、頭の中から消されている?あれ、全然思い出せない。そう言えば、私は何をしていたんだろう、ここに来る前は。あれ……?まったく思い出せない。記憶の中を探ってみても、ただ空白だけが残っている。何か、私は大事なことを忘れているのか?でも、忘れている、を裏付けることは何もない。ただ感覚に依拠している。そんな不信感を持っていたところだった。誰かが走ってくる音がした。遠くから、誰かがすごい勢いで走ってくる。今はまだかろうじて見えるけれど、エンジェルは前へどんどんと進んでいったので、私はひとまず前へ歩くことにした。
一体全体、どこへ向かっているのだろう。すると…….後ろから、声、がした。えっ…声?なんでなんでなんで?ここ雲の上なのに、人が走ってくることあるのか?ありえない!でも、その声、は確実に私に迫ってきた。私は、恐怖心と、その声の主が知りたいという少しの好奇心から振り向いた。すると、私は腰を抜かすかと思った。本当に驚いた。その声の主は……私の、夫だった……
「すーくん!何でここにいるの?というか、どうやってここに来たの…? 」私は切羽詰まって聞いた。すると、すーくんは、「夢から早く覚めて!いいから早く!ここは夢の世界だよ!いま、あなたは眠りに落ちているんだよ!早く起きて!そうしないと、あなたは…..」私は、状況が全く理解できなかった。(なに、夢?私は今、夢を見ているの?これ、夢の世界の出来事なの?妙に現実感があるよ?私、今この世界に存在しているっていう感覚が、ある気がするもの。何で?これ、夢なのかな?)そんなことを思っていると、エンジェルが振り向いた。「お嬢様、だれとお話しなさっているのですか?そこに誰もいませんよ?」冷酷で光を失った瞳が、私のほうを向いた。え、この人にすーくんは見えてないの?どいうこと?私は少しぎょっとしたが、「いえ、何でもない。気にしないで。」と言っておいたが、すーくんは、「いいから、早く目覚めて、ここは夢の世界なんだってば、早くしないと……あなたは消えてしまう!!」そう言われた瞬間、私は、深層意識に光が差すような感覚を覚えた。目の前の世界が揺らぎ、だんだんと視界が暗くなっていった。ゆっくり、落ちていく感覚がした……
「はっ!!はぁ、はぁ、はぁ…. 」私は飛び起きた。気が付くと、そこはいつもの部屋だった。少し薄暗い、私と夫が住む部屋。午後二時過ぎだった。私は、良かった、目が覚めたんだと思って一安心したが、あの夢について少し考えていた。夢にしては、どうも生々しくて、あの光景が脳裏に焼き付いているのである。あのエンジェルとかいうのは何者なんだろうか。そして、なぜすーくんはあの世界にいたのだろうか。そもそも、なぜ私はあの世界にいたのだろうか。すると、居間から、かわいらしい声がした。
「あ、ももたん起きたの?おはよう。もうずいぶんねたねぇ。二時間くらい寝ていたよ。本当におねむさんだねぇ。」あ、
あんずちゃん来てたんだ….あ、そういえば、あんずちゃんたちの夫婦とお茶会しようって言ってたっけ。でも、次の言葉に私は驚いた。「あ、お帰り。ねぇ、すーくん。すーくんさっきまでどっか行ってたけれど、どこ行ってたの?」振り向くと……
私の夫のすーくんが、いつも通りの笑みを浮かべて玄関に立っていた。「…あ、僕?僕はね、さっきちょっと空の上まで行っていたんだよ。」少し冗談じみた口調で言った。すると、「すーくんってば、冗談は言わなくていいのよ?もう、本当に面白い人だね。」とあんずちゃんが返した。「あは、ごめんごめん。」え、えぇ?雲の上、本当?何を言っているんだ?すると、さっきまでの夢が頭の中によみがえって、怖くて震えた。え、何、本当に私はさっきまで雲の上にいて、すーくんも雲の上にいたの?あれが本当のできごと?でも何で?そんなことありえるわけないよ。現に、雲の上だよ?しかも、おかしいよ。何でそもそも私はそんなところにいたのさ。でもあの夢には妙に現実感があった。生々しい感覚が、私の心の奥底に沈み込んでいる。あれを夢だよと片付けるのには少し無理がある気がした。おかしい。そんなわけないよ。でも、すーくんが自分の言った言葉を否定しなかった。あんずちゃんの冗談でしょに対して、ごめんとしか返していない。雲の上に行ったという自分の発言を、否定していないのだ。おかしい、そんなわけない。あの出来事が現実なんて……でも、やはり…あれ、どいうことだろう..?
すると、すーくんが私のほうへと近づいてきた。冷汗が背筋を流れた。私の体は小刻みに震えていた。いつも通りの笑顔で近づいてきたすーくんは、私にこんな言葉を放った…….
「よかったね、ももちゃん。「こ、こ」、に帰ってこれて。エンジェルたちの「玩具」、にされずに生きて帰ってこれて…….」
その瞬間、世界が音を失った。
2026/03/10 芽花林檎
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