吐く息の白さと
降る雪の多さに嫌気が差す
子供の頃は、雪が降っただけで嬉しかったハズなのに
今は不便さや不快感を抱くようになってしまった
どうして変わってしまったんだろう
急ぎ足で会社までの道を歩きながら
1日のスケジュールを思い浮かべる
💖(9時から小説家の先生と打ち合わせで)
ビルの隙間から差し込む光を、眩しそうに見つめる横顔
💖(10時からは後輩の書いた記事のチェック)
少し先を走っては転ぶ、危なっかしい姿
💖(10時半からは外回りに行きたいよな、、、)
どのお店に入っても
何をしていても、幸せだと微笑んでくれた
泣き顔なんて、見たことがなかった
💖「、、、、」
(ああ、、、、また余計なこと、考えてる)
オレはこの街が嫌いだ
この場所にいると、キミを思い出してしまうから
それでもオレがこの街から離れられないのは
ここにいれば、いつかキミが帰ってきてくれるんじゃないかと
期待しているからだと思う
スマホで時刻を確認する
余裕を持って家を出たせいか、まだ出社までには十分に時間があった
オレは駅付近にある、ケヤキ並木の続く通りへ足を運ぶ
そのまま5分ほど歩き進んだ所で
懐かしい光景が視界に入った
つい2年ほど前まで、オレはここにある小さいなカフェでバイトをしていた
そこにお客さんとして現れたのがーくまーだった
💖(初めて会った時、くまは泣いてたよな)
過去を思い起こしながら
ボンヤリと店内を覗き込む
いそいそと働く店員に、見知った顔はない
オレが働いていた頃にお世話になった店長も
身体を壊して病気療養中だと聞いた
今は、店長さんの弟が変わりをしているんだとか
オレの視線の先は、自然とあの席へ向く
かつて彼が座っていた場所
💖「、、、は?」
なんとなく眺めただけだった
けれど目の前の光景に、オレは釘付けになる
💖「嘘、、、だろ、、?」
あまりの衝撃に、自然と声が漏れていた
あるハズのない姿が
待ち焦がれ続けた横顔が、そこにあった
オレは、逸る気持ちを抑えきれず、店内へ入った
店員「いらっしゃいませー、何名様ですか?
、、、、あのー?、、、、、、、
ちょ、ちょっと、!」
対応する店員の声を無視し、彼の座る席まで歩くと
スマホの画面を見つめる彼に向かって
声のボリュームも気にせず、叫ぶ
💖「くま、、!!!!」
スーツを着ているからだろうか?
あの頃のあどけなさは感じられなく
最後に会った時よりも、髪の色も随分変わっている
彼の姿は、自分の知らない綺麗な大人な男性のように見えた
オレの声を聞いたくまが、ゆっくりとこちらに視線を移す
💖「くま、、、ずっと探してたんだぞ!?
今までどこに行ってだんだよ!?
急にいなくなったりして、、、」
彼を一目見ただけで
思いが言葉になって溢れてくる
表情を変えることなく、彼はボンヤリとこっちを見ている
多少雰囲気が変わってこそいるが
今、オレの目の前にいる男性は
2年前にこの場所で出会い
付き合うことになった男の子
1年前、なんの前触れもなく
目の前から姿を消した、オレの彼女
くまに違いなかった
店員「すみませんお客様
周りのお客様の迷惑になりますので、店内ではお静かに
とりあえず、受付まで戻っていただけますか?」
横から知らない声が聞こえギョッとすると
店員が、イライラしながらオレに話しかけていた
💖(くまに夢中で、店員の存在に気づかなかった)
「ああ、、、いや、、いまはそれどころじゃ、、」
(この機を逃せば、もう二度と彼には会えないかもしれない)
(他人にかまっている暇なんてない)
嫌な焦燥感に駆られるオレの耳に
彼「すみません、この人、僕の知り合いです」
懐かしく、優しい声が聞こえた
店員「あ、お連れのお客様でしたか、、、、
はい、ご迷惑をおかけしました」
くまが店員にぺこり、と頭を下げる
その丁寧な姿は、オレの知る彼とはかけ離れていて
そのことに少しだけ違和感を覚える
彼「とりあえず、座って?」
彼が目の前の席へ座るようオレを促す
💖「ああ、ありがとう、、、」
オレは言われるがままに席に着いた
店員「では、ごゆっくり
、、、、連れなら最初からそういえよ、、、」
店員がぶつくさと文句を言う声が耳に入るも
そんな事、今のオレにはどうだってよかった
💖「さっきはごめんな、久しぶりだったから動揺しちまって」
頭をかきながら、彼に詫びる
💖「いやでもほんと久しぶりだな
1年ぶり、、、だよな?」
彼「、、、、、」
くまは少しだけ考える素振りを見せると
口重そうに話を切り出した
彼「あの、、、、」
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