テラーノベル
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ラウールが誕生日を迎えたその瞬間は、東京は朝の7時。
本当なら一番にお祝いして欲しかった愛しの阿部は、朝番組の収録真っ最中だ。
前日の夕方に『日本時間でごめんね、お誕生日おめでとう。時間合えば電話しよう』とメッセージが来ていたが、自分もオーディションに気が向いていたのでスタンプ1つしか返せていない。
時間を作ろうと思えば作れたけれど、出国前に『俺とのやり取りは気にしないで、そっちに集中して』と言ってくれたのでありがたくお言葉に甘える事にした。
でも、今日はオーディションの合間に時間ができる。阿部も収録が終わっている時間だし、スケジュールアプリを見ても予定はない。
その時間に阿部が眠っていない事を祈りながらメッセージを送っておいた。
日本時間、19時。
ラウールは昼食のクロワッサン、阿部は1ピースのショートケーキに『2』のろうそくを2本。
ビデオ通話を繋いでラウールが『せーの』でふーっと息を吹きかけ、阿部が見えないところからろうそくを吹き消した。
現地の天気や美味しかったものなど、敢えてお互い仕事の話題は封印しながら食べる。
それでもメンバーの近況については気になるところで、どうしても話題に出た。
「昨日、しょっぴー20周年だったんでしょ。俺2歳かぁって思っちゃって」
「確かに。それで一緒にグループ組んでね。そのラウールを好きになっちゃった俺もそう思うと不思議」
「阿部ちゃんは年上だけど年上って感じしないなぁ」
「それ、褒められてる?」
「褒めてるよぉ、阿部ちゃんは可愛くて優しくて素敵な人♡」
「もう」
照れたように目を逸らしながらケーキをフォークで大きく切って雑に口に運び、少しこぼす阿部。
そういうとこだよ、と思うと頬が緩んでしまう。
お互い食べ終わった頃、ラウールは阿部に『ビデオ切って、イヤホンつけて』と首をかしげながらねだった。
お願いをする時にあざとい仕草をすると、阿部が年下の自分可愛さに言う通りにしてくれるのをラウールは知っている。
今回も多分に漏れず、阿部は『うん?わかった』とビデオをオフにした。
「いいよー」
と聞こえてきたので、イヤホンの装着が済んだらしい。ラウールは見えていないのを知っていながらにっこり笑うと、通話口に唇を近づける。
「『亮平くん』、愛してるよ」
「……っ」
ほんの小さく、だが阿部が息を吐いたのが聞こえた。続けて、通話口に何度もキスをしてリップ音を聞かせる。
「はふ…ちょ、ラウール」
「なぁに?」
「んっ……」
低い声で囁いて煽るとついに阿部が声を漏らした。大満足のラウールがふっ、と笑う。
「阿部ちゃんほんと可愛い。帰ったら、たくさんしようね?」
「…年上をからかうんじゃない」
「からかってないよぉ、愛してるからするの♡」
スマホの向こうから阿部のため息が聞こえる。
「そうだね。待ってるよ、悔いのないようにね」
「ありがと。Tu es mon trésor」
「え?」
「ふふっ。またね」
通話を強引に切り、メッセージアプリにさっきと同じ言葉を送っておく。
意味を調べたんだろう、少しして阿部からは『俺も』と返ってきた。
それをラウールは愛おしげに見ると、画面にそっと口づけた。
終
コメント
14件
可愛くてかっこいいラウにきゅんきゅんでした😍あべちゃんの自然な感じとか、二人の雰囲気がとても良い〜💓 そして私もハートマークないの全然気が付いてなかったです😂
おっと〜〜! この、二人か!
やばーい可愛い×可愛い最強🤍💚 でもみちるさんの🤍💚って🤍がたまにかっこよすぎて🤦🏻♀️🤦🏻♀️🤦🏻♀️ってなる