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鬼の咆哮が、山の奥に響き渡った。
桃太楼は一歩後ずさる。
心臓が爆発しそうなくらいバクバク鳴っている。
「む。無理だって! 絶対無理だって!」
「大丈夫! 俺が前に出る!」犬枠のケンケンが両拳を構えた。
彼は元格闘技経験者。
俊敏な動きで鬼の足元に飛び込み、ローキックをかました。
ゴッ!
「うおぉ!?」鬼が体勢を崩す。
「ナイス犬!」
「ワンワン!」
続けざまに猿枠のモンキーが叫ぶ。
「よっしゃあ! リスナーのみんな、今からリアル鬼退治始めるぞぉぉ!」
GoProを装着したスマホを頭につけ、まるでFPS実況のように鬼に接近する。
「バーチャルじゃなくリアルモンスター討伐だぜ! ドネート頼む!」
「実況すんな! 戦え!」桃太楼が叫ぶ。
その横で、キジ枠の紀子は冷静だった。
「弱点は目と耳。光と音に敏感なはずです」
そう言って取り出したのは、大音量のBluetoothスピーカー。
「え、それ持って持ってきたの?」
「はい、推しのライブ音源を爆音で」
次の瞬間、鬼の頭上で爆裂サウンドが鳴り響いた。
ドッカーン!ギターソロ!
「ギャアアアアア!」鬼は耳を押さえ悶絶する。
「おい、マジで効いてるぞ!」
だが鬼はタフだった。
立ち上がり巨大な棍棒を振り回す。
「うわああああ!」
桃太楼は必死にしゃがみ込む。
棍棒が頭上をかすめ、地面がクレーターのようにえぐれた。
「む、無理! やっぱ無理!」
「お前が主役だろ!」
ケンケンとモンキーが叫ぶ中、紀子が冷静にスマホを操作する。
「桃太楼さん、例の回答を思い出してください!」
「どれだよ! “豆ぶつけろ“過!?」
「はい!」
仕方なく、桃太楼はリュックからコンビニの節分豆パックを取り出した。
「やけくそだぁぁぁ!」
バラバラバラッ!
豆が鬼の顔面に直撃する。
「ギャアアアアアアアア!」
まさかの効果。
鬼がもんどりうって倒れた。
「え、マジで効いたの!?」
「知恵袋すげぇぇぇ!」
「ネット民の知恵、侮れないですね」
桃太楼は呆然と立ち尽くした。
本当に鬼を倒してしまったのだ。