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青桃短編集

16 - 「泣きたいくらい 世界の片隅 逃げ出したい」

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2025年06月10日

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【お願い】


こちらはirxsのnmmn作品(青桃)となります

この言葉に見覚えのない方はブラウザバックをお願い致します

ご本人様方とは一切関係ありません


ワードパレットでリクエストいただいた3つの言葉(サブタイトルになってます)を本文中に使用してのお話になります

白視点→桃視点



「泣きたいくらい 世界の片隅 逃げ出したい」




うちのリーダーは、びっくりするくらい弱音を吐かない。

体力も底なし、病んだこともある?ってくらいメンタル強者。

界隈を騒がせて多少炎上した時ですら落ち込んだのはほんの一瞬で、すぐに「どう対処すべきか」と前を向き始めたのが印象的だった。


ないちゃんは、全てから逃げ出したいって思ったことないんかな。

多分、僕の方が心は弱い。

この活動を続けていて特に最初の頃は苦しいことが多かった。

世界の片隅に取り残されてしまったかのように、ぽつんと立たされている気持ちになることがあった。

足場ががらがらと崩れ去ってしまったなら、自分も底なしの闇に落ちていってしまうんだろう。

それすら誰にも気づかれることなく、ただ消えていくだけの存在。

そんな風に心が病んだ時期があった。



今でこそリスナーさんの顔を思い浮かべればそんな馬鹿な考えは生まれなくなった。

だけど当時は、「もう活動をやめてしまいたい」そんな言葉すら脳裏をよぎったこともある。


だけどないちゃんは、当時から弱さを見せることがなかった。

リーダーとして…今では社長としても、メンバーや社員たちに毅然とした背中を見せなくてはいけないと思っているのかもしれない。

疲れていそうなところも見たことがないし、休んでいるところもあまり見かけない。

常に動き続け、体力は無尽蔵なのかと妙に感心と呆れが入り混じる。


泊まりの時でも最後まで起きて何やら仕事をしているし、朝も一番早くから活動し始めていることが多い。

そう言えばないちゃんの寝顔もほとんど見たことがないかもしれないと思った。



「ないこやったらさすがに今日は疲れたんか、さっき寝とったで」



ゆうくんに世間話程度にそんな話題を振ったら、意外な答えが返ってきた。

さっき持たされたばかりの次の企画の資料を手にそんなことを言う。



「え、マジ? 珍しくない?」



最近休みらしい休みもなく働き続けていたないちゃん。

疲れが溜まっていてもおかしくはないけれど、仮眠と言えど事務所で寝てしまうなんて珍しい。



目を丸くした僕の横で、いむくんが「見に行こ見に行こ。おもしろそ!」といつもの笑顔を浮かべていた。






コンコンと聞こえるか聞こえないかくらいのノックをする。

寝ているなら邪魔をしないようにと、そっといむくんと社長室の扉を開いた。



こちらのそんな気配に振り向いたのは、ソファに座っていたまろちゃんだった。

ないちゃんしかいないと思っていたから、少し意外で目を丸くする。

「あれ、ないちゃんは?」と言いかけるとまろちゃんは自分の唇に「しっ」と人差し指を立てた。



そして反対側の手でちょいちょいと下を指差す。

それを目線で追うと、ソファに横になってまろちゃんの太腿に頭を乗せたないちゃんの姿が映った。

同じようにその光景を目に留めたいむくんが、「…っ!!!」と声にならない歓喜の声を上げて僕の肩をばしばしと叩く。

…ほんまに、こういうん好きやなぁ。



「ないちゃん寝てんの? 珍しいね」



ソファにそっと近寄りながら、いむくんが言った。



「よっぽど疲れとったんやろ。なんか急ぎの用事? ちょっと寝かしてやってほしいんやけど」



まろちゃんはないちゃんのマネージャーか何かか? 

苦笑い気味にそんなことを思いながら、僕といむくんは首を左右に振った。

おもしろそうで見に来ただけ、とは、さすがにこのマネージャー兼番犬には口が裂けても言えない。



「それよりまろちゃん、めっちゃ仕事しづらそうじゃない?」



代わりにそんな言葉を投げかける。

ないちゃんに膝枕をした態勢で、まろちゃんはかなりの前傾姿勢でテーブルに置いたノートPCに手を伸ばしていた。

そのせいで猫背がいつもよりひどい。



「しづらいに決まっとるやん」



唇を歪めて答える割に、ないちゃんの頭をどかそうとはせんってわけね。

後ろから覗き込むと、すぅと静かな寝息を立てるないちゃん。

疲れてぐったりしているようには見えない横顔。

なかなか今まで見ることのなかった彼の寝顔は、幸せそうに微かに笑っているようにも見えた。





「んぁっ、今何時!?」


文字通り弾かれたように飛び起きた。

上体を起こし、慌てて時計を探す。

寝起きで覚醒しきらない頭では時刻を捉えることも一苦労だ。

壁にかかっているはずの時計も目に入らずまろの方を振り返る。

ソファに座って仕事をしていたらしいまろは、キーボードを打ちながら苦笑いを浮かべた。



「15時くらい」

「え!? 俺5分で起こしてって言ったじゃん!」



記憶にある時刻から、余裕で1時間は経過している。

その間ずっと膝枕させていたのかと思うと想像しただけで自分の足が痺れてきそうだ。



「あぁ、そうや。しょにだとほとけが一回来たで。用事があったんか知らんけど、ないこが寝とるん珍しいって言うて戻っていった」

「『珍しい』? …あー、そっか」



確かに、俺はどちらかというと体力が無限かと思うほど動けるタイプだし、泊まりなんかの時は最後まで起きていることが多い。

子供組は俺が眠っている姿を見ることはあまりないかもしれない。



「寝顔見られたってこと? もうお嫁にいけないじゃん。泣きたいくらいはずい」



ソファに座り直して、「うーん」と大きく伸びをしながら心にもない適当な発言をする。

PCの画面を見据えたまま、まろは大真面目な顔で小さく首を傾げた。



「嫁にいく気やったことにびっくりなんやけど」

「冗談じゃん、冗談」



肩を竦めて答えながら、俺はソファに横向きに座ったまま「えい」と後ろに体重を預ける。

まろの腕の辺りにのしかかると、思うようにキーボードを打てなくなったらしく「ないこ邪魔ー」と間延びした声で文句を言ってきた。



「それに、どうせもらってくれるのまろだしね」



背中を預けたままニヤっと笑って言うと、同じようにからかうような笑みを漏らされたのが後ろ向きでも感じ取れた。

いつもより楽しそうに弾ませた声が返ってくる。


「飽きたら返品できる?」

「できるわけないだろ」


被せるように即答して、もう一度体を起こす。

「よっと」と呟きながらくるりと向きを変え、今度はまろの方を向いた。



「そもそも飽きさせないと思うけどね、俺」



口角を持ち上げて笑むと、腕を伸ばしてその首に巻き付ける。

「仕事中」と怒られるかと思ったけれど、どこまでも俺に甘いこの恋人は呆れたように笑いながらもそっと唇を重ねてきた。



「…まぁ、飽きる気はせんよな、一生」



キスの合間にそんなことを呟くものだから、俺はふふ、と声を出して笑みを漏らした。




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