テラーノベル
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「隊長、いや真澄さん。好きです」
「馨、それあと何回言ったら冗談になるんだ?」
「何回言っても冗談にはしませんよ」
「チッ。今年の春は、皆いかれてやがる」
「そうですね、無陀野無人さんに花魅坂京夜さん、それに一ノ瀬四季くんがライバルですからね」
「春だからっていかれんのもどうにかして欲しいぜ」
「それで隊長、仕事の話ですが……」
「聞かせろ」
俺、淀川真澄は最近モテるらしい。モテてる相手が全員男だっていうのが腹が立つ。俺だって男なんだからハリウッド女優とまではいかなくても女性にモテたい。いや、それはそれで面倒くさいな。そして俺に告白してきている奴のなかで一番まともなのが馨だ。好きだの愛してるだの言うが、仕事はきっちりとこなしていて公私の区別はつけている。無陀野みたいに無理強いしてくることもない。ちょっと言ってることはアレだが、仕事はしっかりしているので問題ない。
「隊長はしっかりしてくださいね。また無陀野さんが休暇を申請しているようです」
「ああ? こっちに来るつもりなのか。めんどくせぇ」
「間違いなく無陀野さんは隊長に会いにきますね」
「俺も休暇を申請していいか?」
「残念ながら仕事がつまっていまして、僕だけではさばききれません」
「よしっ、無陀野が来たら教えろ。俺はその間、姿を消す」
「仕事はしっかりしてくださいね」
「当たり前だろ」
鬼と桃の戦いで一番危険なのは偵察部隊だ、俺は仕事はきっちりやる。桃に捕まるようなへまはしないし、たとえ貞操の危機でも休めないなら働くことにしている。
「そういうところ、愛してますよ」
「……愛だの、恋だの、好きだのない世界に行きたい」
「そんな世界はありません、はい仕事の資料です」
「暴走化した鬼が桃に捕まらずに逃げてるのか」
「暴走も落ちついたんでしょう、どこかに隠れているはずです」
「一般人の被害はなし、なら保護する必要があるな」
「まだ十歳の子どもですし、そんなに遠くには行っていないはずです」
「最後に目撃された周辺を探してみるか」
鬼の子どもが両親を桃に殺害されて暴走したらしい、桃は殺したが一般人への被害はでてない。ならその鬼は保護対象だ、できれば見つけ出して保護しなければならない。俺は夜の練馬のその子どもの鬼が最後に目撃された場所へといってみた。監視カメラを上手く避けて、俺などう逃走するかを考えてみた。練馬の桃も動いていた、桃がいるところでは血を舐めて姿を消した。結局、時間はかかったがどの子どもを見つけ保護した。その時、馨から連絡が入った。
「無陀野さんが僕の古本屋にきました、あなたを諦めるよう脅し文句つきで」
「そうか、子どもは保護した。俺とこの子はしばらく姿を消す」
「分かりました、子どもに優しくしてくださいね」
「ガキだからって甘やかしたりはしねぇぞ」
俺はそう言って馨との通信を切った。そのまま無陀野が知らない隠れ家に移動して子どもと隠れ住んでいた。無陀野は結局俺に会うことなく羅刹学園に帰った。だから馨に子どもを引き渡したんだが、このガキ最後にとんでもないことを言いやがった。
「命を助けてくれてありがとう、好きです。結婚してください」
「ガキが十年経ってから言いやがれ」
この件で馨は呆れたように俺を見ていた。俺は何もしていない、子どもに特別優しくした覚えも無かった。
「真澄さんはやっぱり好かれますね」
「うるせぇ、春だからってガキまでいかれてんのか」
「貴方が魅力的だからですよ」
「相手が全員男だっていうのが納得いかねぇ」
「これも仕事のうちなんです? 隊長」
「ガキに好きだといわれることがか、仕事じゃねぇだろ」
俺がそう言うと馨は幸せそうに俺を見て笑っていた。馨にとっては今は告白を受け入れてくれなくても、俺が元気であればそれでいいらしい。欲のない奴だ。
「春が早く終わらねぇかな」
コメント
1件
感想、読んだよ…「これも仕事のうちなんです?」っていう馨くんの口調がもうね、ちょっとやらしい感じで好き🤍 真澄さん、全編通して男に好かれる体質なの笑っちゃうんだけど、最後のガキにまで「結婚してください」って言われる流れ、まじでお仕事通り越してるよね…。でも馨くんが「元気ならそれでいい」って笑ってるのが、逆に重くてじわじわくる…切ない春だね🥀
アキナヌカ

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